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真田十勇士

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巻ノ四十四 上田への帰参その八

「天下の武士の家臣達に相応しい」
「そうした者達になりましょう」
 十勇士達も言うのだった、そしてだった。
 その話をしたうえでだ、彼等は。
 屋敷に来てだ、そこで最後の掃除をしてだった。
 城を発った、景勝は正門まで来て幸村主従を見送った、そこには上杉家の主な重臣達も揃っていた。そして。
 兼続が主従を境まで送る、そこで。
 ふとだ、兼続は幸村の横に己の馬を進めてきて語った。
「思えばです」
「行きもでしたな」
「こうしてでしたな」
「共にでしたな」
「この道を進んでいましたな」
「全くです」
 こう感慨を込めて言うのだった。
「面白いことですな」
「はい、行きも帰りも共に歩くとは」
「これも奇しく縁ですな」
「まことに」
 二人で話す、そして。
 その中でだ、兼続は。
 彼等が進んでいる道の左右の木々を見てだ、幸村にこうも言った。
「それでなのですが」
「はい、次にお会いする時は」
「おそらくそれはです」
「近いですな」
「そうでしょうな」
「真田殿はです」
 幸村、彼はというと。
「上田におられても」
「それでもですか」
「何かと騒がしい運命でしょう」
「そうですか」
「そしてです」
「直江殿ともですか」
「またです」
 それこそ近いうちにというのだ。
「お会いするでしょう」
「そうなりますか」
「そしてです」
「その時はですな」
「おそらく暫くは敵味方に別れないので」
 それで、というのだ。
「共に轡を並べ」
「そして、ですな」
「共に戦いましょう」
「それでは」
「真田殿がお味方ならば」
 兼続は微笑みこうも言った。
「これ以上に有り難いことはありませぬ」
「それがしがですか」
「はい、お味方なら」
 それこそというのだ。
「有り難いです、ですが敵ならば」
「その時はですか」
「これ以上はない強敵ですな、しかし」
 それでもとも言った兼続だった。
「それと共に真田殿と」
「それがしとですか」
「刀を交えたいとも思いまする」
 幸村のその顔を見てだ、微笑んで言った兼続だった。
「是非共」
「そうなのですか」
「思う存分」
「ううむ、それがしはとても」
 幸村は兼続の言葉を聞いてこう返した。 
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