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真田十勇士

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巻ノ四十九 立花宗茂その八

 飯が終わったからだ、二人で共にだった。
 店を出た、その店の前でだった。
「ではこれで」
「またお会いしましょう」
 二人は微笑んで別れた、そのうえで。
 幸村は筑前を調べ続け宗茂は城に帰った、城に戻り変装を解き本来の城主の姿に戻るとだ。家臣達が口々に言った。
「殿、どうしてもと言われるので」
「外に出て頂きましたが」
「そこで、ですか」
「よいことがありましたか」
「うむ、見事な方に出会った」
 まさにとだ、宗茂は家臣達に微笑んで答えた。
「天下一の武士となられる方にな」
「天下一の」
「そこまでの方にですか」
「会われたのですか」
「そうじゃ、来られていると聞いてお会いしに行ったが」
 家臣達に無理を言って城を出てだ。
「出た介があった」
「ですか、そこまでの方にお会いした」
「だからですな」
「今の様なお顔なのですな」
「満足された」
「素晴らしい方であった」
 実にと答えた宗茂だった。
「天下には東に本多平八郎という方がおられるな」
「はい、徳川四天王の」
「随分と武辺の方だとか」
「徳川家は武門の誉れ高い家ですが」
「その徳川家の四天王のお一人」
「四天王で随一の猛者だとか」
「わしはその本多殿に負けておらぬつもりだったが」
 これがというのだ。
「その方には及ばぬかもな」
「何と、殿以上のですか」
「そこまでの方だったのですか」
「殿が町で会われた方は」
「そこまでの」
「真田源二郎幸村殿はな」 
 彼はというのだ、ここでその武士の名も言った。
「まさに天下一の武士となられる方じゃ」
「そしてその方がですか」
「大友家を救う為に参られた」
「そうなのですか」
「そうじゃ、大友家は関白様が助けに来られる」
 このことは間違いないというのだ。
「そしてその前にな」
「島津家を調べる為に」
「関白様はその真田殿を送ってこられたのですな」
「左様ですな」
「島津家は今厄介な敵を持った」 
 幸村、彼をというのだ。
「あの者達はまだ気付いておらぬであろう」
「気付かれたのは殿だけですな」
「まさにですな」
「それ故に会われ」
「確信されたのですな」
「左様、これで我等が島津家の大軍を迎え撃ち」
 そしてちうのだ。
「少しでも時を稼げばな」
「その間にですな」
「関白様の軍勢が来られ」
「大友家は救われる」
「そうなりますな」
「左様、真田殿は島津家を調べられその調べたことを関白様に渡され」
「その関白様が大軍を率いて来られる」
 家臣の一人が宗茂の言葉に応えた。
「さすれば」
「我等が踏ん張ればな」
「大友家は救われますな」
「皆の者、死ぬぞ」
 宗茂は澄んだ声で己の前にいる家臣達に告げた。 
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