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第一章

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 デートの時にだ、彼は途中で入った喫茶店の中でコーヒーにクリープを入れながらこんなことを言ってきた。
「この白と黒がね」
「色の対比がっていうのね」
「僕好きなんだよね」
「いつもそう言うわね」 
 私は自分の好きなレモンティーを飲みながら応えた。
「貴方は」
「うん、実際にそうだからね」
「確かに入れた時はそうなるわね」
 コーヒーの中にクリープの白が入るその時はだ。
「そうね、けれど」
「すぐにだね」
「その白と黒が混ざって」 
 そしてだ。
「一色になるじゃない」
「茶色にね」
「白と黒が混ざっても灰色じゃなくて」
 コーヒーの場合はそうした色にはならない。
「茶色になるわね」
「だからそれは一瞬だね」
「白と黒になるのは」
「そうだね、けれどね」
「その一瞬の対比がいいっていうのね」
「コントラストがね」
 まさにそれがというのだ。
「僕好きなんだ、それとね」
「服もよね」
「うん、ストライブが好きなんだよね」
「それもいつも言うわね」
 右手で頬杖をついて少し呆れた笑顔になって言った。
「貴方は」
「だって好きだからね」
「二つの色のストライブが」
「好きなんだよ」
「だから着てる服もなのね」
「こうしてシャツはね」
 ぱりっとしたカッターだけれど縦縞の黒と白のだ。彼のお気に入りの服で阪神タイガースを思い出さずにいられない。
「大好きだよ」
「私に買ってくれる服も」
「今君が着てる服もだよね」
「ええ、この通りね」
 赤と白だ、ついでに言うと下着も買ってくれるけれどこちらは青と白だ。
「ストライブよ」
「好きだからね」
「本当に好きなのね」
「そうだよ、それでね」
「それでなのね」
「今度買う服もね」
「ストライブにするのね」
「勿論だよ、あとカーテンも」
 それもというのだ。
「ストライブにしたいね」
「どんな色にするの?そっちは」
「そうだね、赤と白とか」
 ストライブであることは変わらない。
「それでいこうかな」
「ストライブのカーテンなんてあるの?」
「あるんじゃない、探せば」
「そうかしら、まあとにかく貴方はストライプ好きなのね」
「大好きだよ、だからこれからもね」
「自分が買う服も私に買ってくれる服も」
「ストライプにしたいね」
「わかったわ」
 やれやれといった笑顔を作ってだ、私は答えた。そしてだった。 
 この日のデートも楽しんだ、実際に彼が買ってくれた服は今回もストライブだった。緑と青のそれのティーシャツだった。
 とにかく彼はストライブが好きだ、しかし。
 ある日のことだ、彼は私にこんなことを言ってきた。
「関西にね」
「転勤?」
「うん、そうなったよ」
「それはまた急ね」
「本当にそうなったよ、東京からね」
 私達が今住んでいるこの街からだ。 
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