世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
アギト ~死にかけのWORLD LINK~
「はははははははははははは!地上で溺れるなんて面白いな、蒔風!」
アントロードの山
そこに向かい叫ぶ「奴」は愉快に笑う。
しかしその目には勝った、という確信はない。
ピシュン・・・・・
ズルズルズル、ドチャチャ!
アントロードの山の中から何か細い糸のようなものが噴き出し、アントロードを切り崩す。
「ゴホゴホッ、エホッ!ハァッハァッハァッ!」
そこから蒔風が出てくる。
何かを担ぐように右腕を曲げ、手の上には圧水の力で集められた水球が浮いていた.
「肺の中の水を抜き取ったか」
「フゥフゥフゥ・・・・ッ!ガブッ!」
「蒔風さん!」
「・・・・づがみざん・・・・」
「まずい・・・・一旦退却を!」
「してほしくないなぁ。メンドイだろ?」
蒔風を抱え、退こうとする一同だがそれを拒むようにアントロードが壁になって遮った。
撤退は不可能だ。
「っく!」
「オレが時間を稼ぐ」
「葦原さん、ダメですよ!」
「しかしこの大群をどうすれば!」
「な゛ぁ・・・ウォーターカッターっでじっでるか?」
「は?」
三人が蒔風を庇うように立ち、目の前にはアントロードの大群。
退けばすぐに圧殺されてしまうほどの脅威。
そんな中で、息絶え絶えの蒔風がボソボソと言った。
蒔風を見ると、水球は左手に移され、そこから糸が伸びている。
実際には超極細の水なのだが、パッと見ただけではわからない。
そして伸びた先は蒔風の右手人差し指の先端。
蒔風は指をアントロードに真っすぐ、左手で弓の弦を引くような体制をとる。
「伏せろ!」
ビィィィィィィィィ!!
三人が伏せる瞬間に指先から水が放出され、アントロードを切り刻んでいく。
ウォーターカッター
水の接地面を極端に小さくし、高出力で吹き掛けることで対称を切断する技術。
そこに砂利などを混ぜれば、その威力は格段に上がる。
それを蒔風は己の身一つでやってのけたのだ。
しかし水には限りがある。
50体ほど倒した所で水は尽き、指先は裂け、赤い血がポタポタと垂れていた。
無理もあるまい。
溺れることによる、急激な体力の低下。
加えて、腹には穴が開いているのだ。内臓もちらほらと傷ついている。
そんな状態でさらなる力の行使など、重傷の身体を重態、瀕死にまで自ら押しやるものだ。
「どうした?その程度か!」
蒔風の攻撃の絶えを見て、「奴」が波動砲を撃ち四人を蹴散らす。
爆風の中で、蒔風の意識は途絶えた。
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目が覚める。
蒔風たちは五メートル程の高さで柱に一人ずつ縛り付けられ、身動きの取れない状態にある。
「お目覚めかい?寝坊だぞ、蒔風ぇ!」
「奴」が宙で笑う。
足元を見ると、アントロードがウジャウジャとうごめいていた。
「蒔風さん!」
「大丈夫か!?」
横を見ると、変身の解けた津上と葦原がやはり縛られていた。
氷川はスーツが上手く剥げなかったのか、G3-Xのまま縛り付けられている。
「大丈夫なもんかよ」
「奴」が蒔風に近寄り、上半身の衣服を剥ぎ取る。
「!!!!!」
そこには、先程クィーンアントロードに貫かれた跡と、大小様々な傷跡、さらに開きかけた傷、血で滲んだ包帯が見えた。
「やっぱりな。貴様回復しきってないだろ?オラ!」
「イギッ!ガッブァ!」
「奴」が蒔風の鳩尾に拳をめり込ませ、蒔風が苦悶の叫びと表情を浮かべる。
「ふん、おかしいとは思っていたんだ。いくらか時間が経ってるとはいえ、あれだけの損傷を回復しきっているとは思えないってな」
「どういうことだ!」
氷川が「奴」に叫ぶ。
「奴」はそれに答えた。
「簡単なことだ。蒔風に限界が近いってことさ。幾つもの世界で戦い、負傷してきた。ま、途中で回復を何度かしてはいるがな。それでもやはり限界が来てしまう」
「そんな・・・そこまで?」
「さっきのウォーターカッターだってそうだ。こいつはいざとなれば、自らの力を変換して水が無いところでも生成して使うことができる。だがそうしなかった。さらには指先まで裂ける始末だ。今にして見れば、ここ最近のWORLD LINKも貴様自身は何もせず、最主要人物に任せたものばかりだったな」
「奴」の推測。
それは外れてはいない。
確かに蒔風の体はボロボロだ。
しかし・・・・
「ガブッ・・・で?」
蒔風が口を開く。
「あん?」
「だからどうした」
「ほほぅ」
「オレがどんだけ死にかけようが、それがてめぇの勝因になるわけじゃねぇだろうが・・・・」
「死にぞこないがよく言う」
パチン
「奴」が指を弾くと、蒔風の縄が切れる。
蒔風の体が重力にまかせて落ちていった。
「食え。跡形も残すなよ」
「奴」が命じ、アントロードが蒔風の落下地点に殺到する。
そして蒔風が落ちると、
着地点周辺のアントロードが、押し潰されるように大地に倒れ伏した。
「な、に?」
「おおおおおおおおおおおおァァァァァァァァァ!!混闇陣!!」
地面が漆黒に染まり、力を発揮する。
発揮する能力の系統は混闇。形状は陣。
圧を掛ける重力の力を、自らを中心に張り巡らせ、アントロードの身体を押しつぶしにかかっているのだ。、
ギ、ギュガァァァァァァァ!!
ドンドンドン!ドォォォン!!
蒔風の着地点周辺のアンノウンが潰され、光の輪が頭上に現れ爆発する。
さらに混闇陣は天井まで引きずり降ろし、周りの柱までを捩曲げる。
それにより津上、葦原、G3-Xは地面に足が着き束縛から脱することに成功した。
「変身!」
「変身!蒔風さん!」
二人が再びエクシードギルス、アギトバーニングフォームに変身し、蒔風に駆け寄るが
「三人とも!後ろに下がれぇ!!ヌゥァァァァァァ!!圧水掌!!!」
蒔風の構える手に水が生成され集まる。
頭上に集まった莫大なる量の水は、蒔風の振り下ろす動作によって残りのアンノウンたちを押し流し、壁に激突させる。
それでもなお水は襲い掛かり、影に押しやられたアンノウンと、後から流れてくるアンノウンとぶつかり合い、一気に爆発させた。
そして最後の一体を、刀の「風」で斬撃を放ち倒す。
「無茶です!!それ以上やったら死んじゃいますよ蒔風さん!!」
「はは!!まだそれだけの事ができるか、蒔風!!」
この窮地を脱するため、蒔風はその力を発揮する。
圧水は、水の力で押し流す力だ。
この場合では最も適した能力だが、問題は蒔風の体力―――というより、もはやタイムリミットか、寿命と言った方が近い、そんな刻限だ。
と、
暗がりだったその倉庫内に、日の光が射してきた。
「やっとか・・・オレがなぜ・・・一旦混闇陣を、発動させたと・・・・思う?」
「な・・・まさか・・・」
「光さえあれば、さらなる強化が可能となるのが仮面ライダーアギトだ・・・!!!」
「まさか、雲すらをも捉えたというのか!!」
空を見上げると、空を覆う雲の一点が、不自然に開けていた。
そこから注がれる光を受け、アギトの装甲が殻のように剥がれていく。
仮面ライダーアギトは、最終フォームへと移行する際に必要不可欠なものがある。
光である。
蒔風が混闇を一回だけしか出さなかったのは、理由がある。
単純な話、一瞬しか出せなかったのだ。空を曇らすそれらを動かすだけの力など、今の蒔風には一瞬しか出せない。それすら命懸けだが。
そして、雲は流れるものだ。
一瞬でも捕えれば、後は時間を風ぐだけで日の光は漏れ出てくる――――
アギトの装甲。その外郭がすべて剥がれ落ち、そしてそこに現れたのは、眩い光を全身に受けたシャイニングフォーム。
その輝きは、可能性。人類の無限の未来の輝きであることに他ならない。
そして蒔風が開翼し、さらなる切札を――――!!
【KAMEN RIDER AGITO】-WORLD LINK- ~WEPON~
蒔風の背の翼が粒子となって散る。
その粒子はアギトの背に宿り、ふたたび翼として顕現する!!!
「(まずい・・・あれは闇の力すら恐れた人類の可能性・・・・それにあいつの翼が付いたら!!)ッッッチィ!!!」
「かましてやれ・・・・・」
ドシャリ、と倒れ込みながら、蒔風が指を指してクンッ、と標的を指し示す。
そして、最後の一撃が
【KAMEN RIDER AGITO】-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~
「ハァァァァァァァァァァ・・・・・・・」
アギトの足元に紋章が輝く。
そのエネルギーを右足に込め、その翼をもって上空へと飛びあがる!!!
「ハッ!!オオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
そしてキックの体勢をとると、「奴」までの直線上に、四つの紋章が浮かび上がる。
一つ目はアギトの、二つ目はギルス、三つ目はG3-X、そして最後にシャイニングアギトの紋章であった。
「ハァアアアアアアアアアアア!!!!!」
大きく羽撃たいて、助走をつける様に旋回して、一気にその紋章を蹴り抜いていく。
一つを抜ける度に、その脚には轟火のエネルギーが溜められていき、最後のを越えた瞬間にそれは光へと変わった。
「寝ぼけんなアリども!!!!せめて盾にはなりやがれ!!!!」
ズグアアアアアア!!!
盾になる為、再び作り出されるアントロード・レプリカ。
しかし止まらない。
止まるわけがなかった。
その身に宿すのは人の未来。
背にあるものはその希望だ。
「ぬっがあああああああああああああああ!!!!!!!」
過去の亡霊に、留められるはずもないだろう。
ドドォォォォォ・・・・・
爆発が起き、「奴」が無様に転がる。
シュウシュウと身体が消えかけている。
頭を振り、手を当てながら、それでも立ち上がろうと顔をあげるが
「愉快だな。愉快ついでに死んでおけ」
パァン
蒔風が「奴」の目の前に立ち、至近距離から撃った。
G3-Xの装備品である銃、GM-01 スコーピオンで一発だけ。
その一発の銃弾で「奴」ははじけ飛んで、消えた。
「は、だから言ったろ・・・・・お前の勝因にはならない・・・・・って・・・な・・・」
それだけ言って、蒔風がまた倒れる。
「蒔風さん!!」
「蒔風!!」
「大丈夫ですか!」
三人が駆けより、蒔風を揺する。
しかし蒔風は目覚めない。
三人の声がだんだんと遠くなり、蒔風の意識は闇に沈んだ。
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「ここは・・・・・」
「あ・・・翔一くーん!!目が覚めたよーー!!」
「(バタバタバタバタ)蒔風さん!!目が覚めましたか!!!」
「傷は大丈夫なのか?」
「本当によかった!!!」
蒔風が目覚めると、そこはどうやらどこかの一軒家の寝室のようだった。
騒がしい声に、頭がだんだんとはっきりしてくる。
「あの・・・ここは・・・」
「ここは僕が前にお世話になっていた家です」
「風谷真魚です。身体、大丈夫ですか?」
「彼女が治してくれたんだ」
「治したって・・・・」
「彼女は超能力者なんです。僕も何度かお世話になってて、もしかしたらって」
「オレも命を救われたしな」
「生き返らせるのはもう無理ですけど・・・・怪我の治療くらいなら何とか」
蒔風が自分の身体を見て、手を見て、グーパーグーパーして身体を確かめる。
「すっげぇ・・・ありがとうございます!!」
「しかし・・・俺たちも今回はありがとうございました」
「ほとんど蒔風が戦ってばかりだったな」
「俺たち・・・蒔風さんの足手まといにしかならなかったですよね・・・・真魚ちゃんがいなかったら死なせてしまっていたかもしれませんし・・・・」
「いいや・・・俺一人でもやられていた・・・・最後のあの一撃。あれはオレでは出せない。だから津上さんたちがいて本当に助かりました」
「まぁ、あれから二日も寝てれば身体もそれなりに治りますよね」
「二日!?」
「ええ・・・どうしました?」
「大変だ・・・・オレすぐに行かないと!!!」
「待ってください!!確かに傷は治ってますけど、まだ安静に・・・」
「「奴」は次の世界に行ってしまってるんです!!やばいやばい・・・次の世界が多重世界だといいんだが・・・・」
「多重世界?」
「一つの世界の中にいくつもの世界が内包されている世界です。ほら、異世界に飛んだ~~なんてものがそんな感じです」
「へぇ~~」
「でもそんな世界そうそうないですからね。では、ありがとうございました!!!」
[Gate Open---KAMEN RIDER AGITO]
「あ、まって・・・」
「すまん!!一分一秒が惜しい!!」
「蒔風さん!!!ありがとうございました!!!!!」
いいってことよ~~、と蒔風が言いながら手を振ってゲートをくぐって行ってしまう。
「騒がしい奴だったな」
「でも、凄かったです」
「ねぇねぇ、あの人が目覚めたら教えてくれるって言ってたけど、何があったの?」
「あーうん、それはね・・・・」
そうして再び日常が始まる。
アギトと人間の生きるこの世界の・・・・・日常が
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とある海に面した街。
今は夜。
しかし今夜はいつもと違う。
街の一部が結界に包まれ、その中で戦いが繰り広げられている。
「ハァハァハァ」
「もういいよ!!君は僕を置いて逃げて!!!」
一匹のフェレットが言葉を発する。
それを抱えて逃げる小さな人影。
「そんなことできな「僕は足手まといだ!!君だけなら逃げられるだろう!?」」
ドォン!!!
後から追ってきているモノは、異形のモノだ。
灰色のもやみたいのから、触手の生えた化け物だ。
「そうだな・・・足手まといは捨てるか・・・・」
「ッ!!そう・・・だよ・・・それがいいんだ・・・・」
「だから・・・・オラ!!(ブンッ!!)」
「え?うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」
小さな人影がフェレットを投げる。
その小さな姿が飛んでいって見えなくなる。
飛んで行った彼はその先で一人の少女と出会うのだが、それはまだ誰も知らない
「さてと、足手まといもいなくなったし・・・・」
背後に迫る化け物に小さな人影が言った
「ブチノメさせてもらいましょか。覚悟しろよ?オレの全力全開は、ちっとばかしキキすぎるぞ!!!」
to be continued
後書き
アリス
「今回蒔風かなりまずかったんじゃ?」
ですねー
というか、蒔風に与えられた「勝ち続けなければならない」という条件がまず異常なんですよね。
【仮面ライダーアギト】
構成:”フォルス”70%
”LOND”30%
最主要人物:津上翔一
-WORLD LINK- ~WEPON~:《希望覚醒》アギトに銀白の翼を付与
-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:《シャイニングライダーキックスペシャル》三大ライダーと、シャイニングアギトの紋章を越えてのライダーキック。
原典:シャイニングライダーキックに+αです。
アリス
「次回、ついにキタ!!魔法少女!!!!」
ではまた次回
風は空に星は天に そして不屈の心は この胸に!!!
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