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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第3話

その後支援要請を片付けたロイド達がクロスベル市に戻って来た時、警察本部の受付でオペレーターを担当し、更に特務支援課のバックアップも担当している女性警察官―――フラン・シーカーよりロイド達特務支援課に直接相談しに来た市民がいると伝えられたので、支援課のビルに向かい、入るとそこには紫髪の娘がいた。



~特務支援課~



「おっと………」

「もう、来てたみたいね。」

紫髪の娘に気づいたロイドは声を上げ、エリィは呟いた。するとロイド達の声に気付いた紫髪の娘は振り向いてロイド達を見つめた。

「あ………す、すみません………!勝手に上がりこんでしまって……その………」

ロイド達に気づいた娘は慌てた後、申し訳なさそうな表情をした。

「ああ、いいですよ。話は聞いていますから。相談者の方ですよね?ようこそ、特務支援課へ。」

「ほっ………あの、リーシャ・マオといいます。本日は相談に乗っていただきありがとうございました………!」

勝手にビルに上がり込んだ事にロイド達が全然怒っていない事に娘は安堵の溜息を吐いた後自己紹介をした。



(うわ………!)

(こ、こいつはまた………)

(とらんじすたぐらまーです………)

(あら……うふふ、ティアお姉様と互角だなんて、正直驚いたわ。)

娘―――リーシャのスタイルを見たロイド、ランディ、ティオは驚き、レンは興味ありげな表情をし

(ふう………あんまり露骨に見つめないの。―――ちょっとロイド?)

「(はっ………)と、とりあえずそちらにおかけください。まずは一通りお話を伺います。」

自分達の様子に呆れた表情で溜息を吐いたエリィにジト目で小声で声をかけられたロイドは我に返った後リーシャと共にそれぞれソファーに座って事情を聞き始めた。



「――――脅迫状!?」

リーシャの話を聞き終えたロイドは真剣な表情で声をあげた。

「はい………1週間前のことです。イリアさんの元に差出人不明の手紙が届いて………あ、イリアさんというのは。」

「”炎の舞姫”の異名を持つ劇団アルカンシェルの大スター。国際的な知名度を誇る看板女優にしてアーティスト。いや~!まさかイリア・プラティエ絡みの相談事が回ってくるとはねぇ!」

脅迫状を出された相手の事をリーシャが説明しようとしたその時ランディが代わりに説明をして嬉しそうな表情をした。

「ランディさん………落ち着いてください。」

「うふふ、あんまり鼻の下伸ばしていると、相談が取り下げられるから、そういう事は心に秘めておくものよ?」

ランディの様子を見たティオは注意し、レンはからかいの表情で指摘した。



「その、さすがに有名人ですから名前くらいは知っていますが………しかし………その彼女あてに脅迫状が?」

「はい………本人はただのイタズラだと言ってますけど………ちょっと不気味な文面で………ただのイタズラには思えなくって。それで劇団長とも話し合ってとにかく警察に相談してみようって。」

「……脅迫状の現物はどちらに?」

「その………イリアさん自身が持っています。すぐに捨てようとしていた所を何とか止めはしたんですけど………」

「そうなると、まずはその脅迫状を見せてもらう必要がありますね……そういえば………リーシャさんと言いましたか。当然、”アルカンシェル”の関係者なんですよね?」

「あ、はい。一応アーティストの一人です。その………まだまだ新米なんですけど。」

「って、ああ!」

ロイドの疑問にリーシャが答えたその時、ランディが驚きの表情で声を上げた。



「な、何だよ、さっきから。」

「君の顔、新作の特集ページで見かけたことがあるぜ!イリア演じる”太陽の姫”と対になる”月の姫”を演じる準主役………イリア・プラティエが大抜擢した彗星のごとく現れた大型新人って!」

「そ、そんな、大型新人なんて。まだまだ稽古不足で………足を引っ張ってばかりなんです。本当はデビューなんて早いと思ってるんですけど………」

ランディの話を聞いたリーシャは苦笑した後、複雑そうな表情になった。

「ふふっ、それでも凄いですよ。あのアルカンシェルに採用されてデビューするんですから。」

「うふふ、しかも新作の準主役を務める事になっているのだから、大抜擢じゃない♪」

「ううっ………」

エリィとレンの評価を聞いたリーシャは疲れた表情で唸った。



「はは………大体わかりました。しかし話を聞いているとイリアさん本人は、この件について乗り気ではないみたいですね?」

「はい………とにかく今は、舞台の完成度を高めたいから外部の人間は入れたくないって………特にその………警察なんか言語道断だって………」

ロイドに尋ねられたリーシャが申し訳なさそうな表情で答えたその時、脅迫状を貰った肝心の人物が警察である自分達の助けが必要ない事を言っている事にロイド達は冷や汗をかいた。

「えっと………」

「それではわたしたちも出る幕など無いのでは………?」

そしてロイドは言いにくそうな表情をし、ティオはジト目でリーシャを見つめて指摘した。

「で、でも皆さんは”特務支援課”なんですよね?雑誌で読んだ限り、なんだか普通の警察の方よりも親しみやすそうっていうか………その、イリアさんも納得してくれるんじゃないかと………」

「う、うーん………」

「こう言っては何ですけど……遊撃士協会の方には相談は?イリアさんは民間人ですし………彼らの護衛対象になると思いますが。」

リーシャの話を聞いたロイドは考え込み、エリィは提案したが

「そ、それはその………クロスベルで遊撃士協会はとても人気があるみたいですから………公演前にそんな人達が出入りしたら変に噂になってしまいそうで………その点、皆さんならそこまで話題にならないかと思って………」

「クスクス、確かにクロスベルでは遊撃士達はクロスベルの人達から”英雄”扱いされて凄く目立っているから、そんな人たちが出入りしていたら劇団のゴシップになってしまうかもしれないものね。そういう意味ではまだ大した成果を挙げていなく、新人ばかりの無名の部署に相談したのは正解ね♪」

リーシャの説明とリーシャの説明を補足したレンの説明を聞いたロイド達全員は表情を引き攣らせた。



「す、すみません!私ったら失礼なことを………!」

そしてイド達の様子に気付いたリーシャは慌てて謝罪した。

「い、いやあ。全然気にしてませんよ。それよりも………大体の事情は了解しました。………この件、引き受けようかと思うんだけどみんな、どうだい?」

一方ロイドはリーシャをフォローした後、エリィ達を見回して尋ね

「もちろん私は賛成よ。」

「わたしも異存ナシです。」

「うふふ、勿論レンもオッケーよ。」

「いや、むしろ断るなんてあり得ないだろ!」

尋ねられたエリィ達全員は頷いた。



「というわけで、リーシャさん。脅迫状の件、特務支援課が引き受けさせていただきます。」

「あ、ありがとうございます!一足先に劇団に戻ります。劇団長とイリアさんには私の方から報告しておきますのでいつ来ていただいても大丈夫です。」

「ええ、わかりました。」

「まったねー、リーシャちゃん!」

「それでは失礼します。」

ロイド達が依頼を請けた事に安心したリーシャは頭を下げて支援課のビルから去って行った。



「さてと………とりあえず劇団に行ってみよう。脅迫状を見せてもらわない事には始まらないしな。」

「そうですね。ただのイタズラの可能性もありそうですし………」

「いや~、しかし役得だなぁ!公演直前のアルカンシェルに入れる機会があるなんてよ!しかも生イリアだぜ、生イリア!」

「確かに………あのイリア・プラティエから直接話を聞くかもしれないのよね。ちょっと緊張してきちゃった。」

「そ、そんなにか?うーん、雑誌とかで見る限り確かに美人だとは思うけど………」

エリィまで緊張している事にロイドは戸惑ったが

(まあ、”影の国”で様々な国の王族や異世界の英雄達どころか”結社”の”執行者”とも出会った事があるロイドお兄さんからしたら、今更国際的に人気があるアーティストなんて大した事ないわよね♪)

(ハハ……)

レンに小声で耳打ちをされたロイドは冷や汗をかいて苦笑し

「………ちょっと楽しみです。」

ティオはまだ見ぬ人気アーティストに期待を膨らませ、静かな笑みを浮かべた。その後ロイド達は歓楽街にあるアルカンシェルを訪ね、劇場の支配人に事情を話した所イリアは現在舞台で練習しているとの事で、許可を貰い、舞台の観客席に入った。すると踊り子のような衣装を着た金髪の女性が激しい動きや踊りをしていた。



~アルカンシェル~



女性が踊りを終えるとどこからか拍手の音が聞こえて来た。

「あら………?」

拍手に気付いた女性が首を傾げたその時、ロイド達が舞台の最前列で見ているリーシャとスーツ姿の男性に近づいてきた。

「あ、皆さん。」

「す、すみません。お邪魔してしまって………その………な、なんて言ったらいいか………」

「……あ、あの………す、すごかったです………!」

「うふふ、さすがは”炎の舞姫”ね。とっても情熱的で素晴らしいものだったわ。」

「はは………ちょっと魂抜かれかけたぜ。」

「………素晴らしいものを見せて頂きました。」

「ふふ、ありがと。」

ロイド達の称賛に微笑みながら受け取った女性は跳躍して舞台を降りてロイド達の前に降り立った。



「ま、完成というにはまだ程遠い状態なんだけどね。」

「ええっ!?」

「ま、まだ上があるんですか………?」

「あったりまえじゃない。このシーンはあくまで冒頭の”太陽の姫”だけのシーン。これに”月の姫”が加わることで何倍にも相乗効果が生まれる………最後のクライマックスシーンは今の数十倍は凄いと思うわよ~?」

「ごくっ………」

「す、凄いッスね…………」

「そ、想像すらできません………」

「むぅ……悔しいけどあの数十倍以上となるとレンでも想像できないわ……」

不敵な笑みを浮かべた女性の話を聞いたロイドとランディは唾を呑みこみ、エリィとレンは疲れた表情で呟き

「ふふっ……―――リーシャ、彼らがさっき言ってた?」

ロイド達の様子を見て微笑んだ女性はリーシャに尋ねた。



「はい。特務支援課の方々です。」

「ふーん、確かに全然、警察っぽくは見えないけど。でもねぇ。事情聴収とかするんでしょ?たかがイタズラごときにそこまで付き合いたくないわね。」

「まあまあ、イリア君。みんな心配してるんだ。少しくらいいいじゃないか。」

リーシャの話を聞いた女性―――イリアはロイド達を見回した後不満げな表情をし、その様子を見たスーツ姿の男性――ー劇団長はイリアをなだめた。

「んー、そう言われても。公演前にテンション下がることは一切しないのがスタイルだし~。リーシャが胸を揉ませてくれたら少しは考えるかもしれないけど~。」

「も、揉ませませんっ!」

「はあ、まったく君ときたら………」

そしてイリアの話を聞いたリーシャは慌てた様子で両手で胸をかばい、劇団長は呆れ

(な、なんか舞台の上とのギャップが………)

(微妙にオジサンっぽいです………)

(クスクス、レンと同じで仕事とプライベートをハッキリと切り分けていタイプね。)

(うーん………女傑らしいのは知ってたけど。)

(いや~、強烈な人だよなぁ。)

プライベートの時のイリアの様子が舞台の時の様子とのギャップがあまりにも違う事にロイド達はそれぞれ戸惑ったり、興味ありげな表情でイリアを見つめていた。



「す、すみません皆さん。何とか説得してみますからロイドさん達は控え室にでも………」

そしてリーシャがロイド達に謝罪したその時

「あら………?」

何かに気付いたイリアがロイドに近づき、ロイドをじっと見た。

「えっ………」

「イリアさん………?」

「ロイドって――――今、そう言ってたわね。ひょっとしてあなたのこと?」

「え、ええ………まあ。(近い、近すぎるって………!)」

イリアに尋ねられたロイドは内心慌てた様子で答え

「フルネームは?」

「その………ロイド・バニングスですが。」

イリアに尋ねられたロイドが名前を名乗った時

「あはは、やっぱり!」

何とイリアは嬉しそうな様子で笑った後ロイドに抱き付いた!



「!!!???」

イリアの行動にロイドは混乱し

「………!?」

「ええっ!?」

「おいおいおいおい………!」

「あら♪なんだか興味深い展開になってきたわね♪」

ティオとエリィはそれぞれ驚き、ランディは目を細め、レンは小悪魔な笑みを浮かべて一瞬の早業で携帯型の導力ビデオを取り出して二人の様子を録画し

「イ、イリアさん!?」

「な、何をしてるのかね!?」

リーシャと劇団長は驚いて声を上げた。



「いや~、世間は狭いわねぇ!まさか噂の弟君とこうして会えるなんて!そう言えば、警察に入ったって聞いたことがあったっけ………ふふ、聞いていたイメージとホントそっくりじゃないの!?」

「あ、あの………ひょっとして。イリアさん………セシル姉の知り合いだったり?」

イリアの話を聞いてある事に気づいたロイドは戸惑った様子で尋ねた。

「セシルはあたしの親友よ。日曜学校以来だからもう10年以上になるわね。」

「な、なるほど………」

そしてイリアはロイドから離れると自己紹介をした。

「ふふ……改めて自己紹介するわね。イリア・プラティエ―――劇団アルカンシェルの看板を背負(しょ)って立たせてもらってるわ。よろしくね、弟君達!」

その後ロイド達は普段着に着替えたイリアと共に控え室で話を始めた――――


 
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