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真田十勇士

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巻ノ六十三 天下統一その十五

「それ以外はな」
「何としても生きること」
「地獄の沙汰も銭次第じゃが」
「その地獄に行くのも最後の最後じゃ」
「そういうことですな」
「だから家は守るぞ」
「何があろうとも」
「武士の心もな」
 信之はこれもと言った。
「守っていこうぞ」
「武士のですな」
「そうじゃ、それもじゃ」
 まさにというのだ。
「守っていこうぞ」
「ですな、我等も武士だからこそ」
「何があろうともな」
「守っていきましょうぞ」
 家と武士の心、その二つをというのだ。
「必ず」
「うむ、それでだが」
「それでとは」
「御主は今は二千石だったな」
 信之は幸村の石高の話をした。
「そうだったな」
「はい、そうですが」
「どうも父上は万石をと考えておられる様だ」
「それがしがですか」
「そうだ、万石だ」
 それだけの石高をというのだ。
「わしが家を継ぐ様だが」
「それがしもですか」
「そうだ、万石取りとしてだ」
「家にいると」
「いや、上田だけでなく沼田も手に入ればな」
「その時は」
「わしが沼田に入るがそのわしが家督を継げば」
 その時はというのだ。
「御主が沼田を治めることになるからな」
「その時のことを考えてですか」
「この度の戦の功によりだ」
「それがしが万石取りのですか」
「そうなるやも知れぬ」
「左様ですか」
「受けるか、この話」
 信之は幸村のその目を見て問うた。
「大名になるか」
「それは」
 幸村は信之を見て一呼吸置いた、そのうえで兄に答えたのだった。


巻ノ六十三   完


                  2016・6・29 
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