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真田十勇士

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巻ノ六十七 関白秀次その四

「して太閤様は金色が随分お好きじゃな」
「ですな、大坂城といいこの聚楽第といい」
「とかく金箔を使われます」
「黄金の茶室も持っておられますし」
「とかく金がお好きですな」
「何かと」
「それをご自身の、豊臣家の色にさえされている」
 その金色をというのだ。
「そこまでお好きじゃ」
「金色に染めた具足や陣羽織にですな」
「金色の旗」
「鞍も金色ですし」
「豊臣家は全てが金色ですな」
「そこまでお好きじゃ」
 秀吉、彼はというのだ。
「その派手なまでの絢爛さで天下人であることも示されておる」
「この聚楽第にしてもそうで」
「豊臣家自体が、ですな」
「金色を象徴にされておられる」
「天下人の色とされていますか」
「そういうことじゃ、天下人の贅でな」 
 それにというのだ。
「その権勢も見せておられる」
「金をふんだんに使う」
「どれだけでも使える、ですな」
「天下人の権勢を見せておられる」
「そうなのですな」
「そういうことじゃ、だがな」
 幸村はこうしたことも言った。
「永遠に存在する城や御殿はな」
「ないですな」
「形あるものは全て何時かはなくなるもの」
「全ては必ず滅する」
「それは世の常ですな」
「そうじゃ、だからな」
 その摂理があるからこそというのだ。
「この聚楽第もな」
「ここまでの絢爛さですが」
「何時かはなくなる」
「そうなりますか」
「それはどうしようもない」
 形あるものであるが故にというのだ。
「拙者はどうもこうした絢爛さはな」
「ですな、殿には縁なきもの」
「我等にとってもです」
「贅沢も絢爛も縁なきもの」
「そうですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「それはな」
「ですな、どうしても」
「そのことは、ですな」
「我等には縁がない」
「どうにも」
「見事と思うがしてみようとは思わぬ」
 これが幸村の言葉だった。
「やはりな」
「左様ですか」
「それは、ですか」
「どうしようもない」
「そうなのですな」
「うむ」
 こう言うのだった。 
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