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真田十勇士

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巻ノ八十一 上田城へその十一

「ですから」
「そう言うか」
「とてもです、まだまだ修行が必要です」
「修行が必要なのはそれがしも同じ、しかしな」
「ここは、ですね」
「二人で暴れてな」
「敵を乱しますか」
「そうしていこう」
 こう言いつつだ、筧は敵陣に向けて右手の平を向けた。そしてそこから火の玉を出して敵兵を撃つのだった。
 火があがり焼かれた敵兵は火だるまになり倒れてだ、他の兵達も狼狽しそこに伊佐が入り錫杖で攻める。十勇士達はここでも暴れている。
 霧隠が霧を出した中でだ、由利は鎖鎌を振るう。そうしつつ自身は刀を振るい手裏剣を投げる霧隠に問うた。
「敵の場所はわかっておるな」
「御主と同じじゃ」
 これが霧隠の言葉だ、二人は左右に並んで戦っている。
「見えずともな」
「気配でじゃな」
「充分にわかる」
 それでというのだ。
「敵のな」
「ならよいがな」
「わしも御主もそこは同じじゃ」
「目だけ頼らぬな」
「殿にいつも言われおろう、目は大事だが目だけに頼るな」
「耳、鼻にな」
「気でもな」
「そうじゃな、よくわかるわ」
「霧で周りが見えず狼狽しておる」
 霧隠が出した霧でだ、二人の周りは濃霧に包まれ。
 由利が放った鎖鎌の分銅に額を割られた足軽が倒れ霧隠の刀で喉を貫かれた別の足軽が倒れていた。
 霧隠は足軽に足をやって後ろに蹴りその要領で刀を抜いてから言った。
「その様な敵はな」
「倒すのはたやすい」
「このまま暴れると」
「わかっておる」
 由利は鎌で傍の足軽の喉を切った、霧隠は今度は手裏剣で陣笠の下の額を貫く。そうして二人も果敢に戦う。 
 猿飛と清海は敵陣にそのまま飛び込み刀と木の葉、それに金棒で戦う。清海は金棒で敵兵を吹き飛ばしており。
 猿飛は木の葉を手裏剣として投げてだ、刀を振るっている。
 そうした敵陣で戦いつつだ、猿飛は清海に言った。
「どれだけ暴れられる」
「腹が減るまでじゃ」
「ははは、そう言うか」
「そう言う御主はどうじゃ」
「わしも同じじゃ」
 笑ったままだ、猿飛は清海に答えた。
「腹が減るまでな」
「戦えるな」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「それまでは好きなだけ暴れられる」
「飯はさっき食ったばかりじゃ」
「握り飯美味かったのう」
「わしはたらふく食ったからな」
「今は好きなだけ暴れられるな」
「それも長くな」
「よし、ではどちらがより暴れられるかな」
「競うか」
「命を粗末にせずにな」
 そのうえでというのだ。
「暴れようぞ」
「それではな」
 言いつつだ、二人は戦い続けていた。 
 幸村は自ら軍勢を率いて戦っていた、馬に乗る彼は両手にそれぞれ十字槍を持ち縦横に振るっている。
 幸村が槍を振るう度にだ、貫かれ斬られた敵兵が倒れていく。徳川の兵達はその彼を観て驚いて言った、
「な、何じゃあの者は!」
「あれが真田幸村か!?」
「何という強さじゃ!」
「まさに鬼じゃ!」
「鬼の様な男じゃ」
「このまま攻めよ!」 
 幸村は彼が率いる兵達に言った。 
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