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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第218話

同日、18:40――――



~オーロックス峡谷~



「……はあっ……はあっ…………」

ヴァイスリッターの戦闘不能を見届けたヴァリマールは太刀を支えにして地面に膝をつき、操縦者であるリィンは疲労によって息を切らせていた。

「あ……」

「これ、は……」

「……勝った、の……?」

「ええ、勝負あったわ。――――リィンの勝ちね。」

「ああ。そしてこれで”最後の試練”は終わりだな。」

ヴァリマールとヴァイスリッターの対決を見守り、勝負の行方を見守っていた仲間達がヴァリマールの勝利に呆然としている中、サラ教官とレーヴェは静かな笑みを浮かべてリィンの勝利を宣言した。



「っ……!」

「う、うわあああっ……!」

「お兄様……!」

「……やったか……」

「リィンさん……」

「……君ってやつは……」

「見事だ―――リィン……!」

「……貴方がセレーネのパートナーであり、セレーネを娶る方で本当によかったです……」

「へえ。これでようやく妹であるエリゼに色々と追い越されたっていう汚名が挽回できたね。」

「もう、エヴリーヌお姉様ったら……汚名は”挽回”するものではなく、”返上”するものですよ……」

リィンの勝利にⅦ組のメンバーは歓びに満ちていた。



「ハッハッハッハッ!さすがはリィン君!私も君の義理の兄として鼻が高いよ♪」

「もう、お兄様ったら……でも、本当によかった……」

「これでようやく姉様も私達と共に協力し合えますね……」

声を上げて笑っているオリヴァルト皇子に苦笑したアルフィンは微笑みながらヴァリマールを見つめ、エリスは嬉しそうな表情でヴァイスリッターを見つめ

「これで一件落着だな。」

「ええ……………―――後は宰相閣下を討つだけですね。」

「クレアさん……」

トヴァルの言葉に頷いた後決意の表情になったクレア大尉をゲルドは心配そうな表情で見つめていた。



「フフッ、トワ。君の未来の夫は本当に期待を裏切らない男だね♪」

「もう、アンちゃんったら……よかった、リィン君が勝って……ぐすっ……」

「今まで力になれなかった分も含めてしっかりリィン君達の力になりなよ、クロウ。」

「へいへい、わかっているよ。っていうかトワまで落としているとかあの野郎のリア充度も相変わらずだな……」

からかいの表情をしているアンゼリカの言葉に苦笑したトワはリィンの勝利に感動のあまり涙を流し、ジョルジュの言葉に頷いたクロウは疲れた表情でヴァリマールを見つめ

「フフ、まさか”灰”と”蒼”ではなく”灰”と”白”による決着を見る事になるとはね…………(―――ありがとう、リィン君。私達の為にここまでしてくれて……今夜今までのお詫びの意味も込めて、私の身体を君に捧げるわね……)」

苦笑しながらヴァリマールを見つめていたクロチルダは頬を僅かに赤らめた。



「うふふ、この結果こそがエリゼお姉さんが望んだ最高の結果なのでしょうね♪」

「さてな……だが、エリゼは間違いなく手を抜く事なく本気でリィンと戦った。―――これだけは”真実”である事は余でもわかる。」

「同感です。よかったわね、エリゼ……」

「………………―――シグルーン、そろそろ戻るぞ。」

小悪魔な笑みを浮かべているレンの推測にリフィアは静かな笑みを浮かべて答え、シグルーンは微笑みながらリフィアの言葉に頷き、静かな笑みを浮かべてヴァイスリッターを見つめていたゼルギウスはシグルーンに視線を向けた。

「ええ。―――殿下、私達は軍務が残っていますのでお先に失礼します。」

「うむ。―――そうじゃ。ゼルギウス、シグルーン。少しいいか?」

「ハッ。」

「何でしょうか?」

去ろうとするゼルギウスとシグルーンを呼び止めたリフィアは二人にある事を小声で伝えた。



「―――予定とは異なるがお主達も共に来てもらうぞ!」

「御意!殿下が彼らと共に行く事がお望みなら、私とシグルーンも喜んでお供致します。」

「フフッ、”リベルアーク”や”影の国”の時はお共できませんでしたが、ようやく決戦時に殿下のお共をできますわね。―――それでは私達は一端失礼いたします。」

リフィアに見つめられた二人はそれぞれ微笑みを浮かべて答えた後その場から去って行った。そしてヴァリマールとヴァイスリッターからそれぞれの操縦者が地面に膝をついた状態で現れた。



「ちょ、しっかりしなさいよ!」

「ああ……大丈夫だ………」

疲労困憊な様子のリィンにセリーヌは慌てた様子で声を掛け、アリサ達はリィンに駆け寄った。

「リィン……!」

「……みんな……ありがとう……信じて見守ってくれて……」

自分を信じて見守ってくれたⅦ組や協力者達をリィンは心から感謝しながら見回した。



「そ、そんなの当然でしょ!」

「えへへ、内心ドキドキしてたけど……」

「……だが、お前ならきっと成し遂げられると信じていた。」

「ああ……私もだ。」

「勿論わたくしもですわ!お兄様はこの日の為に頑張って来たのですから……!」

「そっか……」

仲間達の言葉に頷いたリィンは立ち上がった。



「ま、完全にエリゼと二人の世界だったみたいだけど。」

「うふふ……何て言うか入り込めませんでしたね。」

「むしろ入り込んだら二人から攻撃されそうな雰囲気だったね。」

「エ、エヴリーヌお姉様……」

「みんなもそれはわかっていましたけど、敢えて黙っていたのがわからないんですか……?」

「雰囲気もそうだけど、台詞もスゴかったよね~。」

「『これが”最後の試練”です、兄様。お覚悟はよろしいですか』『この決戦でクロウ達も、お前もみんな連れ戻す』、か。」

「ちょ、折角の余韻を台無しにしないでくれっ!」

「はは……」

次々と感想を言い合うⅦ組のメンバーをリィンは苦笑しながら見つめたが

「まったくⅦ(ウチ)の子たちは……」

「まあ、”紫電(エクレール)”が担当しているクラスだからな。こうなるのは仕方ないな。」

「ああん!?それは一体どういう意味よ!?というか他人事みたいに言っているけど、副担任であるアンタもⅦ(ウチ)の子達に影響を与えているでしょうが!?」

「サ、サラさん。抑えてください。」

いつものようにレーヴェの余計な一言によって顔に青筋を立ててレーヴェを睨んで反論するサラ教官に気付くと冷や汗をかき、クレア大尉は苦笑しながら二人を諌めていた。



「姉様、ご無事ですか!?」

その時エリスの声を聞いたその場にいる全員は地面に膝をついて疲弊している様子のエリゼに駆け寄っているエリスに気付き、二人に注目した。

「大丈夫よ……ちょっと疲れただけだから。」

「――無理をするな。相当な魔力を消費しているだろう。余が少し分けてやる。」

「フフ、ありがとう……」

リフィアが自身の魔力をエリゼに分け与えていると、リィン達はエリゼに近づいた。



「エリゼ。これでお前の”試練”は終わりでいいんだな?」

「―――はい。約束通りお二人の一時的な釈放を認め、私も兄様達に協力致します。……これがお二人の手錠の鍵です。鍵についているタグのイニシャルはお二人のファミリーネームの頭文字ですので、それでどちらがどちらの手錠の鍵なのか見分けてください。」

リィンの言葉に頷いたエリゼは立ち上がり、懐から2本の鍵を取りだしてリィンに手渡し

「わかった。―――会長、エマ。二人の手錠を外して上げて下さい。」

「う、うん!」

「はい!」

エリゼから受け取った鍵をリィンはトワとエマにそれぞれ手渡し、トワはクロウに、エマはクロチルダに駆け寄ってそれぞれの手錠の鍵を外した。



「はい、クロウ君!外してあげたよ!」

「ああ、悪ィな。これでようやく一時の自由を過ごせるぜ……」

手錠を外されたクロウは安堵の表情で呟き

「クロウ、わかっているとは思うけど逃げたら承知しないよ?」

「もしこれ以上私達やリィン君達を裏切るような真似をしたら、わかっているよね?」

「そのくらいわかっているっつーの!逃げるつもりなんてないから、拳を鳴らすな、ゼリカ!」

ジョルジュと共に警告し、拳を鳴らすアンゼリカの行動を見たクロウは慌てた様子で指摘した。



「もう、アンちゃんったら…………―――お帰り、クロウ君!」

「…………ああ。――――ただいま。」

笑顔のトワの言葉にクロウは苦笑しながら頷いたが

「えへへ、士官学院に戻ったら約束通り罰としてとりあえず決戦の日まで学院全体の掃除をクロウ君にしてもらうからね!」

「ハハ、そう言えばそんな事をオーロックス砦の時に言っていたなぁ。」

「言っておくけど、あの時の会話はちゃんと録音してあるから、言い逃れはできないよ?」

「おいっ!?今の状況でやらせるつもりなのかよ!?つーか、俺一人で学院全体の掃除をできる訳がないだろうが!それとゼリカ!お前は何であんな状況で録音なんてしているんだよ!?」

トワ達の口から出た予想外の話に慌て始めた。



「フフ、姉さんと一緒に協力するなんて本当に久しぶりね。」

一方クロチルダの手錠を外したエマは嬉しそうな表情でクロチルダを見つめた。

「そうね…………もう貴女と協力し合う機会なんて訪れないと思っていたけど、これもまた”零の至宝”による導きかもしれないわね…………」

「姉さん…………」

「…………わかっているとは思うけど、アンタの為にここまでしたエマやあの子達を裏切ったり、懲りずにまた悪さをしたら一生アンタの事を許さないわよ。」

遠い目をしているクロチルダをエマは驚きの表情で見つめ、目を伏せて黙り込んでいたセリーヌは真剣な表情でクロチルダを睨んで忠告した。

「そんな無粋な事はしないわよ。私はこれからの人生は私の為にここまでしてくれたリィン君に私の一生を捧げるつもりよ。」

「ね、姉さん……?」

「…………アンタ、まさかとは思うけどあの節操なしな男に惚れたんじゃないでしょうね?」

頬を赤らめてリィンを見つめるクロチルダの様子を見たエマは戸惑い、猛烈に嫌な予感がしたセリーヌは表情を引き攣らせて問いかけた。



「フフ、敵である私の命を救う為に各国のVIP達に頭を下げて、更には私を信じて大切な妹と剣を交えた彼に当事者であるこの私が惚れない方がおかしいでしょう?」

「……え”。ね、姉さん……じょ、冗談よね……?」

うっとりとした様子でリィンを見つめるクロチルダの言葉を聞いたエマは大量の冷や汗をかきながら表情を引き攣らせ

「リィン君……今日から私は君の”物”よ……君が望むのなら、”何でも”してあげるわ……」

「……………………」

リィンを見つめながら呟いたクロチルダの独り言を聞くと石化したかのように固まった!



「……悪い事は言わないからあの子だけは止めておきなさい。知っているとは思うけどあの子、既に(つがい)がいるし、エマを含めた多くの女性達を無自覚で落として、全員と将来結婚する事になっている上、全員と交じり合っているのよ?」

一方セリーヌはクロチルダを何とか思いとどまらせようとしたが

「あら、まさかエマまで落とすなんて……しかもその話だとエマも”処女”を失った事になるわね。フフ、まさかエマに先を越されるとはね…………でも安心して、エマ。私は彼を独占するつもりはないし、貴女達の関係を壊したいとも思っていないわ。私は愛人の立場を目指すつもりよ。まあそれでも無理ならセックスフレンドでも構わないと思っているわ。」

「ア、アンタ……正気!?今ならまだ間に合うから、あの子だけは止めておきなさい!」

「フフ、リィン君……今までのお詫びも込めて後でたくさん奉仕をしてあげるわね……」

「……………………」

クロチルダのリィンを想う心が相当重傷である事がわかると石化したかのように固まった!



クロウとクロチルダがそれぞれの手錠を外されている中、リィン達と共にエリゼに近づいたアルフィンはエリゼに声をかけた。 
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