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垢舐め

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第三章

「昔から」
「私が作るわよ」
 これが妹の返事だった。
「そんなコンビニ弁当やインスタント食品だけの生活からは永遠にさよならよ」
「永遠になんだ」
「あとビールよりも焼酎やワイン」
 酒にも注文をつけてきた。
「言うまでもなく甘いジュースや炭酸飲料も制限よ」
「どれも好きだけれど」
「駄目、それに歯磨きもあまりしてないでしょ」
「やっぱり二週間に一回位かな」
「虫歯になるわよ」
 歯の話もだ、彩加は腕を組んで鬼の顔で言い切った、口元にははっきりと怒りの相が出ている。それも見事なまでに。
「痛いらしいわよ」
「じゃあ歯磨きも」
「毎日一回はするの」
 絶対にという言葉だった。
「そして煙草は絶対に禁止」
「一日一本も?」
「吸わないの」
「そんな、煙草は」
「身体に一番悪いから」
「ヒトラーみたいなこと言うね」
「ああ、ヒトラーって煙草大嫌いだったわね」
 彩加もこのことは知っていた、そしてあらためて兄に言った。
「このことは立派ね」
「物凄く沢山の人を殺した独裁者だよ」
「独裁者でも見習うことは見習うの」
 正論で返した。
「いいわね、煙草は厳禁」
「生きる希望が」
「飴でも舐めてなさい、糖質オフの」
「管理野球みたいだよ」
「ご名答、私は西武ファンよ」
「僕阪神ファンだから」
 二人共その通りだ、ただし彩加もセリーグは阪神だ。耕太がパリーグには興味がないだけだ。
「西武の管理野球は広岡さんで広岡さんは巨人出身だから」
「だから敵でも見習うところは見習うの」
 妹の鬼の顔は変わらない、まさに鬼女の相だった。
「いいわね、今からよ」
「明日からじゃなくて」
「今からよ」
 まさにこの瞬間からというのだ。
「お仕事が忙しいとか理由にならないから」
「そうなんだ」
「まずはお掃除、アパートのお部屋全体にね」
「おトイレやお風呂場も?」
「そうよ、そしてその後でお風呂に入って歯磨き」
「歯磨きもなんだ」
「全部終わったら私がお野菜とかお肉とか買って来るから」
 彩加はさらに言った。
「駅前にあったわねスーパーが」
「うん、買いものはあそこに行くといいよ」
 耕太もすぐに答えた。
「色々あるから」
「そしてお昼作るから」
「それで食べるんだね」
「そうよ、あと電子ジャーとかポットあるわよね」
「使ったことないけれど」
「今日からお米炊くしお湯も沸かすから」
 そうしたこともするというのだ。
「ジュースじゃなくてお茶を飲めばいいわ」
「お茶だね」
「お茶は身体にいいから」
「何かヘルシーだね」
「健康第一って言ってるでしょ、とにかくね」
「生活をあらためないといけないんだ」
「お掃除もお昼も全部終わったら床屋行ってきて」 
「髪の毛をなんだ」
「ぼさぼさじゃない、短くしてすっきりすればいいのよ」
「半年前に行ったのに」
「これからは毎月よ」
 髪のことにもだ、彩加は注意を入れた。 
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