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居眠り

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第四章

「まだ起きないわね」
「地震起きてたなんて夢にも思ってないわよね」
「というかいい夢見てるんじゃない?」
「このままね」
「そうしてるんじゃない?」
「眠りの森の美女?」
 梨沙は小鳥の整った顔を見てこんなことも言った。
「ひょっとして」
「ひょっとしても何もね」
「何があっても起きないとかね」
「王子様のキスでも起きないんじゃない?」
「甲子園の一塁側でも寝てそうね」 
 球場が揺れる程の喧騒の中でもというのだ。
「この娘の場合はね」
「王様のキスでも兄貴様へのエールの歓声でも起きないわよ」
「これはもう眠りの女神よ」
「起きないという点においてね」
「全く、どうしたものかしらね」
 梨沙は呆れ果てた顔のまま言った。
「この娘は」
「寝てるから何も言えないけれど」
「悪いことはしてないから」
「けれどまさか地震でも起きないとかね」
「凄い体質よね」
「どんなものかしらね」
 誰もがそんな小鳥に呆れていた、そしてだった。
 何とか授業がはじまる直前に起きた小鳥にだ、梨沙は言った。
「地震あったのよ」
「えっ、そうなの?」
「それで皆避難してたのよ」
「じゃあ私は」
「私が机の下に入れて皆で校庭まで担いで戻ったの」
「御免なさい、そこまでしてもらって」
「全く、震度五あったらしいわよ」
 携帯をネットに繋いでチェックしたらそう出ていた。
「結構揺れてるでしょ」
「そうね、確かに」
「幸い怪我人は出なかったけれど」
 それでもというのだ。
「結構揺れたのよ」
「私それでも起きなかったのね」
「自分でも凄いと思うでしょ」
「有り得ないわね」
「若しもよ」 
 梨沙はこの時は真顔で小鳥に言った。
「阪神大震災とか東日本大震災みたいな地震だったらどうするの?」
「その時は」
「そう、、どうなるのよ」
 こう問うのだった、小鳥の目をじっと見つつ。
「大変でしょ」
「確かにね」
 それこそとだ、小鳥自身も言う。
「死ぬかも知れないわね」
「本当にその体質何とかならないの」
「どうしたものかしら」
「さもないと本当に大変だから」
 梨沙はかなり親身にだ、小鳥に言うのだった。
「何とかするべきよ」
「具体的にはどうしたらいいかしら」
「具体的にって言われても」
「この起きない体質は」
「というかあんた時々居眠りするけれど」
 梨沙は小鳥のその起きない居眠りについて問うた。
「お家でも寝てるのよね」
「ちゃんとね」
「それでどうして居眠りするの?しかもね」
 小鳥に対してさらに言った。
「あんたお家で寝る時も起きないのよね」
「目覚まし二十個とお母さんのフライパンで起きてるわ」
「それもないから」
 到底、というのだ。
「何でそこまで起きないのか」
「不思議っていうのね」
「眠り深いにも程があるわよ」
「寝たら起きないのは確かね」
「大体何時間寝てるの?」
 ふとこのことが気になってだ、梨沙は小鳥に問うた。
「それで」
「うん、普通は七時間かしら」
「七時間ね」
「それ位寝てるわ」
「普通位ね」
「そうなのね」
「それ位寝てたら問題ないわよ」 
 梨沙は考える顔になって小鳥に答えた。 
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