STARDUST∮FLAMEHAZE
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#30
ETERNAL PUNISHMENTⅡ~Change Your Way~
【1】
窓のない部屋、とあるレストランの地下カーヴ、
ひんやりと薄暗く湿度は一定に保たれている。
ずらりと並ぶ近代的なワインセラーに納められた、
種類、銘柄、年代、産地を厳密に区分したボトルの数々。
その中から無造作に選んでグラスに注ぎ、
作法もそこそこに蒼炎の美女が悠々と
試飲 (テイスティング) を嗜 んでいた。
傍で、オーク材の柱に寄りかかりながら翡翠の美男子は、
よりに強固になったであろう敵の警戒心と、
厳戒態勢に入った包囲網を如何にして突破するか思考を巡らす。
先刻の方法は殆ど急場凌ぎ、博打にも等しき無謀な荒業、
当然自身の器量を越え 『運』 にも作用されるので
常用しては躰が幾つ有っても足りない。
「飲む?」
長考に陥っていた美男子の前に、スッと鏡のようなワイングラスが差し出された。
「お気持ちだけ、まだ戦いのさな」
「私の酒が」
「戴きます」
こうなると何を言っても無駄なので、
花京院は促されるがままグラスを受け取り、
中程以上に注がれたルビー色の液体を口に運んだ。
「んで、どーすんだよ? 相手の 『能力』 が
“攻撃を跳ね返す” ってのは解った。
殆ど予測不可能に、速度と威力を増してってのもよ。
でも引き籠もってるだけじゃ永遠に勝てねーぜ、
イチバチで突っ込むってのも悪くねーンじゃねーか?
トーガ寄り合わせて強度上げりゃあいーんだし、
人間の大砲如きじゃマージョリーは死なねーよ」
籠に有ったメロンを皮ごとバリバリ噛み砕きながらマルコシアスが言う。
「……マルコに全面同意するわけじゃないけど、私も悪くないと想う。
相手の能力が解らないなら直撃喰らうかもしれないけれど、
攻撃範囲が背後半円に限定されるなら返って避けやすい。
当然フェイント挟んでくるだろうけど、看破出来る自信はあるわ」
両者の意見を受け止めながら、一口ワインを含む花京院。
少量のアルコールなら、思考を活性させる気付けになり痛みも緩和させる。
負傷した自分を地下に留まらせ、単独でケリをつけようと
|《はや》逸る二人を翡翠の美男子は厳格に窘めた。
「 “さっきまでなら” ですね」
「……ッ!」
「あン!?」
グラスを口元に運びながら、琥珀の瞳より冷徹な光を放つ花京院に
二人は共通の寒気と対極の感情を抱いた。
「熟練の 『スタンド使い』 に、同じ手は二度通用しません。
故に今お二人が言ったコトは読まれていると考えるのが妥当です。
次は “後ろから跳ね返す” なんて生易しい事はしてこない、
もっと直接的な手段に撃って出るでしょう。
その 「裏」 をかかなければ、ボク達は敗北します」
理に適った論法、しかし何となく衒ったように見えたマルコシアスは
表紙をバタつかせて反論する。
「ンなもんヤってみなきゃわかンねーだろーが!
どこぞのヘタレじゃあるまいし口ばっかで手拱 いてもしょーがねーしよ!
ひょっとしてビビってんのか!? ○○○○付いてんのか? アァ!?」
「ちょ――ッ!?」
今更俗語に狼狽えるような小娘ではないが、
何故か紅潮して拳を握る美女を後目に、
「アナタ一人ならお好きにどうぞ」
眉一つ顰めず、翡翠の美男子は冷然と返した。
「でもそれに、ミス・マージョリーが巻き込まれるなら話は別です。
策も無しに敵陣へ突っ込んで、スタンドの餌食にさせるつもりなら
ボクがアナタを殺しますよ、マルコシアス?」
「――ッ!」
拳を握ったまま息を呑み、瞳を丸くする蒼炎の美女。
脇でその守護者足る魔狼が、狂獰な凄味を滲ませた声で低く唸った。
「……オレのコトナメてんのか? 小僧。
あんまチョーシこいてやがると、テメーから先に咬み裂くぜ」
「この戦いが終わったら御自由に……
“気持ちだけじゃ” どうにもならないコトが在るんですよ。
“蹂躙の爪牙” 殿……」
「テメェ……」
一人の美女を挟んで、漏れ出る蒼炎の中、
現世の異能者と紅世の狂戦士が真っ向から対峙する。
腰の位置で腕を組む美男子と、牙を剥き出しにする凄美形、
互いの精神が一人の女の為に相剋する。
小康状態とはいえ戦場の直中、反目など愚の骨頂、
それが解らない両者ではないが、
ソレ以上の存在のため理性は何処に弾け飛んだ。
「ちょっと! ちょっと待ちなさい!
一体 “何に” 怒ってるのよ!?
ノリアキ! アンタもそんな感情的になるなんてらしくないッ!」
翡翠と蒼晶の存在力を立ち昇らせて、
互いしか眼に映らない男の間にマージョリーが割って入る。
花京院は確かにと瞳を瞬かせて退いたが、
マルコシアスはしばらく唸ったままだった。
「兎に角、今はノリアキの意見を聞きましょう。
アノ 『スタンド』 とかいう能力についてはノリアキの方が詳しいんだから。
100年前もそうだったでしょ?
マ、マ、マ、名前は忘れちゃったけど」
「ケッ……!」
ページの隙間から火を吹きながらマルコシアスは私憤を吐き捨てた。
彼自身、予期しなかった感情のうねりだった。
花京院もまた、自分が挑発的な物言いをしてしまった事に困惑する。
別段マルコシアスの事が嫌いなわけではない (うるさいとは想うが)
にも関わらず敵意に近い感情を彼に向けてしまった。
リスクを負うとはいえ、先刻の提案もあながち間違いではないというのに。
「……」
謝罪するなら最初から挑発するべきではないので、
花京院は建物に潜行させたスタンドに意識を向けた。
こうなった以上、戦いの全責任は自分に有ると想った。
「――ッ!」
網の目のように張り巡らせたスタンドの触手が、大気の唸りを捉えた。
まるで見当違いの方向、しかしソレは暗雲の中で飛行する
空襲のような危機感を彼に抱かせる。
「出ましょう! ミス・マージョリー! 閉じ込められますッ!」
「え? でも何発か待った方が、多分当てずっぽうでしょ?」
出し抜けに手を握って階段を駆け上がる美男子に、
美女が頓狂な声を返す。
「 “狙い” なんか関係ありません!
“スベテ吹き飛ばす” 気ですッ!」
木のドアパネルを蹴り開き、路上へと駆け抜けた瞬間に爆音。
無差別テロのように折り重なる轟音。
先刻まで潜んでいた建物は疎か、炎獣が配置された場所まで
軒並み火の海に包まれた。
周到にも、追撃を数度行って。
先の砲弾など、較べモノにならない破壊力。
構造の中枢を精密に砕かれたビル群は、
そのまま自身の重量を支えきれず砂糖細工のように上層から崩れ去った。
『21㎝ネーベルヴェルファー42型・RC』
第二次世界大戦時、ナチス・ドイツによってその原型が開発され、
ヴェルサイユ条約下でも保有が制限された多連装ロケットランチャー。
砲身内径214.5㎜、砲身長1300㎜、重量605㎏、
有効射程は10000メートルを越える制圧兵器である。
その特性と重量故、持ち運びに難のある代モノではあるが
ジョンガリ・Aの持つコネクションと軍事技術により、
分解したパーツから組み直すコトは充分に可能
(ティリエルの協力を仰げばその必要すらないだろう)
そしてその悪魔的な火力をスタンド能力と組み合わせれば、
複数の標的を同時に殲滅するコトも容易いのだ。
(炙り出された……ッ!)
マージョリーの手を引いたまま路上を疾走する花京院、
だがその存在は既に闇の鷹、魔の射程に完全に捕らわれているコトを察知する。
やはり敵は、 『能力』 の優位性に頼った暗殺手段など用いてはこなかった。
その詳細がバレようがバレるまいが、
圧倒的火力で 『策 』 ごと焼き尽くす算段。
スタンドや自在法と違い 「兵器」 にルールなどない。
今度は先刻6倍以上の火力が自分達に容赦なく降り注ぐ。
なんとか避け得る手段は!? せめてマージョリーだけでも……!
焦慮に喘ぐ美男子の心中を、美女の声が緩やかに宥めた。
「ノリアキ、 『許可』 くれる?」
「え?」
集中砲火を浴びるので立ち止まるわけにはいかず、
だが思考回路は演算を続けたまま花京院は返す。
「コレから遣うの、見た目は派手だけど
威力はそうでもないから人間に当たっても修復出来る。
敵の攻撃がどこから来るのか解らなくて、その対処に困ってるんでしょ?
だったら、ここは私に任せて」
微塵の追従もない、強い意志を宿す菫色の瞳。
即座に立ち止まって手を離すと、
前方から向けられる殺意からすら護るように
スタンド能力を展開させる。
「ボクは、アナタが冷酷だなんて想ったコト、一度もありませんよ……
さっきは、言い過ぎてすいません……」
「うん……ありがと、ノリアキ……」
「ケッ……!」
互いの交感に魔狼の苛立ちが混じる中、二人の周囲を翡翠の燐光が覆う。
高速回転する結晶が、美女の焔儀を妨害する凶弾の侵入を阻む。
無論ロケット・ランチャーの全弾一斉射撃を防ぐほどの守備力はないが、
互いが互いを信頼する証として両者は各々の役割に殉じる。
「発 射ッッ!!」
遙か遠方で、斜線軸の微調整を終えた兵士が、
特射榴弾がフル装填された発射機に点火した。
圧縮ガスのバックブラストで空間を焼きながら
天空へと駆け上っていく無数の弾体。
狙う標的とはまるで見当はずれの方向、
しかし、 “その先にこそ” 放った兵器の威力を増大させ、
尚かつ必中のスピードと精密性で狙撃する 『スタンド』 が存在する。
『……』
ソレの大きさは、小型のキーホルダー程度。
十字型の表面が風切羽のように反っており裏面も同様、
弾けた果実を想わせる中心の黒点裏がドーム状に膨らんでおり
その末端部に鍵型のプレートが二つブラ下がっている。
大凡、戦闘型とは想えぬ形状。
『星 の 白 金』 や 『聖 光 の 運 命』
とは似つかぬ生命の幻 像。
しかしコレこそが無欠の狙撃者ジョンガリ・Aの有するスタンドであり、
如何なる攻撃の侵入を許さぬ狙撃衛星。
『マンハッタン・トランスファー』
本体名-ジョンガリ・A (コード・ネーム)
破壊力-E スピード-E 射程距離-A
持続力-A 精密動作性-A 成長性-C
宙を揺蕩うスタンドの全面が、下方から接近する熱源を感知した。
その様子は、噴き散る気流までも正確に 「本体」 ジョンガリ・Aの脳裡へと
転送 (トランスファー) される。
と同時に、手の平に収まるほどの大きさだったスタンドが、
突如ムクムクと膨張し出した。
熱源を感知してから一秒ない、正に急速の変容 (トランスフォーム)
スタンド能力には、保持者の資質と訓練次第で
その大きさを変えられる技術が有るが、この場合は少し意味合いが違う。
本体の撃ち出す “兵器の種類によってサイズを変える”
“このコトまで含めて” 衛星スタンド
『マンハッタン・トランスファー』 なのだ。
通常、 「暗殺」 にはライフル以外用いない。
故にスタンドサイズも小型以上に変える必要はないが
今回のような場合(自身が刑務所にでも収監されていない限り)
あらゆる武器の使用が許される 『総力戦』 ならば、
スタンドは文字通りの衛星、巨大な 「中継基地」 と成って
重火器を跳ね返すコトが可能となる。
あらゆる兵器のスペシャリストである
ジョンガリ・Aの精神に、その限界はない。
おそらく火炎放射器や、現在開発中のレーザー兵器すら
跳ね返すのは容易だろう。
故に今までの戦いはほんの座興、手段と種類を選ばず、
スタンドの能力をフルに活用するコレからが真の死闘となる。
薄く大きく拡がり、絨毯ほどのサイズになったドームが
12の弾体をそっくり呑み込んだ。
格納による膨張は見られず周囲に漂う余熱以外、空はいつもの静寂を保つ。
だがそのゼロコンマ一秒後、弾けた中心の黒点が異様な光を放ち、
そのままスタンドパワーを放出する四つの羽根が直方状に逸り返ると同時に、
消滅と見紛う速度で開いたドームの裡側から12の弾体が射出の勢いそのままに
直列となって吐き出された。
上空数百メートルの距離にも関わらず、照準は微塵の誤差もなくピタリと
二人の男女を捕らえている。
何故か疾走を止め路上の直中に停止した 「標的」
だが動き回ろうが建物に逃げ込もうが無駄、
スタンドによって加 圧されたロケット砲弾は、
半径300メートルを火の海にする。
最早、どんな能力だろうと防ぎようがない、
地下に逃げ込んでも爆熱の火力は奥底まで浸透する。
『蒼 蓮 拾 参 式 戒 滅 焔 儀!!』
彼方から接近する脅威に背を向けたまま、
美女はこれから発動する焔儀式の構えに入った。
その傍で花京院は、僅か見落としもないよう
翡翠結晶を滞流させながら神経を研ぎ澄ます。
(くたばれ花京院ッッ!! ダークブルー・ムーンッッ!!)
『冥 哭 絶 劫 闇 蒼 月ッッッッ!!!!』
流式者名-マージョリー・ドー
破壊力-ランダム(B~S) スピード-B 射程距離-最大半径500メートル
持続力-C 精密動作性-D 成長性-B
美女の躰からブワリと抜け出た蒼い球体、
ソレが巨大なシャボンの如く上空へと昇っていく。
しかし割れない、揺るがない、密度は光を透過しないほどに底深い。
雲の裂け目から抜け出る弾体、その遙か遠い位置、
ニアミスとはとても呼べぬ距離で球体が擦れ違う。
対空迎撃としては、余りにおそまつな美女自慢の焔儀、しかしその刹那。
ピシィッ!
文字通り敵の眼中にも入らなかった球体の真ん中に、一筋の切れ目が入る。
ギギ……
ソコから、硬質ガラスを裡から掻き毟るような感覚。
ギギギギギギギギギギギギギギギッッ!!
破裂寸前の危機感を伴って、一つの “眼” が捲れ上がる。
瞼や輪筋で覆われていない、生の眼球。
にも関わらず張り裂けた毛細血管のような罅が縦横に走り
脈動する虹彩が毒々しい色彩へと変貌していく。
やがて滴 り落ちる、血の涙。
月の慟哭、或いは哀咽。
かつて、掛け替えのない少女を失った時そのままに、
“瞳そのものが” 爆砕して「嘆き」が大地を覆い尽くす。
ソレは、放射状に散開して至る処に突き刺さる蒼き鉄針。
一度刺さったら抜けないよう、兇悪な殺傷力を持つ針の一本一本が
わざと不定形に刃引きされ、ソレがそのまま式者の凄まじい憎しみを物語る。
術の精密性は無きに等しい、というより意味がない。
射程距離全域に文字通り豪雨の如く降り注ぐ戦形を執るので
命中率は常に100%、着弾数の不確定要素が残るのみ。
フレイムヘイズきっての復讐者、当代最強を誇る自在師、
マージョリー・ドーが封絶を差し押いて一番最初に覚えた焔儀がコレ。
己の嘆きを、憎しみを、絶望を、
ありのまま想う様スベテの徒に喰らわせてやりたいという
狂気にも似た猛執が能力の全容から伺える。
本来、敵も味方も自分さえも、全部丸ごとブッ潰すという自爆技。
しかしソレを、マージョリーは初めて 『策』 として用いた。
感情のままに暴発しない、射程範囲を制御する、可能な限り威力も抑える、
術の特性故に熟練のフレイムヘイズでも無理な芸当、
しかしマージョリーはその理不尽を乗り越えた。
傍に立つ者、中性的な風貌の少年。
傷つけたくないから、もう失いたくないから。
栗色の髪、氷緑色の瞳。
私を護ってくれる者は、私が護る!
ドォッッッッッッッッッグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォ
ォォォォォォォォォ――――――――――――――――ッッッッッッッッ!!!!!!!!
爆炎、黒煙、轟音。
地上12メートルの位置で一斉起爆した直列弾体の周囲は、
縦横無尽に拡がった蒼針の筵 、穿孔。
そのような破滅的な光景の中、純潔無垢な少女の幻像が浮かび上がった。
(――ッ!?)
遠間に位置する闇の鷹、その双眸にも、一瞬、それでも何より鮮やかに。
『対地空迎撃』 精密な分析で標的のみを撃ち抜こうとする花京院とは「逆」の発想だった。
弾体がどこから襲来するのか解らないのなら、その可能性がある場所スベテを攻撃する。
理屈では有るが余りにも荒唐無稽な、そしてフレイムヘイズ屈指の自在師である
マージョリーでなければ成せない術。
直接でなくとも累乗誘爆により、外れても勝敗が決する局面、
その悪魔の火力は上空で無効化した。
コレが自在法、或いはスタンド能力そのものなら結果は違ったのかもしれない。
がしかし、強大な威力とはいえあくまで 「兵器」
外部衝撃による起爆性の高さはどれも一律。
故にこの局面に於いて、膨大な炎気を広域に放出出来るマージョリーほど
「相性」 の良い者もいない。
焔儀発動、その最中、自分を守護してくれる者がいれば
相手の反撃を気にする必要もない。
この事実を、誰よりも深く実感し、驚愕に躰を揮わせていたのは
他ならぬ美女本人。
今日この日までたった一人で戦い続け、戦力は向上したものの
そのままでは決して辿り着けない新たな領域。
(出来、た……)
菫色の瞳を瞠り、痺れにも似た感覚が全身に走る。
先述したように、この焔儀は敵も味方も巻き込む自爆技、
有効で在ると同時に自らも抜き差しならない状況をへと追い込む「諸刃の剣」
その禍々しい刀身の片刃が、見事なまでに脆く崩れ落ちた。
文字通り蒼針の豪雨に見舞われ、細孔だらけとなった
シンガポールの街並み。
頽廃的というより寧ろグロテスクな、総身が粟立つような光景。
しかしその極々一部だけ、美女と少年の周辺だけ、
神の祝福を受けた 『聖域』 のように災禍を免れていた。
コレは、マージョリーの経験と技量を以てすれば当然と云える結果だが、
それ故に美女の奮えは止まらない。
短慮なる想いつきの攻撃、訓練を積んでないぶっつけ本番の焔儀等
「常勝」とは一番遠い所に位置するモノ。
歴戦のフレイムヘイズ、ましてや戦闘に於ける妥協を一切許さない
マージョリーにしてみれば暴挙を通り越した愚行と断じても良い。
だが自分はそのような可能性の薄い選択を実行した、
出来ると想った、コレしかなかった、というより躰が勝手に動いた。
死中に活、背水の陣など実力の伴わない者が縋る最後の詭弁だと
一笑に付してきた今日迄。
しかしソレが、飽和状態だと想っていた己の力に新たなる道を指し示した。
存在すらしなかった広大な闇に篝火が灯ったようだった。
(こんなに……違うの……?)
自らの力を誇示して恣 に暴れ回るコトと、
「誰か」 の為に限界をも超える意志。
前者は、誰でも出来る。力に溺れて熱情に浮かれて、
想いのままに破壊を繰り返せばそれで良い、強さも弱さも関係ない。
しかし後者は、一切の甘えは許されない、自身の「限界」すら関係ない、
死の決意をして挑んでくる者はいるが、こちらは 『死ぬ事すら赦されない』
瞳に映る、一人の少年。
そうだった、 “アノ娘” がそうだった。
誰かの為に、私の為に、懸命に 『運命』 と戦っていたんだ。
その小さな躰で、小さな手で、大切なモノを護るために。
ソレが、アノ娘の強さ、ルルゥの強さ。
ずっと、ずっと教えてくれてたんだ。
死んでも私を護る為に。
「 “上空” ですッッ!!」
湧き起こる万感に陶酔していた美女を、美男子の喊声が醒ます。
すぐさまに周囲を覆っていた防御結晶を噴出力に換えて、
無傷の路面が炸裂する。
「本体」 と共に天高く飛翔するスタンド、
高速に比例する気流の干渉を受けず、
射出音、弾道変化、誘爆地点、以上の要素から弾き出した
「目標」 の場所へ、正確に幻 像は空に立つ。
『……』
自身のスピードは無きに等しいため、未だ中継地点で舞うスタンド。
『エメラルド・スプラッシュッッ!!』
その狙撃衛星に、スタンドパワーを集束した翡翠結晶が光と共に拡散した。
←TOBE CONTINUED…
後書き
はいどうもこんにちは。
メインとサブタイは好きなゲームのタイトルから戴きました。
つ https://www.youtube.com/watch?v=wONI34aquiU
(現在「5」をプレイ中、しかしレベル上げが大好きで
途中でレベルと悪魔がカンストするので大概クリアせずに終わる(3も4も))
なんか花京院とマージョリー(姐サン)のイメージに合いますねこの曲。
個人的に彼女は髪下ろして眼鏡無しの方が好きなので
毎回理由つけてはとっ外してますw
(あんまりトーガの中に入らないのもソレが理由)
まぁ今更言うコトでもないですが彼女の髪が栗色なのも
(地色は花京院と同じ薄茶色)
アノ娘 (ルルゥ) の存在を躰に刻み付けるためです。
(この「作品」では。ベルセルクのガッちゃんが黒い(喪に服している)のと同じ))
ソレでは。ノシ
ページ上へ戻る