魔女に乾杯!
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118部分:第百十七話
第百十七話
第百十七話 騙せないもの
「笛の音でわかったのよ」
華奈子は四人と魔女に対して言った。
「笛の音で!?」
「ええ、何処にいるのかね。あんたが笛を吹くとそこから音が聴こえてくるから」
「そうよ」
魔女は悪びれずに笑っていた。
「そこで場所がわかったのよ。後はそこを狙うだけ」
「そうだったの」
「けれどよくわかったわね」
「あたしじゃなきゃわからなかったでしょうね」
華奈子は真剣な顔で魔女を見据え続けていた。
「あたしの耳は誤魔化せないわよ、何があってもね」
「いい耳をしているわね」
「それだけじゃないわよ、その音感だってわかるんだから」
「音感も」
「あたしの耳を誤魔化そうと思ったらね、この程度じゃ駄目ってことよ」
「それじゃあ正攻法で来いってことかしら」
「そうよ」
華奈子は言い切った。
「そろそろあんたもタネ切れでしょ。最後にどかんとでっかいの見せて欲しいわね」
「大きいかどうかはわからないけれど」
魔女は笑みを消して言った。
「とびきりの魔法を見せてあげるわ」
「むっ」
「何が出るのかしら」
「どっちにしろ凄いのが出るでしょうね」
何時の間にか華奈子が魔女と対峙していた。そして四人もそれぞれ魔女を取り囲んでいた。
「あんたとの勝負も、これで最後にさせてもらうわ」
「それはこちらの台詞よ」
華奈子と魔女はそれぞれの言葉で宣戦を布告した。
「貴女達との戦いも。これで終わりよ」
「はい」
「それではここで」
タミーノとフィガロも身構えた。
「タロ、ライゾウ」
それを受けて華奈子も使い魔達に対して言う。
「覚悟はいいわね」
「うん」
「面倒臭いけれどね」
二匹もそれに頷いた。ライゾウは多分に嫌々であったが。
「とにかくいいわよね」
「だからいいんだって」
ライゾウは相変わらずだったがそれでも華奈子はよしとした。他の四人とその使い魔達もそれぞれ戦闘態勢に入っていた。いよいよであった。
「では見せてあげるわ」
魔女はまたしても笛を構えた。
「私の最高の術」
笛から曲が響きはじめる。
「聴きなさい」
その曲が場を支配しはじめる。最後の幕が開いた。
第百十七話 完
2006・5・23
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