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真田十勇士

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巻ノ六十六 暗転のはじまりその二

「それではじゃ」
「これよりですな」
「我等全員でじゃ」
「関白様にお話をし」
「それでお考えを変えて頂こう」
「では」
 石田が応えそしてだった。
 大名達はすぐに秀吉の下に参上した、そのうえで秀吉に言うのだった。
 家康がだ、大名達を代表して秀吉に言った。
「この度のことですが」
「利休のことか」
「はい、どうか」
「ならぬ、既にじゃ」
「既にとは」
「人をやった」 
 秀吉は暗い顔で告げた。
「もうな」
「何と・・・・・・」
 これにはだ、誰もが絶句した。
 それでだ、家康も言うのだった。
「ではその者が」
「詫びれば許すとな」
「関白様のお言葉を」
「授けた」
「では若し利休殿が頭を下げないなら」
「うむ、これが最後じゃ」
「では」
 家康はあえてだ、秀吉に問うた。
「頭を下げられないなら」
「腹を切れとな」
「使者にですか」
「言えと伝えた」
「それではです」
 家康は何とか己を保ちつつ秀吉に言った。
「利休殿は」
「頭を下げぬというか」
「あの方も誇りがありますし」
「天下人であるわしに頭を下げぬ様なか」
「それは」
「その様な誇りはじゃ」
 まさにとだ、秀吉は目を怒らせて家康に言った。
「あってはならぬであろう」
「この天下に」
「わしは天下人であるからな」
「ですからお心を広く持たれ」
「利休が謝らずともか」
「よしとされるべきです」
 使者をやっても尚もとだ、家康は言うのだった。
「何とか」
「人をやった」
 秀吉は強い声でだ、家康に返した。
「だからもう出来ぬ」
「早馬を送れば」
「ならぬ、もうこれで終わらせる」
 利休が謝ればよし、そうでなければ腹を切れというのだ。
「これでな」
「ですか」
「この話はこれで終わりじゃ」
 秀吉は邪魔なものを取り払う様にして言った。
「皆の者ご苦労であった」
「関白様、ここは」
 石田が言おうとした。しかし。
 大谷はその彼を目で制してだ、目だけで首を横に振って告げた。石田もそれを見てそれ以上は言うことが出来なかった。
 大名達はこれ以上どうすることも出来ず下がるしかなかった、だが。
 下がった後でだ、家康は首を横に振って言った。
「終わったわ」
「うむ、これでな」
 前田も言う。 
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