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Blue Rose

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第三十五話 欧州の美その十一

「他のお部屋も観ていきましょう」
「そうだな、一部屋一部屋な」
「よくね」
 こう話して二人で観ていく、そして。
 西洋の陶器、ティーカップを観てだった。龍馬は何かを感じてそうして優花に対して話した。
「欲しいな」
「ええ、一セットね」
「これで紅茶かコーヒー飲んだらな」
「何か違うわね」
「そうだよな」
「龍馬欲しいの?」
「一つな」
 実際にと言うのだった。
「いや、一セットか」
「じゃあ買う?」
「安いの買うか」
「親御さんへのお土産にもなるし」
「ああ、そうだな」
「今言われて思い出したの?」
「実はな」
 龍馬もこのことは苦笑いで返した。
「そうなんだよ」
「それはちょっと」
「悪いことだな」
「ええ、けれど思い出したら」
「買わないとな」
「そう思ったらね」
 まさにというのだ。
「買うべきよ」
「そうだよな、御前に会いに来たけれどな」
「おじさんもおばさんも送ってくれたのよね」
「ああ」
 龍馬は優花に明るい笑顔で答えた。
「そうだよ」
「それだったらね」
「親父とお袋にもだよな」
「お土産を買ってね」
 そしてというのだ。
「恩返しという訳じゃないけれど」
「有り難うの気持ちだな」
「それを贈るべきよ」
「そうだな、御前に会いに行くって言ったらな」
 神戸を発つ時のこともだ、龍馬は優花に話した。
「笑顔で送ってくれたしな、二人共」
「そうなのね」
「ああ、御前が女の子になったことは言ってないけれどな」
「それでもなのね」
「親父とお袋になら」
 心から信頼している両親ならとだ、龍馬はこうも言った。
「何時か安心して話せるな」
「そうね、おじさんとおばさんなら」
 優花も二人のことはよく知っているので言った。
「私のことを知っても」
「それでもな」
「受け入れてくれてね」
「誰にも言わないでくれるな」
「そうよね」
「まあそれは後でな」
「ええ、今は」
 優花は龍馬にあらためて言った。
「お土産をね」
「親父とお袋に買うか」
「そうしましょう、それでどんなのを買うの?」
「そうだな、そう言われてもな」 
 万暦赤絵、龍馬は名前だけは知っているがその目で見たことはないしよく知らないそれを思い出した。目の前の白地に赤で描かれた模様が入った壺を。
「俺こういうのはわからないからな」
「そうなの」
「芸術はな」
 難しい顔で優花に言う。
「疎いんだよな」
「じゃあお店の人に頼んで」
「見てもらうか、いや」
「いや?」
「御前が選んでくれるか?」
 優花の顔を見て頼んだ。 
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