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Blue Rose

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第三十一話 街を歩きつつその八

「そうなるわ」
「やっぱりそうよね」
「受け入れる人は少ないわ」
 その優花の過去をというのだ、男だったことを。
「奇異の目っていうかね」
「珍しい、面白いものを見る」
「そうした目で見るわ」
「どうしてもそうなるのね」
「人は変わったものと思えばね」
 その人がである。
「自然とそうした目で見るものなのよ」
「好奇心なのね」
「そう、そこに悪意はなくても」
 勿論悪意が入る場合はある、しかし人は多くの者は常に悪意を抱いて生きているものではない。常に悪意を抱いている輩はそれだけで異常者と言えるだろう。自然と心が悪意によって歪みさらに歪んでいく。
「そうした目で見られたい?」
「それはね」
「そうね、静かに暮らしていきたいわね」
「やっぱりね」
「それならよ」
「このことは徹底的に隠すべきね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「そうしてね」
「私自身の為に」
「そう、貴女が貴女自身を守る為に」
「隠すべきね」
「何があってもね」 
 それこそというのだった、強い言葉で。
「隠していってね」
「一生」
「そう、一生ね」
 まさにとだ、また答えた優子だった。
「貴女は女の子なのよ」
「その全てが」
「男の子だった記憶は消し去るの」
 優花を守る為にというのだ、彼女自身を。
「身体からもね」
「心からだけでなくて」
「無意識でもね」
「無意識でも」
「無意識から出ない様に。療養所でも言われたわね」
「ええ、そこはしっかりとってね」
「だからね」
 それでと言うのだった、優子は再び。
「隠していってね」
「わかったわ」
「そうしたことでね、お願いね」
「誰にも知られない様に」
「ただ、将来はね」
 ここでだ、優子はこれまで以上に真剣な顔になった。焼酎を飲む手を止めてそのうえでだ。妹の目を見て言うのだった。
「結婚するわね」
「その人は」
「貴女の過去もね」
「受け入れられる人」
「そうした人であった方がいいわね」
 こう言うのだった。
「やっぱり」
「そこまで信頼出来る人ね」
「元々夫婦はそうしたものよ」
「心から信頼出来る人と結婚するものね」
「そうあるべきなのよ」
 理想をだ、優子はやや遠いものを見る目になって優花に話した。
「心から」
「信頼出来る人とは一緒にいてはならない」
「結婚は特になのよ」
「一生一緒にいるかも知れないから」
「そう、だからね」
 それ故にというのだ。
「確かな人と結婚してね」
「私の過去を受け入れてくれる人と」
「そして隠してくれる人とね」
「龍馬みたいな」
「簡単に言えばそうね」
 まさにそうだという返事だった。 
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