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魔女に乾杯!

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117部分:第百十六話


第百十六話

                       第百十六話   消えている魔女
 蝶達は忽ちのうちに消え果てた。五人はまずは危機を脱した。
「まずは褒めてあげるわ」
 紫の魔女の声が五人を讃える。
「けれど。それではまだ私に勝ったことにはならないわよ」
「・・・・・・・・・」
 五人はその言葉に対して沈黙していた。確かに魔女はまだ健在だからだ。
「私が何処にいるか、わかるかしら」
 魔女は問うてきた。
「わからないと。どうしようもないわよ」
「きっと出させてあげるわ」
 華奈子は強い声でそれに返す。
「何があってもね」
「それじゃあそれをどうするのか見せてもらうわ」
 魔女の声は笑っていた。
「私をどうして出してくれるのかをね」
 魔女の笛の音が聴こえてきた。それだけがその場を覆っていた。
「皆、焦ったら駄目よ」
 華奈子が言った。
「焦ったら魔女の思うツボだから」
「え、ええ」
 四人は何時になく落ち着いた華奈子の声に戸惑いを覚えながらもそれに頷いた。いつもはもっともせっかちな彼女がそんなことを言うとは思わなかったからである。
「きっと。チャンスがあるから」
「ではどうやって見せてくれるのかしら」
 魔女の声はまた尋ねてきた。
「私を出すのを。楽しみにしてるわよ」
「それは」
「だから焦っちゃ駄目」
 華奈子はまた四人を制止した。
「焦ったら負けなんだから」
「そうね」
「それじゃあ」
 四人はそれに従うことにした。そしてじっと時を待つ。
 姿が見えない魔女と睨み合う。まだ互いに動かない。
 魔女も一言も発しなくなった。ただ笛の音だけが聴こえている。
 華奈子はそれから耳を離さない。じっと目を閉じていた。
「・・・・・・・・・」
 彼女は何かを聴いていた。音を聴き分けることには自信がある。そして今それを聴いた。
「そこっ!」
「!?」
 ある一点に炎を放った。その炎は何かを撃った、
「くっ!」
「なっ」
「魔女が!」
 四人はそれを見て驚きの声をあげた。何とそこから紫の魔女が飛び出てきたからである。
「やっぱりそこだったわね」
「ええ」
 魔女は悔しさに満ちた声で華奈子に応えた。
「よくわかったわね、私の場所が」
「音よ」
「音!?」
「そう、それは」
 華奈子は話した。そこに魔女の姿の秘密があったのだ。

第百十六話   完


                              2006・5・16


 
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