Blue Rose
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第三十話 幸せの影その十一
「大阪でね」
「そうなのね」
「その名物カレーと同じでね」
「トルコライスもなのね」
「いけそうよ」
二杯というのだ。
「これはね」
「美味しいし」
「お料理自体がいいわね」
「美味しいって教えてもらったの」
優花のクラスメイトの女の子にというのだ。
「それで食べてるけれど」
「前にもここに来たのよね」
「それで食べたの」
「その時もそう思ったのかしら」
もう一杯、とだ。
「貴女は」
「いえ、その時はそこまで思わなかったの」
「このトルコライス量も多いしね」
「それでお腹一杯になったけれど」
そうなったというのだ。
「けれど今はね」
「もう一杯なのね」
「どうしてかしら」
「やっぱり歩いてるし」
今日はというのだ、長崎の街を巡って。
「それに気持ちが上向いてるからね」
「食欲があるのね」
「そうだと思うわ」
だからだというのだ。
「心と身体の調子がいいとね」
「それで食欲が出るわね」
「実際にそうでしょ」
「ええ、だからなのね」
「今の貴女は食欲があるのよ」
「そうなのね」
「私と一緒にいるからかしら」
その気持ちが上向く原因についてだ、優子は考えて述べた。
「やっぱりそうだから」
「それかしら」
「そう思ったけれど。私と会えて嬉しいのね」
「嬉しくない筈がないわ」
これが優花の返事だった。
「だってずっと会いたかったしこうして長崎を巡れてるから」
「嬉しいのね」
「姉さんが私と同じだったらどう?」
優花は姉に問い返した。
「その場合は」
「答えるまでもないと思わない?」
微笑んでだ、優子は優花に答えた。これが彼女の今の返事だった。
「そのことは」
「やっぱりそうよね」
「ずっと一緒に暮らしていたからね」
「お父さんもお母さんもいなくなったけれど」
事故で二人共死んでしまったのだ、優花がまだ子供の時に。
「それでもずっと一緒だったし」
「そうよね、私達はずっと一緒ね」
「一緒にいた姉妹だから」
姉弟であったがだ、かつては。だが優花はあえてこう言ったのだ。彼女達の今のことを踏まえてそのうえでだ。
「嬉しいわよね」
「そうよ、もうこれは理屈じゃないわね」
「そうしたものを越えてるのね」
「理屈は結局ね」
「結局?」
「その人の範囲の中にあるだけで」
理という言葉は重い、だがそれでもというのだ。
「結局は小さい、狭いものなの」
「そうしたものなの」
「そう、理屈は理屈でしかなくて」
そしてというのだ。
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