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真田十勇士

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巻ノ五十六 関東攻めその七

「好きなだけ飲もうぞ」
「特別にですな」
「そうしよう、皆でな」
 こう言って自ら飲む、そして。
 その飲む中でだ、幸村は兄にこうも問うた。
「それでなのですが」
「それで?」
「それでといいますと」
「うむ、一つやることはな」 
 それはというと。
「二日酔いになるからな」
「このまま飲んでいると」
「朝は少しやるか」
「あれをしますか」
「久しぶりにな」
「ですか、では」
「その為にも今はな」
 心置きなくというのだ。
「飲もうぞ」
「わかりました、それでは」
「朝にあれをやることを頭に入れてな」 
 そのうえでというのだ。
「飲むぞ」
「それでは」
「あれといいますと」
「それは一体」
 十勇士達は自分達の主の話を思い出して言った。
「それは何でしょうか」
「朝に何をするのか」
「それは一体」
「何なのか」
「朝になればわかる」
 これが信之の彼等への言葉だった。
「その時にな」
「二日酔いになればですか」
「その時にわかる」
「そうなのですか」
「そうじゃ」
 まさにその時にというのだ。
「だから今は飲むぞ」
「さすれば」
「今宵はそうしましょうぞ」
 こうしてだった、十勇士達はこの夜は酒を心ゆくまで飲んだ。そしてその朝だ、彼等は痛む頭と重い身体にやはりと思ったが。
 その彼等にだ、共に寝起きした幸村が言った。
「では今からな」
「はい、昨夜殿が若殿とお話されていた」
「そのことですな」
「それをしてですな」
「酒を抜くのですな」
「真田家伝来の酒の抜き方じゃ」
 それはというのだ。
「それをするぞ、来い」
「わかりました、ではです」
「お願いします」
「その酒の抜き方を教えて下さい」
「これより」
「ではな、ついて参れ」
 幸村は十勇士達の言葉に頷いてだ、そのうえで。
 彼等をある場所に案内した、そこは川だった。
 その川の前にはもう信之がいた、彼は笑って幸村達に言った。
「さっきまで奥に怒られておった」
「飲み過ぎだとですか」
「うむ、そうな」
 まさにというのだ。
「そう叱られておったわ」
「やはりそうですか」
「まあその話は終ったからな」
「だからですな」
「これからやるか」
「はい、それでは」
「酒を抜く、まずはじゃ」
 信之からだった、服を脱ぎ。
 幸村も服を抜いた、そしてだった。幸村は十勇士達に言った。 
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