真田十勇士
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巻ノ六十七 関白秀次その三
「驚きました」
「我等のこのままの身なりでいいとは」
「皆忍の身なり、僧衣のままですが」
「傾奇者と変わりませぬが」
「それでもよいとのことですか」
「むしろその身なりでないとならぬと書いておられた」
秀次のその文の中でというのだ。
「その様にな」
「では」
「その様にさせて頂きます」
「この服でいかせてもらいます」
「是非」
「その様にな、では参ろうぞ」
幸村は十勇士達に言ってだ、そのうえで。
彼等を連れてそのうえで聚楽第に参上した、聚楽第はこれ以上はないまでにみらびやかなものであった。
金に輝いている高い建物だ、その前に来てだった。十勇士達は目を瞠って幸村にこうしたことを言った。
「凄いものですな」
「輝くばかりです」
「大坂城も凄いですがここもです」
「凄いですな」
「うむ」
実際にとだ、幸村も答えた。
「まるで宮殿じゃ」
「ですな、関白様のおられる宮殿ですな」
「次の天下人がおわす」
「そうした場所ですな」
「そうじゃ」
実際にというのだ。
「これは凄い、ではな」
「はい、今よりですな」
「我等は聚楽第の中に入り」
「関白様とお会いする」
「そうしますな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「そうしようぞ」
「これより」
十勇士達も応えてだ、彼等は聚楽第の中に入りそしてだった。秀次の間へと案内された。聚楽第の中もだ。
金箔や絵で飾られた麩が続き質のいい檜が天井にある。柱もしっかりとしており絢爛たるものがそこにある。
外観に負けない華やかにだ、幸村も十勇士達もまた言うのだった。
「大坂城よりは小さいにしろ」
「この豪華さたるや」
「まるで竜宮城」
「ここまでのものとは」
「いや凄いものですな」
「天下人の贅じゃな」
幸村は唸って言った。
「これは」
「天下人のですか」
「その贅沢ですか」
「これは」
「そう言うべきものですか」
「まさにな」
幸村はまた言った。
「この絢爛さはな」
「この世のものとは思えませぬな」
「金色に赤に青にも眩いばかりです」
「白に黒もあります」
「五色ですな」
「それがありますな」
「黄色が金になったな」
そうした五色だとだ、幸村は言った。
そしてだ、幸村は進みつつこうも言ったのだった。
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