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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第二章 Lost Heros
  襲撃者VS漆黒&蒼青



通り過ぎようとしたその男に、翼人、クラウドが名指しで呼んだ。










「待て・・・・・・シュン」










呼ばれた男は、蒔風だった。
そうして、呼ばれた男、蒔風が立ち止まり、こちらに振り返った。




「・・・なんだよクラウド。今からオレぁ家帰って寝たいんだ・・・わかるだろ?疲れてんだよ。冗談は・・・」

「冗談ではない」




迷惑そうに答える蒔風に、クラウドが厳しく言及する。
その一言で、蒔風の目付きが鋭くなる。



「なんだよ・・・・俺をそう言うってことは・・・・言うなら、証拠はあんのか?」



蒔風の言葉。
それに応えるように、クラウドが懐から一枚の紙を取りだした。

何かのリストをプリントした物のようで、そこには多くの者の名前がずらりと書かれていた。


そして、クラウドがそのリストのタイトルを読み上げた。



「「襲撃リスト」・・・・お前のパソコンの中にあったこれ、見せてもらったぞ」

「・・・・どーやってだ」

「ミサカが手伝ってくれた。膨大な量の情報(データ)から、頑張って引き抜いてもらったものだ」




その言葉に、蒔風が参ったな、と言った感じで頭を掻く。



「それはなぁ・・・・わかるだろ?いわゆる「主人公たち」が狙われてるんだから、それをリストアップしただけだ。決してこれから襲おうというものではないし、メンバーを掌握するには必要だろう?」

「では・・・・この消された欄はなんだ?これは・・・・」

「いなくなってしまった奴らをリストからなくしていった・・・・それだけだ。見やすいだろう?」




そう言って、蒔風がクラウドからリストをひったくる。
そして、くしゃくしゃに丸めた後に、そばのダストシュートに捨てた。




「じゃあ・・・・もういいか?オレは本当に疲れて・・・・」

「まだ話は終わっていない!!」





ジャキッ!!!

ザザザザザザザザザッ!!





クラウドが後ろを向いてその場を去ろうとする蒔風の背に剣を向け、、更に蒔風の周囲には数人の「EARTH」メンバーが逃がさないように取り囲んでいた。




「お前を相手取るとして、オレ一人で来ると思うか?」

「・・・・・・で?」





蒔風がクラウドに振り向いて、話を進めていった。



「たとえそうだとして・・・・オレはあいつらが襲われたとき、本部だったり、誰かと一緒だったりとアリバイがある。なんでそんなオレが疑われなきゃならないんだ?」

「・・・・・・」




その言葉に、その場の全員が閉口する。
そうだ。確かに、クラウドからの話を聞いてこうしてきたモノの、確固たる証拠はまだわからない。

だが、クラウドは蒔風を肩を並べる翼人なのだ。きっと何かを掴んでいる。
そう信じて、彼らはこうして蒔風を取り囲んでいる。



「おいおい・・・・お前ら、オレが本当に・・・・やったと思ってんのか?」

「・・・・・信じたくはない。だが、そうである可能性がある以上、看過はできない」




蒔風が周囲に聞き、愛紗がそれに応える。


その意見に、蒔風は言っておきながら見事だと思った。
たしかに、その通りだ。疑うべきは疑い、そしてそれを晴らせばいい。



「なるほどね・・・・でも、オレのアリバイは?どういう事になるんだ?」



だが、そう。
その問題が残っている。

皆が黙る。蒔風が待つ。

そして、クラウドは口を開いた。




「・・・・・わかった。行け」

「クラウド殿!?」



しかし、クラウドはそう言って剣を下ろしてしまった。
その行動に、蒔風が肩をなでおろして安心する。


「疑いが晴れてよかった。じゃあ、オレは・・・・・」


「最後に、一つ言いか?」





その場から蒔風が一歩歩いて、クラウドが最後だと言って質問する。
まあ最後ならと、蒔風も振り返ってその質問を聞こうとする。





「なんだ?・・・・これでもう三回も振り返ったんだ。四回目は無しにしてくれよ?」






「四回目はない。というか、そろそろ茶番はいいか?」


「は?」












「蒔風はどこだ、青龍。今すぐに呼んでもらおうか」










クラウドの言葉。
その言葉に蒔風の周囲を囲むメンバーからどよめきが起き、蒔風(?)は目を見開いた。



「お、おいおい・・・・そんなことは・・・・」


「気付いてないなら教えてやる。さっきから口調が出ているぞ。いきなりの事で動揺したか?」



「・・・・いや、これは・・・・・」







明らかに狼狽する蒔風(?)
だが、そこにクラウドは追い打ちをかける。

決定的な証拠として。






「もしお前が蒔風なら・・・・・十五天帝を出してみろ。すべてだ」

「ッッ・・・・・・」




その言葉に、息詰まる蒔風(?)


ほとんどチェックメイト。
もう、彼に逃げ場はない。

それでも何とか言い繕おうとするが、最初の一言を言っただけで、もう無駄だと察したのか、黙ってしまう。




そこに








「もういいよ、青龍。全部わかってるみたいだ」








頭上から声がした。
このロビーは吹き抜けで天井まで四階の高さがある。

そこの高い天井から、声がした。





皆が一斉に見上げる。



その天井を走るの丸い鉄柱に、蒔風が腰かけていた。





そして、囲まれている蒔風改め青龍の横に飛び降り、彼の肩をポンと叩いた。


「・・・・すみません」

「しゃーない。よくやったよ。戻っとけ」



蒔風の言葉に、青龍が剣に戻って蒔風の脇に消える。


それを見て、全員が絶句した。
まさか本当にこの男が、この人が、この翼人が敵なのかと。





「・・・さ、てと・・・・・いや、クラウド、これはな?オレが狙われた場合の保険で・・・・」

「そんな戯言はいい!!なぜやった!!!」




この期に及んで、いまだにシラを切ろうとする蒔風。
だが、それを断じるクラウド。

その言葉に、諦めた感じの目をして、蒔風が訊いた。




「どこから気付いた?」

「発端は・・・お前がいろいろときっかけを掴んでいながらも、なにも発見できていないという事だ。今まで色々な情報が集まったのは、総てお前からではなく、他のメンバーからだった」

「で?」




「そして、決定的だったのは・・・・華琳と恭介がやられたあの現場だ」

「?証拠はなにも無かったが?」




「それが、彼らのメッセージだった」

「どういうことだ?」





「あの現場には何もなかった。だがあの時言ったように、あの二人がなにも残さないのはおかしい。つまり、彼らは“残せなかった”んじゃない。“残さなかった”んだ。自分たちがいくら策を講じ、どんな証拠を残しても、それは襲撃者に消されてしまう。だから何も残さなかった。戦闘もしなかった」

「・・・・・・」



「自分たちを襲った相手は、抵抗することも無駄で、勝つ見込みも無く、どんなものを残したところで消されてしまうような、圧倒的な力の持ち主だという事だ!!そしてそれをいきなりできたのは、襲撃者が知り合いだったという事だ!!!」

「それが根拠か。あまりにも拙いが・・・」

「そうだ・・・しかし、ではお前からの否定は?」


クラウドが、ここまで言って最後の望みをかける。

もしかしたら、彼には何か理由があるのか、それともこのように陥れられたのか、と。
ここで彼からの否定だったり弁明があれば、まだ理解はできるかもしれない。


だが







「よくできました。大正解だ!さて・・・どうしましょうかね?やっとたどり着いた、強大な敵が目の前にいるってわけだが?」







蒔風は笑った。
そう、それはまるで、ついにたどり着いた最後の敵。ダンジョンの奥で待ち構えているような、魔王のように。




その顔は、悪に染まったように嗤い上げていた。





「それがわかってたんなら即捕まえることだ。こんなに標的集めてくれて、感謝するぜぇ・・・!!!」

「ッ!?全員離れ・・・・」





ガオンッッ!!!!






クラウドが全員に引くように指示を出すが、それよりも早く蒔風が突っ込んできた。
それを剣で受け止めたクラウドだが、三階ロビー外枠の通路などいう狭いところでは受け止めきれるはずもなく、ガラスフェンスを突き破って一階にまで落ちて行った。



「グオッ!?」

「俺だからって油断してんじゃねぇぞ?ここにいんのはてめえの敵なんだからよォ!!!」


一階ロビーに二人が剣を交えたままで着地する。


そこから蒔風が、両腕を広げるように剣を振るう。
その件に押される形で、クラウドが握っていた剣が両手とも弾き上げられ、胴体が無防備に。

そしてその腹部に、蒔風の打滅星が一撃、ド真ん中に打ち込まれた。



その衝撃にクラウドの体は壁にまで突っ込み、たたきつけられる。




「ガ・・・・ア・・・・」

「おいおい、真面目にやってくれ。このままじゃあ・・・終わっちまうだろう!?」




そのクラウドに、蒔風が「獅子」を握って歩み寄り、その首に向かって振り下ろした。

だが




ゴッ、バガァッ!!!!




クラウドがもたれかかっているその壁の向こうから、幾本ものの剣や武器が突き出してきて蒔風に対してカウンターのように攻撃してきた。

その無数の剣に蒔風は「獅子」を盾にしながら後ろに飛び、地面に「獅子」を突き刺してその上に立つ。



「ッッ・・・・!?」

「舜ッッ!!!!」




そうして壁の向こうの穴を睨む蒔風だが、壁の空いた穴の向こうから一刀が突っ込んできて、蒔風の背後に一瞬で回り込み剣で切りかかってきていた。
蒔風は「獅子」に掛けていた足から力を抜いて、重力のままに落ちて一刀の剣を回避。

振り返りながら着地して「獅子」を抜き、頭上から振り下ろされてきた一刀の追撃を受け止める。


「本当に・・・本当にお前がやったのか!!!」

「めんどくせーなァ・・・・言ってんだろ?それとも、まだ夢見てんですかァ?」



そう言って、剣を握る手とは逆の手で懐をまさぐり、蒔風が何かを取り出す。
それは、カードの束だった。一番上には、華琳の姿が書かれていて、さらに数枚、同じようなものが今まで襲撃された人数分あった。


それを見せて、一刀の目が見開かれ



蒔風の口元がギチリと醜悪に歪んだ。




「手ごたえがなくってな・・・・お前は楽しませてくれんのかい?」




「~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!クラウドォッ!!!全員を連れてここから離れろッッ!!!」




「一刀!!」

「む?」



「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




瞬間、一刀の蒼青の翼が大きく開かれ、周囲を衝撃が襲う。


それと同時に、クラウドはメンバー全員を連れて本部から撤退した。



「ご主人様!!」

「愛紗!!危険だ、今すぐここから・・・・」

「離してくださいクラウド殿!!私は・・・・私は!!!」



今「EARTH」本部には彼らしかいない。
もしやと思ってクラウドが全員をここから帰していたのだが、それはどうやら正解だったようだ。


最後まで残ろうとした愛紗を無理やり引っ張って、クラウドも最後に本部を飛び出す。




「なぜ・・・何故だ、シュン!!!」



そう叫びながら、愛紗を抱えて空から「EARTH」本部を見るクラウド。
周囲には同じように、何人かが残って見届けようとしている。




その、数秒後









一階から四階、吹き抜けになっているエリアが蒼青の光で満たされ、それが消えた瞬間、「EARTH」本部が揺れた。





すべての窓ガラスが一斉に割れ、衝撃が一気に最上階にまで登ってから、すぐに最下層まで下がり、更に地下にまで突っ込んでいった。大地が揺れ、ヒビが入る。いたるところが隆起し、陥没し、深い振動音と共にビルを損壊していく。



そして





ゴゴァッ!!!
ガギギギギギギギギギギギギギギギギギンッ!!!!!!






「EARTH」本部ビル正面から少し前。おそらくは地下大訓練場があった場所だ。


そこから地面を突き破って、剣山がせり上がってきた。
いくつもの剣が組み合い、折り重なったその剣の塔に全員が絶句する。



だが、それを見てクラウドが号令をかけた。



「全員・・・・この場から離れろ!!!」

「!?」

「な・・・・」




その言葉に、釈然としないまでも従って離れていくメンバー。




「ご主人様・・・・・一刀ッ!!!」

「暴れるな・・・・ここではもうどうしようもない!!」



クラウドが一刀の名を呼ぶ愛紗を連れて、その場を離れる。






その後ろでは剣山の隙間から銀白の光が漏れだしてきて、その一瞬後に薄氷のように剣山が砕けた。



その中心に立つのは、服が千切れながらも一枚のカードを手に持つ蒔風。
表には一刀の姿が、裏面には十文字のマークが描かれていた。




「さて・・・・・まだ急げば追いつくな。何人かここで・・・・」




そう言って、逃げていくものを追いかけとする蒔風だが、その足が止まる。
理由は簡単だ。目の前にそれを止めようとする者が立ちふさがったからである。





「なんで・・・なんでおにーちゃんをやったのだ!!!」

「舜・・・・もはやあなたは、私が止めまする。他の誰にも、止めさせはせん」






蒔風の前に、鈴々と星が立っていた。
その顔にはそれぞれ怒りと悲しみが込められていたものの、明らかな敵意が存在していた。


「・・・・はぁ・・・・これじゃあいつら逃がしちまうじゃん・・・・退け」


「「断る!!!」」












瞬間










クラウドは後方で、もう一度光が空に昇るのを見た。
それも、二本。







「全員・・・・聞いてくれ。今回の敵は・・・・『蒔風舜』だ」




通信を以って、クラウドが通達する。
その反応は様々だが、こうして、戦いはついに切って落とされた。







「敵は、世界最強。世界と戦うつもりで行け・・・・・・!!!」















銀白、破滅の光とならん






to be continued

 
 

 
後書き

さて・・・犯人発表です!!


一刀
「まさかの蒔風!?」


ふっふっふ。
この戦いを思いついたのは言わずもがな。ディケイドです。


一刀
「じゃあ・・蒔風にも何か思惑が?」


さあ?
そこはまだ明かしませんが。


一刀
「にしてもオレが最初の翼人脱落者かぁ・・・・・」


これは予定通りです。
さて・・・次はだれを蒔風とぶつけようかな!!!



一刀
「次回、本当に蒔風か?」

ではまた次回


 
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