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真田十勇士

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巻ノ八十一 上田城へその十

「十勇士ではないかと」
「あの噂に聞くか」
「一騎当千の者揃いの」
「あの者達が攻めて来ておるか」
「そうやも知れません」
「ううむ、何ということじゃ」
 秀忠は伏兵の報にだ、狼狽した顔で周りを見回した。彼のその軍勢は。 
 あちこちで乱れていた、見れば実際に僅かな数の兵達に攻め立てられていた。
 川からだ、海野は手裏剣を投げて兵達の喉を的確に貫きつつ川辺で剣を振るう根津に対してこう言った。
「よいか、一人一人確実にじゃ」
「倒してじゃな」
「そうじゃ、我等の数は少ないがな」
「少ない様に思わせぬことじゃな」
「それが大事じゃ」 
 こう言うのだった。
「よいな」
「わかっておる、一人一人を確実に素早く倒していけば」
「我等の数はわからぬ」
「多い様に見せることじゃな」
「そういうことじゃ、では倒していくぞ」
 海野は言いつつだ、手裏剣を投げ続けた。水の傍に来た敵兵は中に引き込みその中で掻き切って倒していた。根津の刀は煌き敵兵を次次に倒している。
 望月は拳で戦う、穴山は物陰からその彼を援護して鉄砲を放つがこの鉄砲がだった。
 まさに百発百中で敵を倒す、望月はその彼の鉄砲を見て言った。
「相変わらず見事よのう」
「見事か」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「かなりな」
「そうか、しかしな」
「しかし?」
「そう言う御主もかなりのものじゃな」
 拳だけでなく投げや蹴りまで使い素手で武器を持つ敵を倒していく望月に言うのだった。
「素手でそこまで戦えるか」
「これがわしの戦の仕方だからのう」
「素手が一番よいか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「わしの場合はな」
「わしの鉄砲と同じか」
「撃つ間隔も短い」 
 普通の足軽の三分の一程だ、しかも狙いを外さない。
「相変わらず凄い腕だな」
「鉄砲はわしの身体の一部じゃ」
 それだというのだ。
「だからじゃ」
「それ位はか」
「出来て当然じゃ、それではな」
「ここでじゃな」
「思い切り暴れるぞ」
「そうするか、二人でな」
 こう話してだ、二人も敵をここぞとばかりに倒していた。そして。
 筧が雷や火を放ちその威力だけでなく音でも敵を狼狽させているそこにだ、伊佐が入ってそうしてだった。
 錫杖、鉄のそれを振り回し敵を倒していく。筧はその伊佐を見て言った。
「見事であるな」
「拙僧の錫杖が」
「うむ、右に左に暴れてな」
「いえ、これでもです」
「清海にはか」
「及びませぬ」
 こう言うのだった、自分では。
「まだまだです」
「そう言うか」
「はい、兄上ならここでもお一人で、です」
「充分にというのだな」
「受け持たれますが拙僧は筧殿もおられてこそ」
 筧が術で乱したそこに入ってようやく暴れられるというのだ。 
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