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提督はBarにいる。

作者:ごません
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長女の結婚騒ぎ・中編


「え~、本日お集まり頂きました皆様におかれましては、今回の酒宴の意味を重々ご理解の上でのご参加と思います。」

 珍しく那智が緊張した顔で挨拶を述べている。場所は『居酒屋・鳳翔』。提督禁制の女の園だ。何故俺がその情景を見られているかと言えば、

『ワレアオバ、ワレアオバ。提督聞こえます?』

 記録映像撮影の目的でカメラを回している青葉に、ライヴ中継させているからだ。この大騒ぎの発端を作ったのだ、それ位の罰は受けて貰おう。

「今回の幹事は妙高型の那智と足柄、そして羽黒が努めさせて頂きます。」

「ではっ‼妙高型一番艦妙高、起立っ‼」

「は、はいっ!」

 顔を真っ赤にして妙高が立ち上がる。

「そ、それでは……皆さん、ご唱和下さいっ!」

 珍しく羽黒が声を張り上げる。

『こっそり男を作っちゃう奴は~‼』

 会場にいる艦娘全員の大合唱だ。物凄ぇボリューム。

『しかも、プロポーズまでされちゃうような艦娘は~‼』

『独身女の巣窟から出ていけ~っ!』

『出て行けええぇぇぇぇっ‼』

 これが噂の『艦娘独身寮の追い出し口上』か。一度聞いてみたいとは思っていたが、中々迫力があって面白い。ってか、何なんだこの大学生の体育会系のサークルのノリ。



 妙高から頼まれた事。それは、

『三日後に催される結婚祝いの宴の後に、彼に会って欲しい』

 という事だった。どうやら、向こうの彼氏が俺を父親がわりに挨拶したいという事らしい。それで今、俺はそのタイミングを見計らう為に青葉にモニタリングさせている(建前は)。

「はいっ!私妙高はこの度独身と晴れておさらば致しますので、独身寮を退寮させて頂きますっ‼」

 まぁ本音を言えば、

「なので皆さん、私に続いて早く退寮出来るように頑張って下さい!」

このバカ騒ぎを覗きたかっただけなんだが。



主賓である妙高は、年がら年中モテないと嘆いている高雄や隼鷹に絡まれ、幹事のハズの足柄と那智は既に出来上がっている。他の奴等も何の飲み会か忘れたかのように、飲めや歌えの大騒ぎ。うわ、スゲェカオス。こんな事いつもやってんのか、この店は。


「青葉さん、お疲れ様です。」

 にこやかに青葉に話し掛けて来たのは、鬼の主計課長、鳳翔さん。この間もズボンの件でしこたま怒られた。その微笑みを崩さないまま、ガシッとカメラを掴んできた鳳翔さん。

「提督?覗き見はいけませんよ?あとでお話があるので、そのおつもりで。」

 その瞬間、青葉からの映像は途絶えた。あっ、ヤバイ奴だこれあ艦これ。俺鳳翔さんに殺されないよねコレ。



 ところで今、俺は緊張を紛らわす為に飲んでるんだが……。
まっっっったく酔えないんだけど。え、何?もうテキーラのボトル半分空いたんだけど。どうすんのコレ。娘を貰いに来た男に会う世のお父さんてこんな気分なの?これは辛いわー、そりゃ娘はやらん‼とか言い出しちゃうわー。とか何とか考えてたら、コンコン、と扉をノックする音が。

「お、おぅ。入れ~。」

 少し飲んで血色が良くなったか、頬を桜色に染めた妙高がやって来た。

「か、彼は遅れてくるそうなので、もう少しお待ちください……」

 お、おぅ。と生返事を返しながら、俺は更にテキーラをあおっていた。すると、扉の前に人の気配。

「し、失礼しますっ!」

 少し緊張した面持ちで、妙高の『彼』が入ってきた。
 
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