魔法少女リリカルなのは -Second Transmigration-
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第9話 デバイス
前書き
第9話です
今回ついに悠里のデバイスが登場です
ではどうぞ~
父さん葬式から3ヶ月後、季節は秋になり、朝の冷え込みがキツい時間に俺は起きて居間へと降りる。
「さむっ……」
流石に子供の身体でこの寒さは堪えるようで、俺はジャージの上着を着て身を丸くさせながら歩く。居間の襖を開けると、
「おはようございます。マスター」
紫色の腰まで届いた長い髪と瞳を持つ、漆黒のドレスのような服に身を包んだ少女が座っていた。
……まぁぶっちゃけ、『デモンベイン』のエセルドレーダそのままなんだけどな。
「おはよう、レン」
少女、レンに挨拶を返す。
まずは彼女について説明しないといけないな。
レンと言う名前は愛称であり、正式名称は『サイレントフェザー』。俺専用のインテリジェントデバイスだ。
『インテリジェントデバイス』だ。
……大事なことなので二回言いました。
父さんが俺専用に作ったデバイスであり、誕生日プレゼントであり、あの神様の寄越したデバイスでもある。
「日課ですか?」
「うん。そろそろ行くけど」
「お供します」
レンは立ち上がると体を紫色に発光させる。すぐにそれは収まると、左手に黒い翼を象ったペンダントが収まった。デバイス状態のレンの姿である。
俺は左手首に巻き付けて家を出た。
初めの頃は驚いたけど、今では普通だ。なにより、1人で暮らしていかなければいけなかった俺にとっては、レンの存在はとてもありがたかった。
3ヶ月前……
父さんのプレゼントを開けると、中には黒い翼を象ったペンダントが1つ入っていた。何気なくそれに触れると、ペンダントが突然発光を始めた。
『接触を確認……魔力資質、魔力総量……一致。指紋認証……生体データ……本人と一致。起動します』
発光はやがて強くなりペンダントが浮遊した。
その光が当たりを包み、発光が終わると目の前には、1人の少女が佇んでいた。
「正常に起動しました。おはようございます。マスター」
「……えっと……誰?」
「私はインテリジェントデバイス『サイレントフェザー』。その擬人化形態になります」
「デバイス?……でもたしか、デバイスで人間体になれるのは、ユニゾンデバイスだけなんじゃ……」
「イエス。私はマスター、天城悠里の専用デバイスとして制作されました。この形態は、マスターと契約した神により授かりました」
「あれってそういう意味かよ…」
確かに生活を補助する機能って言ったけどさ……
それにしても……
「なんで、エセルドレーダなんだ?」
淡い紫色の髪、透き通るような瞳、華奢な体、聡明で知的な雰囲気の容姿は見間違えのない、生前に俺がよくプレイしていた、『機神咆哮デモンベイン』に登場していたナコト写本の聖霊、エセルドレーダそのものだった。
「マスターが生前に好んでいた作品の人物を使ったそうです」
「……ずいぶんと懐かしいのを持ってきたな……」
「ご迷惑でしたでしょうか?」
少女はこちらを不安そうに見てきた。……あぁもう!可愛いなチクショー!!
「……大丈夫だ。大丈夫だからその顔はやめてくれ」
「イエス、マスター」
……本当にナコト写本でした。
いやね?ゲームキャラに初めて可愛いと思ったキャラだから凄い思い入れもあるし、好きなキャラだから嬉しいけどさ、なんか複雑だよな。
「私の機能は追々説明していきまし。今は……」
少女は俺の前で跪いて頭を下げる。それはさながら、主に忠誠を誓う儀式のようだ。
「私がマスターを守る盾となり、敵を打ち倒す為の剣となることを。そして、マスターへの絶対的な忠誠をお約束します」
「……本当に?」
「神に誓って」
「……わかった、信じるよ」
「ありがとうございます。マスター」
「となると、愛称が必要だな」
「…?名前ならば『サイレントフェザー』と言う名称がありますが?」
「人前でその姿で出たら可笑しいだろ。そうだな……」
名前……名前……そうだ、
「……レン。お前はこれからレンと呼ぼう」
「レン……」
「サイレントの部分を取っただけなんだけど、そのままより人らしいだろ。それに呼びやすいし、お前にピッタリだと思うんだけど?」
「マスターが望むままに」
「……まぁ、いいか。これからよろしくな、レン」
「はい、マスター」
とまぁ、そんな事があったわけで……今はレンとの生活は当たり前になりつつあった。高町家のみんなにはこの事はまだ話してない。話す次期は今じゃないからな。
それにしたって、初めの頃のレンとは自分の考えとかをあまり言う方ではなかったから大変だった。
言う時は言うんだけど、後は必ず『マスターの心のままに』だからな。
でも、最近はちゃんと教えてくれるから、幾分やりやすいな。
『マスターのお陰です』
「そうなのか?」
『はい。間違いなく』
「ふーん……」
まあ、いいんだけどさ。
レンside
私が仕えるマスター、天城悠里は変わった人だった。いくら人格や身体が存在するとはいえ、私はデバイス。武器であり、物なのだから。
しかし、マスターは私に人としての名前を与え、1人の人として扱っていた。
初めは理解できなかった。どれだけ人に近かろうが、私が『物』であることには変わりはない。それなのに何故、私を人として見るのか。
「あのな……レンは確かにデバイスかもしれないけど、それでも自分で考えて行動してるだろ。それは生きているっていう証拠だよ」
「違います。マスター、私はただの機械です。プログラムされた以外の行動はできません。私には命も心もありません」
「だったら……」
マスターは私に近づくと、突然私の手を握って私の胸へとそれを持っていった。
「マスター、何を……!?」
「動かないで。……これを聞いてもか?」
私は驚きながらもマスターの言葉通り胸に当てられた自分の手を見た。
そこからはトクン、トクンと私の胸の鼓動が聞き取れる。
「確かにレンはデバイスだ。だけど、こうして心臓が鼓動して、俺と手を握ってお互いの体温だって感じ取ってるだろ?初めて起動した時の言葉だって、レンの言葉にはちゃんと気持ちが込められてた。心が無いなら、そんな言葉を言えるわけ無いだろ?心が無いなんて、命が無いんて、悲しいこと言うな」
「マスター……」
「レン、お前は俺にとっては相棒であり、これから一緒に戦う戦友で、……大事な家族だ。だから、もう二度とそんな悲しいことを言うんじゃない」
私はマスターの剣となり、盾となるために作られた。それだけのはずだった。なのに、マスターは私を『武器』としてではなく『人』として見ている。
それも家族として。
家族がどんなものかは意味しか私には解らない。
だが、その時のマスターはまだ小さい手はとても大きく、暖かく、そしてなによりも……
とても、優しかった。
そして誓った。
もしも世界がマスターの敵であっても、私は絶対にマスターの味方でいると。
『マスター』
「ん?どうかした?」
『今日はこの後、特に予定はありませんでしたね?』
「ん~……確かに何もないな……ゆっくり散歩でもするか。どっか行きたい所とか、レンはある?」
『マスターとならば、何処までも』
「……わかった。気の向くままにブラブラしようか」
『はい』
いつまでも何処までも、共に参ります。
私の愛する小さな、そして……優しいマスター。
後書き
第9話でした。
エセルドレーダは個人的にすごく思い入れのあるキャラですので使ってみました。
そして、気付いたらこの小説、なんと6位に入ってました。
ウソだろ…とか思いつつ、読んでくださった皆様に感謝を
ありがとうございました。
感想をお待ちしてます。
ではまた次回でノシ
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