| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ四十九 立花宗茂その九

「よいな」
「はい、そしてですな」
「我等この城で死ぬまで戦い」
「そして時を稼ぐ」
「関白様の軍勢が九州に来られるまで」
「既に大坂で出陣の準備が整えられている」
 このこともだ、宗茂は話した。
「ならばな」
「後は、ですな」
「我等は戦うだけ」
「死ぬまで」
「大友家の為に」
「それだけじゃ、父上もじゃ」  
 宗茂は紹運のことも話した。
「そのおつもりじゃからな」
「ですな、それではです」
「我等もお父上と同じく」
「死ぬまで戦います」
「そうします」
「その様にな、それでじゃが」
 ここでだ、宗茂は話が終わってこんなことを言った。
「その真田殿じゃが」
「はい、素晴らしき方とのことですな」
「実に」
「そうじゃ、何とな」
 ここで話すことはというと。
「稗飯に汁をかけて食されておった」
「何と、大名家のご次男ですか」
「その方がですか」
「稗飯に汁」
「その様なものを食されていたのですか」
「そうじゃ、実に質素であられる」
 このことを話すのだった。
「これには驚いた」
「いや、我等もです」
「殿のお話を聞いてです」
「驚きました」
「まことに」
「そうじゃな、真田家は十万石じゃ」
 およそこれだけのものがあるというのだ。
「そのご次男殿がとはな」
「その様に質素とは」
「凄い話ですな」
「あそこまで質素ならばな」
 それこそというのだ。
「また違うな」
「武士としてですな」
「心構えが」
「それがありますな」
「そう思った、わしには出来ぬ」
 宗茂は唸って言った。
「とてもな、だから今日のことは忘れぬ」
「真田殿とお会いしたことは」
「このことは」
「全くじゃ、出来ればあの御仁とは戦いたくないのう」
 こうも言ったのだった。
「戦えば負けるつもりはないが」
「しかし、ですか」
「それでも」
「勝てはしない」
「殿でも」
「うむ、あの御仁は戦になれば強い」
 それも相当にというのだ。
「わしも勝てぬわ」
「ですか、ではあの御仁は」
「まさにですな」
「天下一の武士」
「そうした方ですか」
「若し当家におれば」
 大友家、彼が仕えるこの家にというのだ。
「頼りになったがな、しかしその御仁が当家を助けて下さる」
「ならば頼る」
「そうされますか」
「そうする、待つわ」
 こう言ってだった、そのうえで。
 宗茂は幸村のことを思いつつだ、城の守りを進めつつだ、そしてだった。それと共に主家を守ることを進めていた。
 幸村は筑前を調べそれが終わってだ、刻限と共にだった。
 岩屋城の前に来た、するとだった。
 それぞれの国の方からだ、彼等が来た。それも二人ずつ。
 十人全員が同時に幸村のところに来てだ、にやりと笑って言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧