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スペインの真実

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第二章

「いいじゃないか」
「どうかな」
 ここでだ、オズバーンは。
 冷めた目でだ、こう彼に言うのだった。
「それは」
「そこでそう言うんだね、君は」
「まあね」
 否定しない返事だった。
「僕はシニカルだからね」
「リアリストじゃないんだね」
「シェークスピアなんだよ、僕は」
 だからこそというのだ。
「それでだよ」
「シェークスピアか」
「専門はそちらだからね」
「彼はね」
フィッシャーはシェークスピアについてはこう行った。
「非常に優れた人間観察者だね」
「そう言うんだね」
「そう、多分にシニカルでね」
「幾ら研究してもし足りないよ」 
 そのシェークスピアを学ぶ者としてだ、オズバーンは言った。
「その彼が今生きていたらどう言うか」
「共産主義について」
「興味深いと思わないかい?」
「彼もこう言うだろうね」
 フィッシャーはすぐにだ、オズバーンに返した。
「共産主義こそがだよ」
「この世を変えるものだとかい?」
「キリストが出来なかった」
「それを為すというんだね」
「人民による革命によってね」
 シェークスピアもそう言っただろうというのだ。
「間違いなくね」
「シニカルな言葉でなくだね」
「絶対の賛辞を以てね」
「言うものだね」
「共産主義が全てを変えるんだ」
 この世のというのだ。
「階級も貧富も差別も戦争もなくすんだ」
「そして世界はユートピアになる」
「労働者と農民による」
 フィッシャーは言いながら心に金槌と鎌を思い浮かべた。
「そうなるよ」
「それが君の考えだね」
「その通りだよ」
「ソ連からはじまるんだね」
「そう、あの国からだよ」
 ソ連、ソビエト社会主義狂惑連邦の名を聞いてだ。フィッシャーはさらに上気した。
「はじまっているんだ」
「今既にだね」
「ソ連は素晴らしい国だよ」
「まさに労働者と農民の国だね」
「差別も階級も貧富もなく」
「そして目覚しく発展している」
「最高の国家だよ」
 こう断言したのだった。
「あの国はね」
「そうか、それでだけれど」
「それで?」
「スペインの話を聞いているかい?」
 ここでだ、オズバーンはフィッシャーにこの国のことを話した。
「今のあの国のことを」
「内戦かい?」
「左派と右派のね」
「左派が正しい」 
 即座にだ、フィッシャーは言い切った。
「右派は頑迷なカトリック信者そして保守主義者ばかりだ」
「その彼等の反発で起こっているというんだね」
「そう、スペインもだよ」
 内戦が起こっているこの国もというのだ。 
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