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真田十勇士

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巻ノ六十三 天下統一その十四

「あの地は」
「近畿で言うと都か」
「まさに」
「あの都は実に治めやすい場所じゃ」
「だからこその都ですな」
「そうじゃ、では江戸は東国の都か」
 こうも言った信之だった。
「そう成り得るか」
「そうした場所ですか」
「今は何もない場所じゃな」
「はい、その廃城の様な城の他はです」
 まさにというのだ。
「町も田畑もです」
「何もなくか」
「一面の野原です」
「今はそうか」
「まさに、しかし」
「銭と時さえかかれば」
「見事な城にもなりましょう」
 杯を手にだ、幸村は己の兄に話した。
 そのうえでだ、彼はこうしたことも言った。
「さて、それでなのですが」
「うむ、これからのことじゃな」
「天下は一つになりますな」
「間違いなくな」
「泰平の世が訪れますな」
「ようやくな、しかしわかっておろう」
「はい、まだまだ磐石でありませぬ」
 訪れる泰平はとだ、信之にこう答えた。
「それは」
「そうじゃな」
「訪れたばかりで」
「何かあればな」
「すぐに元の乱世に戻りますな」
 鋭くなった顔でだ、幸村は信之に述べた。
「匙加減一つ間違えれば」
「そうした状況じゃな」
「まだまだ」
「ではじゃ」
「はい、それでは」
「それをどう守るかじゃ」
「守成ですな」
 幸村はこうも言った。
「泰平をもたらしたのが創業なら」
「それを守るのはな」
「まさに守成ですな」
「泰平を磐石にしそれを守る」
「そうしていかねばなりませぬな」
「これからはな、関白様がどうされるかじゃが」
「中納言殿と利休殿がおられ」
 幸村は秀長と利休の名前を出した。
「石田殿、大谷殿もおられ」
「人が揃っておられるな」
「まさに、ですから」
「天下は羽柴家の下定まるか」
「そうした流れですが」
「しかしそれはまだ磐石ではないからな」
「どうなるかはですな」
 また言った幸村だった。
「わかりませぬな」
「まだまだな、しかし我等はな」
「何があろうとも」
「生き抜いていこうぞ」
 信之は幸村に確かな声で言った。
「この世で」
「真田家は」
「我等は腹を切るのは最後の最後じゃ」
 最早どうにもならなくなった時にというのだ。 
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