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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのは ~ちょっと言い過ぎなの~



温泉に入り、晩ご飯を食べて、皆で遊んで。

そんなこんなで夜である。
そして、皆が寝静まった時間。

なのはとユーノは、そんな時間にもかかわらず、布団から抜け出して外に向かっていた。
ジュエルシードの発動を感知したからだ。


「行こう!ユーノ君!」

「うん!」

なのはは私服に着替え宿を飛び出す。
と、高い所から声がしてきた。

「いい月夜だ。そんな夜に散歩とは、優雅だねぇ、なのは」

「!!・・・なんだ、舜君か」

なのはが声のした方に振り向くと、出入り口に備え付けられている屋根の上で、足を組んで蒔風が座っていた。
そこから飛び降りてなのはに聞く。

「ジュエルシード?」

「うん・・・もしかしたら、あの子も」

「二人とも、急ごう。もう動き出してる!」

目的地まで駆ける。
ジュエルシードも気になるが、あの子がいるなら急いだ方がいい。



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森の中を駆けていると、光の柱が夜を照らす。
その光を見て、なのはは直感した。

「あの子が・・・いる?」

「この前の子かな?」

そんなことを言いながら、開けた場所に抜け出る。
すると、そこには

「あーららー。あらあらあら」

「あ?」

「あぁっ!」


そこにはすでにバリアジャケットを展開したあの時の魔法少女と、赤みがかった髪の女性が、まるで待ってましたと言わんばかりに立っていた。


「子供はいい子でって・・・言わなかったっけか?」

女性の方が小馬鹿にしたようにいってくる。


「ムカ。なのは、この人知ってる?俺は知らない」

「えっと、この人は・・・・」

「なるほど、宿のどっかですれ違った人か。で、関わるなとか警告されたと」

「ナンデワカルノ!?」

「いや、だって今日の行動範囲内だとそれくらいしか思いつかないし」

「ジュエルシードをどうするつもりだ!それは、危険なモノなんだ!」


なのはと蒔風の漫才をよそに、ユーノが叫ぶ。
ジュエルシードの発掘者として、その危険性を知りえる彼だからこそ出せる叫びだった。


「さぁねぇ。答える理由が見当たらないよ」

のらりくらりと言葉を紡ぐ女性。
しかしその目は笑っていない。

「それにさぁ。あたし親切に言ったよねぇ。いい子でないと、ガブッといくよって!」

「なに言ってんだか」

「はぁ?」

「人をいきなり襲撃する子の方がよっぽど悪い子だよ」

「あんた・・・何者だい?管理局の人間・・・じゃないね。魔力も感じられないし・・・雑魚は引っ込んでな」

「雑魚は・・・か。聞いてないのか?お前のツレを圧倒したのはオレだぜ?」

「本当かい?」

女性が少女に振り向き問う。


「うん・・・」

その答えを聞いて、女性の表情が険しくなった。

「あんた・・・ゆるさないよ」

「問題ないぜ。そいつぁ予想通りだもんげ!!」

「げ、ってなんだいッ!!」

呆れたような、それでいて(実際は傷一つ追っていなかったが)仲間を傷つけられた怒りに滾り、女性が大きく唸りを上げた。

すると女性の姿が大型犬よりも一回り大きな、四足の獣と変わる。
その体毛は髪と同じ燃えるような赤毛だった。


「やっぱりな・・・・人ではないとは思ったが」

「あいつ、あの子の使い魔だ!」

「使い魔?」

「使い魔・・・動物と魔法契約を結び、主人は魔力を与える代わりに、使い魔はその存在のすべてを賭けて主人を守る・・・か」

「あんたホントに何者だい?・・・先に帰ってて・・すぐに追いつくから」

使い魔が少女に促す。
しかし


「逃がすと思うか?」

「あんたも言ったろ?すべてを賭けて主人を守るってね!」

ゴウッ!

使い魔が飛び掛かる。
しかしユーノが防御魔法でそれを防いだ。



「なのは!あの子をお願い!」

「させるとでも、思ってんのかい!!」

「それをさせるのが今やることならな・・・なのは!こっちは大丈夫だ!!なに、かわいいわんちゃんじゃねぇか」

「いくよ、舜!」

「いや、ユーノ。オレは行かんよ」

「は?」

発動する、ユーノの転移魔法。
だが、その魔法陣の上から蒔風がヒョイと出てしまった。

「まずい・・・移動魔法!?」

「ちょ、舜!」

「大丈夫だぁ。戦力はつけるからさぁ」


パシュ!

光と共にその場から、使い魔、ユーノが消える。
そして二人の魔法少女と少年が残された。


「空間転移魔法・・・良い使い魔だね」

「ユーノ君は使い魔じゃないよ。私の大切な友達!」

「それより、使い魔の方はいいのか?」

「アルフは・・・負けないから」

「アルフってのか。使い魔ちゃんの名前」

「・・・で、どうするの?」

「話し合いで・・・なんとか出来るってこと・・・ない?」

「私はジュエルシードを集めなきゃいけない。あなたも同じ目的なら・・・」

最初から興味はない。
そう言わんばかりに、少女は使命しか見えていない眼でなのはを見据えていた。

私は欲しい。あなたも欲しい。だったら、奪い合うしかないと言うのが、彼女の結論らしかった。
だが、その言葉を蒔風がぶった切る。

「つまらん御託はいい。話し合えるのか?話し合えないのか?」

「・・・・戦うしか・・・ない」

「そういうことを決め付けないために!話し合いって、必要なんだと思う!」

「話し合うだけじゃ・・・言葉だけじゃ・・・きっと伝わらない」

「言葉にしなきゃ伝わらない思いもあるが?それに、しもしないで勝手に諦めてんじゃねぇぞ、ガキ」

「ガ、ガキ!?」

イラついた声で、さらに蒔風が告げ、少女が驚いた声を上げた。


(あ、ヤバい。俺キてる・・・・)

自らの中の歪みを自覚しながら、その理性は狂気の中にうずもれていく。
蒔風の口は止まらない。

「どうせわかってもらえないと誰が決めた。お前自身じゃねぇか。そりゃ伝わんねぇよ。お前に伝える気がないんだから」

「それは!」

「ヤダは堕落者のセリフ、無理は無能のセリフだ。やろうとすれば出来るくせにこれを言う奴はそういう奴さ」

「ッ!!」

「本当に嫌なら仕方ないし、無理ならしょうがないけど、違うだろ?」

「なにも・・・知らないくせに!!」

「知らないさ。だから話せと言っている」

「舜君・・・ちょっと言い過ぎ・・・」

「・・・・すまん(この程度でよかった、か)」

「ハァッ!」


蒔風がなのはに振り向くと、そのすきに少女がなのはの背後に回り、奇襲してくる。
なのはは空に飛ぶことでそれを逃れる。


「オレを狙うと思ったんだがなぁ」

「私の目的は、ジュエルシードだから」

少女が感情を殺した声で言う。
そしてなのはに向き。

「・・・・・賭けて」

「え?」

少女がなのはに語りかける。

「賭けて。お互いのジュエルシードを、一つずつ」



--------------------------------------------------

森の中ではアルフがユーノを追いかけていた。


「チョロチョロと逃げんじゃないよ!!」

「くっ」

アルフがユーノの真上から落ち、押し潰しにかかる。が・・・・


「逃げるな、か。ではそうしよう」

「な!?ぐぁ!!」

真っ直ぐ落ちてきたアルフの体が横に飛ばされる。
木に上手く足をつけ、着地するアルフ。

ユーノのそばには一人の男が

「オレは獅子。ま、いまんとこは貴女の敵だ。大丈夫か?フェレット君」

「君は?」

「蒔風の使い魔みたいなものさ」

ドガァ!!


その時、空が魔法光に照らされる。
黄色い砲撃と桜色の砲撃がぶつかり合うが、桜色の砲撃がそれを押しやった。

「ふむ。なのはさんの方もなかなかやるな」

「なのは・・・!」

「でも、甘いよ」



砲撃の跡に、少女の姿は無い。

なのはがその姿を探すと・・・いた。
少女が上空・・・否、天空から急降下で落ちてくる。


《scythe slash》

少女のデバイスが鎌の形体になる。
あまりのスピードに反応仕切れず、バルディッシュの魔力で作られた刃がなのはの首筋に当てられる。

その刃は電撃を帯びており、バチバチとはぜていた。


「うっ・・・く・・・」



《put out》

音声と共にレイジングハートがジュエルシードを少女に差し出す。


「レイジングハート!?何を・・・・」

「きっと、主人思いのいい子なんだ」

そして少女はジュエルシードを手中におさめると、蒔風に向かい構える。


「なんだよ。オレにはそいつを奪い返すつもりはないよ」

「・・・・・・フッ!!」

短い呼吸と共に、少女が蒔風へと刃を振るう。
だが、なんとなくわかっていた蒔風は、それをひらりとかわして見せた。


「なんだ。感情的になってきたじゃないの。いいぜ。そういう反応は大好きだ」

「あなた・・・嫌い!!」

「(ガガーーン!!!)ショックだ・・・・お兄さん大打撃だよ・・・・」

「ハァッ!!!」

さらに追い打ち。
だが、蒔風はまた避ける。

「でもさ、おまえいい顔してんぜ?さっきまでの人形みたいな顔とは大違いだ」

「!?」

「人の想いってのは素晴らしいもんだね」

「舜君!!私も・・・」

なのはが駆けよろうとするが、蒔風がそれを止める。

「なのちんは脱落しちったっしょ?ま、見ててくださいですにゃー」


「くっ!!」


少女が大空に飛び、魔法陣を展開させる。
そして砲撃の準備に入った。




「ねぇ!!!あなたの名前は!?」

「??」

そこでなのはが口を開く。
今でなければ、聞けないと思ったから。



「フェイト。フェイト・テスタロッサ」



「いい名前じゃないのよ。フェイト、ね」

「私のなm・・・」

「・・・・ッ!!バルディッシュ!!」

《Thunder Smasher》

「ハァァァァァァァァ!!!!」


魔法陣から雷が漏れ出す。

なのはの言葉の続きは、聞こえなかった。




「電撃?すごいエネルギーだな。本当に見た目通りの歳かよ」

「当り前さ!!フェイトはあんたみたいなやつには負けない!!」


アルフが蒔風に啖呵を切る。
それを聞いて蒔風は笑った。

「おーぅけ。いいぜ、そっちがそうなら、こっちもだ。雷・旺・・・・」

バツッ!!バンバンバン!!!

蒔風が祈るように指を組ませる。
そしてそれを離していき、その間に電気が爆ぜ始めた。


「オレがこんな、ちみっこい身体で制御できるかわからんからな。片手でだ」

そうしていつもの雷旺砲の構えでなく、片手だけつきだす、普通の砲撃の構えになる。


「サンダァーーーー!!!」

「こんなとこで遊んでないで・・・・」

「スマッシャァーーーーー!!!!!!」

「お使いすんだらさっさとおうちに帰りなさい」


蒔風の目前までフェイトの砲撃が迫る。
しかし、それはかき消されてしまう。


「拡散式!!雷・旺・砲!!!!」


蒔風の腕から放たれた雷旺砲は、扇状に広がり砲撃も、フェイトをも呑み込んでいく。
一瞬だけだが、凄まじい光が周囲を覆い世界が真っ白になった。

そしてその一瞬が過ぎたころ、アルフが主の名を叫んだ。

「フェイトォ!!」

「怪我はしてないはずさ。連れて帰ってやりなさい」

「ッ!!この借りは・・・必ず返すよ!!!」

「楽しみにしてる」

ガザっ!!!

アルフが茂みの中に飛びこみ、姿を消す。
主人が倒れるその場所に駆けるために。



「舜!!なんであのままジュエルシードを取りかえさなかっ「いいの、ユーノくん」なのは?」

「あれは・・・あの子の・・・フェイトちゃんものだよ」

「そう、フェイトは卑怯な手を使ったわけではない。真っ向から挑んで、それを手にした。それを奪うことはオレには出来んね」

「それでも・・・・」

「ホントは分かってんだろ?ユーノ。でもお前は立場上、そう言わざるを得ないんだわな」

「うう・・・・」

「ま、人を踏みつぶすようなことをしない限りは、オレはその人の願いを尊重すんのさ・・・・俺が、まともである内は、な」

「え?」

「ユーノくん、ごめんね・・・・」

「い、いや!なのはは悪くないよ。それに、舜のいうことももっともだし・・・・」

「帰ろっか」

「そうだな、明日もあるんだ。旅行を楽しまないとな」

「そうだね。帰ろう」


三人は宿に戻る。
部屋の前で分かれ、それぞれの部屋に入る。

(よく聞き取れなかったけど・・・・彼は何かを背負っている?使命とかそういうのじゃなくて、もっと、彼自身の存在に関する何かで・・・・)

ユーノは布団の中で、さっきの蒔風の言葉を思い出していた。
しかしもう夜は遅く、夢とともにそれは忘れていってしまった。











to be continued

 
 

 
後書き

・俺キてる
蒔風は、死を理解して生者の理から外れてしまった人間。
それが彼の中で歪みにならないわけがなく、彼の中に溜まって行っています。

ストレスと同じようなものだと思えばいいですね。この場合は狂気、とでも言いましょうか。
時たまそれが暴発すると、蒔風はとんでもないことをしでかします。

大体は何とか取り繕える者なのですが、いつか大変なことをしてしまうのではないかと本人は恐れてもいます。




アリス
「次回は市街戦だよ!」

ではまた次回






伝えたい思いがあるんだ
 
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