孤立無援
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3部分:第三章
第三章
戦争では遭遇するのは友軍だけではない。もう一方は。
「ベトコンか?」
「それとも北ベトナム軍か?」
「どっちだろうな。敵なら」
「どっちも厄介だけれどな」
「一体どっちだ?」
彼等は敵の可能性も考えた。尚北ベトナム側は南ベトナムには自分達の軍は一人も入っていないと主張しており日本の知識人や運動家達もそう主張していた。だがそれは真っ赤な嘘だったのだ。
その北ベトナム軍の可能性も考えられた。しかしだ。
四人はどちらかというと。敵ならばだが。彼等だと思ったのだ。
「まあベトコンだろうな」
「だろうな。山に来るんだからな」
「奴等はやっぱり山だからな」
「ジャングルでこそ襲って来る奴等だからな」
市街地や農村でも攻撃して来るがベトコンの得意な戦場はやはりジャングルだった。海兵隊である彼等もジャングルで彼等に散々悩まさせられていた。
それでだ。彼等はこう考えたのだった。
「じゃあ余計にやばいな」
「洒落にならない鬱陶しさだからな。奴等は」
「さて、どうしてくるかな」
「ベトコンだったらな」
彼等は無意識のうちに銃を構えた。そのうえでだ。
洞穴の入り口に陣取った。そしてだ。
そこから外を覗くとだ。何とだ。
彼等は既に包囲されていた。入り口に粗末な、軍服ですらない彼等がいた。
確かに服は粗末であり身体も痩せている。だが闘争心に満ちた目でそれぞれ銃や弓矢を持ちだ。彼等は洞穴を囲んでいた。その彼等を見てだ。
マニエルがだ。他の三人に言った。
「完全に囲まれてるな」
「ああ、トランシーバーのせいか?」
「それとも最初からばれてたか?」
何故彼等が来たのか。このことはだ。
わからなかった。しかしだった。
囲まれているならばだ。それならばだった。
バーグマンは仲間達にだ。こう言ったのだった。
「死にたくないよな」
「当たり前だろ。誰が死にたいんだよ」
「生きるぞ、絶対にな」
「何があってもな」
三人はすぐにだ。こうバーグマンに返した。そしてだ。
四人は同時にだった。それぞれの銃、M16に弾をマックスまで込めて銃剣も装着した。そのうえでだ。
洞穴の隅に隠れてからだ。そのベトコンの者達に攻撃を仕掛けたのだった。
それでまずは何人かを負傷させた。しかしだ。
ベトコンの者達も銃や弓矢で攻撃してきた。その中でだ。
バルボンはだ。こう言ったのだった。
「おい、銃やライフルだったらまだいいけれどな」
「ああ、手榴弾な」
「それが来たらな」
「そうだよ。まずいぜ」
バルボンが心配しているのはそれだった。手榴弾ならだ。
洞穴に放り込めばそれで終わりだった。逃げようがなかった。
それでだ。バルボンは仲間達に言ったのである。
「そうして来たらな」
「向こうは手榴弾持ってるか?」
「そんな奴もいるか?」
「いるかも知れないだろ」
バルボンはあくまでこのことを危惧していた。普通に考えられるからだ。
そしてジョーンズもだ。こう言うのだった。外に向けて発砲しながら。長期戦を考えて銃弾を大事にしていた。それが為に連射はしなかった。
単発で撃ちながらだ。それで言ったのである。
「あと。催涙ガスなりもっとやばいガスもあるな」
「枯葉剤みたいなのか?」
バーグマンはこれを話に出した。
「あれみたいなのか」
「ああ。向こうも使ってるんじゃないか?」
「有り得るな」
それもだとだ。ジョーンズは言った。
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