世界をめぐる、銀白の翼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
アギト ~地上での溺死~
山に囲まれた林
その中のすすきの生える平原。
そこに、その研究所はあった。
「ここ・・・・か」
「では行きますか」
四人が到着し、早速中に入る。
身一つでやってきた津上、葦原、蒔風がそのまま進み
「ちょっと、待ってくださいよー」
変身―――というよりは装着しなければならない氷川は、G3-Xの装甲を装着してその後を追っていく。
「やっぱりG5の連中も連れて来た方が調べるのは早いんじゃないか?」
「危険過ぎる。敵の戦力も不明ですし、本来ならオレ一人で行きたかったくらいだし」
というわけで、研究所の敷地を囲むフェンスの前に、G3トレーラーを残して、四人は中へと入って行った。
研究所はその中の丘の上に立っており、倉庫か搬入口かわからないが、巨大な建物も隣接していた。
研究所建物のゲートには黄色いテープが貼ってあり、鍵もかかっていたが
「ちょいや」
蒔風が「風」で簡単に鍵を壊しゲートを開ける。
中はかつて氷川たちがG4と戦ったときのままだった。
壊れた壁、割れたガラス、ひっくり返った車両。
そして最深部のコンピュータ制御室まで来てしまった。
部屋の中は踏み荒らされ、遮断目的のガラスが砕けて散らばっていた。
「この部屋は?」
天井からぶら下がっている機会を指さして、蒔風が聞く。
どう見ても人道的な形をしていないのは明らかだが。
「あ、それはですね。システムに超能力者の人を繋いで、G4に予知の結果を送ってたんですよ」
「その予知をもとに最善の行動をAIが弾き出す・・・か」
「まぁ、「奴」はいないみたいですよね?」
「いないな・・・本気で気配消されるとわかんなくなるけど、そこまでやると「奴」が動いた瞬間にわかるからな。実質「奴」は動けんな」
「じゃあ、この場の記憶ってのを封じて、G4を使えなくしましょう」
「だな」
蒔風が床に手を当て、記憶を使えないようにプロテクトをかけていく。
蒔風が途中、ん?と何か違和感に引っ掛かったが、滞りなく作業が終わる。
「呆気ないですね」
「なら早く帰るぞ。ここにいると嫌なことを思い出す」
「芦原さん、なにかあったんですか?」
「ここの戦いでオレは一回腕を切り落とされたんだ。いい気はしないだろ」
「げ、そりゃ痛いですね」
「まぁギルスの力でなんとか再生出来たが、もう二度とやりたくはない」
「G4強烈だな」
「いや、オレはG4とは戦ってないぞ」
「へ?」
「G4とは津上さんも戦いましたが、本格的に戦ったのは僕だけです」
「じゃあ・・・なんで?」
「オレと葦原さんは乱入してきたアンノウンと戦ってたんです」
「アリみたいな奴らだったな」
「アンノウン・・・・待ってくれ!!だったらここには・・・・」
「ごめーとー。つまりはそゆこと」
声がした。
四人は瞬間的に背を向けあって全方位を警戒する。
だが、床に湧水のように泥がじわじわと滲み出て、そこからアリ型のアンノウン、アントロードが出現して彼等を囲んで迫りくる。
「「変身!!!!!」」
津上と葦原がアギトとギルスに変身。
その光が目くらましになったのか、床から湧き出てきたアントロードの動きが鈍った。
「いまだ!!」
その隙に蒔風が包囲網を突破。
壁を蹴り貫き、制御室を抜けて広い通路へと飛び出した。
それぞれが交戦しながら声を飛ばす
「やられた!!!!」
「これは・・・・このアンノウンは倒したはず!!」
「「奴」がこの地の記憶から作り出したレプリカだ!!!性能はオリジナルと同等かそれ以上です!!」
「記憶を使うのは封じたんじゃないのか!!!」
「G4に関しては!!何かおかしいと思ったんだ。処理するときにもG4以外の記憶があったしな!!」
「なんでそれほっといたんですか!!」
「オレが手を出せたのは事前にG4のこと知ってたからだ!!知らないことには手を出せん!!「奴」は間違いなく天才だよ。こうやって記憶を読み取って使いこなすことに関しては超一流だ!!」
「お褒めの言葉ありがとうございま~~す」
そこに声が響く
壁を崩し続け、たまにはすでに崩れた壁を通過し、大きな建物の中に辿りついた。
そこは半分外になっている構造で、簡単に言うと搬入口だ。
巨大なトレーラーも通れるような入口のおかげで、結果的に半分外になっているのだ。
現に、その巨大なトレーラーもここにはあるが、転がった状態であって到底使えそうにない。
そしてそこで、四人はアントロードに囲まれてしまう。
もう一度強行突破してもいいが、「奴」はこの状況をどこかで見ている。これ以上下手なことはできない。
と、四人が動かずに周囲を経過しいていると、痺れを切らしたのか「奴」が姿を現す。
宙に浮き、足を組んで座っている姿勢でだ。
「オレさんがG4使うと思ったっしょ?違う違う。この大軍こそが欲しかったのよ!!」
アントロードは蟻の、しかも軍隊アリのアンノウンだ。
雑兵の歩兵クラスが数百、行動隊長クラスの赤い個体が数十、そしてそれらを取り仕切るかのように輪の外に女王アリのクィーンアントロードがいた。
その動きはまさに一つの獲物に群がる蟻そのものであり、ただでさえ厄介な上に数で攻めてくるからたちが悪い。
アンノウン最大の特徴としては、人間には絶対実行不可能な方法を用いる殺人、通称・不可能犯罪である。
そしてアントロードの殺人方法とは・・・・
「やれ」
「奴」が短く命令すると、アントロード達が一斉に口から何かを吐き出す。
「伏せろ!!!」
蒔風たちの頭上で、アントロードの吐き出したギ酸がお互いにぶつかり、弾ける。
「なんだこれ・・・・?」
咄嗟に回避した蒔風たちだったが、そのギ酸は地面に落ちてもただその場で弾けるだけだ。
普通の水と、何ら変わらずそこにある。
地面を解かすほどの強酸でもないらしい。
疑問符を頭に浮かべる蒔風だが、「奴」はその時間を与えない。
「数で潰せ。時間をあまりかけるなよ?アリども」
シャァァァァァ!!!!
アントロード達が一斉に襲いかかって来る。
固まっていてはやられるとして、四人は再び分散して戦い始めた。
G3-Xは、どっしりと構えてガトリングを辺り一面に撃ち続ける。
ここまで苦労して持ってきたかいもあり、その弾幕は大勢のアントロードを打ち抜いていき、何体かを爆散させた。
だが、後続の者が倒れた者を(爆散する前に)盾にして進み、更には爆破に紛れて、次々と襲いかかり、そのせいで徐々に後退していく。
一方ギルスはエクシード、アギトはバーニングとなって応戦する。
それなりの数を撃破していくが、やはり多勢に無勢。
いつ終わるともわからないマラソンをしているようなものだ。
蒔風は三人が追い詰められるところに入り、押し戻していく。
隙を見て「奴」に向かおうともするが、アギトに加勢し凌いだら次はG3-X 、次はギルス、またG3-X に行き、アギトにと、いたちごっこできりがない。
しかしその均衡も破れる。
クィーンアントロードが蒔風の背から三又の槍「黄泉の鐙」で蒔風を貫いたのだ。
「蒔風!!!!」
蒔風はちょうどギルスの援護に入っていた。
混戦のため、小回りのきくトンファー型の「天」と「地」を使っていたのだが、流石にこれでは三又の大槍を防ぐことはできなかった。
さらには、誰よりも動きまわっていた蒔風の体力は、限界まではいかずとも多く消費されていたことも一因がある。。
「ゴフッ?ゲはっ!?」
「そこだ!!蒔風を狙えぇ!!!」
アギトやギルスが蒔風によろうとするが、アントロードたちに防がれる。
そしてアントロード達が集まり、蒔風に向かって一斉にギ酸を飛ばした。
まともな動きのとれない蒔風がそれを回避することなどできるはずもなく、全てが顔面に命中しある現象を起こす。
「ブッップ!!ガ?ゴ、ゴボッボァ!?」
「蒔風!!」
蒔風の口元から気泡のようなものが漏れ出る。
これがこのアントロードの殺害方法。
そう。蒔風は今、溺れているのだ。
口内から吹きかけた液体を浴びた人間は、肺の中を水に満たされて溺れ死ぬ。
地上で溺死する形になる、ということ。
これが、アントロードによる「不可能犯罪」だった。
「チクショウ!!蒔風!!!」
「蒔風さん!!!!」
溺れる蒔風。
さらにそれにを追い立てるように、ロードたちが飛びかかっていった。
あっという間に蒔風がつぶされる。そしてモゴモゴと動いていたロードたちが、止まった。
まるで、捕えた者の抵抗を表していたかのような、その動きが。
「蒔風さんッッ!!」
各々の声が木霊する。
いまだ空は曇り、一切の光を通さない。
to be continued
後書き
アリス
「なぜ「奴」はG4使わなかったんですか?」
あの場合一体の最強よりそれなりに強い個体を大量に出した方が強いですから。
それは龍騎の世界での失敗と、バカテスの世界での結果を見てだろうね。
アリス
「まあ、バカテスの世界では数で押してなかなかいいとこまで行きましたからね」
アリス
「溺れる蒔風、どうやって脱出するんだーーー??」
ではまた次回
Ready to Go,Count ZERO―――仮面ライダーアギト
ページ上へ戻る