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真田十勇士

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巻ノ五十九 甲斐姫その十二

「あの城は堅城で甲斐姫という女武者もいるからな」
「だからですか」
「他には考えられませぬか」
「敗れる様な城は」
「他には」
「ない」
 まさにというのだ。
「おそらく明日か明後日に報が来るわ」
「忍城での負けが」
「それの報が」
「それを待つことになろう、問題はな」 
 ここで幸村は顔を曇らせて言った。
「義父上がどうなったか」
「石田殿と共に忍城を攻められていますが」
「それでもですな」
「負けたならどうなるか」
「それがお気になられますな」
「見たところ星は落ちておらぬ」
 どの星もというのだ。
「義父上も石田殿もご無事と思うが」
「それもですな」
「報次第ですな」
「それもな」
 こう言うのだった。
「まあ明日か明後日になればわかる」
「では今は、ですか」
「その報を待ちますか」
「お義父上のことも」
「あの方のことも」
「そうしよう、ではじゃ」
 ここまで話してだ、幸村は十勇士に言った。
「今宵はこれで終わりじゃ」
「はい、寝ますか」
「そうしますか」
「そうしようぞ」 
 こう言ってだった、幸村は十勇士達と共にこの日は休んだ。そして次の日朝早くにだ。
 早馬からの報を聞いて笑みを浮かべた、敗戦の報であったがその報の中身を聞いて自然とそうなった。


巻ノ五十九   完


                   2016・5・29 
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