遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
二十六話 ー悪魔再び、ですー
前書き
文字通り、"悪魔"再び……。
好きならキャラって活躍させたり、苛めたくなりますよね。
気合い入れ過ぎて、文字の量が過去一番になりました。ありがとうございます。
結論:デスガイド可愛い。
マイアミチャンピオンシップ ジュニアユース選手権第1日目は予想以上の盛り上がりを見せた。 第一試合の柚子vs優希の融合対決に始まり、権現坂vs暗黒寺の元兄弟子、弟弟子対決、素良vs黒咲の白熱した接戦。 そして、沢渡vs榊 遊矢のペンデュラム対決で幕を下ろした。 とても長く濃い1日だった。
そして、2日目。ジュニアユース選手権の会場となっているスタジアムには、多くの観客が詰め寄せ、客席のほとんどが埋め尽くされている。 一方、これから2日目第一試合が行われようとしているデュエルコートでは、LDSの"融合召喚コース"首席 光津 真澄が瞳を閉じ、静かに佇んでいた。 ゆっくりと瞼が持ち上がり、ルビーのような赤みがかった瞳が開かれると腕へと装着済みの決闘盤のディスプレイへと視線を向けた。
「…………遅い」
液晶には現時刻が表示されており、あと5分すれば、デュエル開始時刻となる。 しかし、彼女の相手は未だに姿を現さない。 無論、開始時刻に間に合わなければ、問答無用で彼女の不戦勝となる。 楽して第二試合に進めるに越したことはないが、元よりプライドの高い彼女はそんな勝ち方は望んでいない。
苛々とするのを静めようと再び瞑想をし始めた時、不意に会場の喧騒が止んだ。 そして、コツコツと此方へと歩みを進める音とともにゆったりとした旋律でハーモニーカの澄んだ音色がゲートから響いた。
「…………来たわね」
閉じられていた瞳は、開かれ、彼女の対戦相手が入場ゲートから姿を見せるのを今か今かと待ち構えていた。 そして、遂にその姿が明らかになる。
黒のストッキングに紺色を基調としたブレザーとミニスカート。 それとは対称的な鮮やかな赤髪は二つ結びにされており、頭にはちょこんとドクロの缶バッチがつけられた帽子がのっけられている。 露出はほぼ無いに等しいのに関わらず、何処か人目を惹きつける少女にワッと喧騒が大きくなる。
光津 真澄もかなりの美少女であるが、目の前で遅刻したのに悪びれもせず、むしろ余裕のある表情を浮かべている少女は真澄とはまた別の可愛さを持つ合わせていた。
その少女の名は常闇 冥。 またの名を、『魔界発現世行きデスガイド』。 神崎 優希に取り憑いているデュエルモンスターズの精霊(悪霊)である。
◆◇◆
「ふん、遅かったじゃない。 怖気づいたのかと思ったわ」
「ん〜、五分前集合とかガキじゃないんですから……私のモットーは余裕を持って優雅たれなんで。それに、あなた如きにビビるわけないじゃないですか」
挨拶代わりに棘のある言葉を放つ真澄に対し、エッジの効いた言葉が返される。 ぴしりと褐色の肌に青筋が浮かぶ。 そんな様子を悠然としながら見つつ、冥はハーモニカをポッケへとしまい、代わりにベルトから決闘盤を外し、腕へと装着する。 準備オーケーです、とレフリーに合図を送る。
「さて、始めましょうか。 LDSの三馬鹿の融合使いさん?」
「……言ってくれるわね。 その余裕、すぐに消しとばしてあげるわ」
真澄の言葉が怒気を孕む。
もはや言葉は不要と言わんばかりに両者が一定の距離を保ち、決闘盤を構えた。
『アクションフィールド、オン! 『伏魔殿ー悪魔の迷宮』!』
リアルソリッドビジョンシステムにより、周囲が激変していく。 平たんな床は、ところどころヒビ割れた石畳へと変わり、周り360度ぐるりと高い塀が囲む。 そして、最後に歪に捻れた塔や禍々しい彫刻を施された建物が障害物のように配置される。
急激な変化は日常生活から一転、魔界に放り出されたように錯覚を起こす。 だが、真澄とてLDSのトップグループに名を連ねる一人の決闘者だ。 悪魔の巣に放り込まれたくらいでは動じない。
一方で、冥は大きく体を伸ばし筋肉を解しており、動じないというより家でむしろ馴れていると言わんばかりの様子だ。 悪魔族だけあって居心地が良いのかもしれない。
アクションフィールドが形成され終え、二人の少女によって恒例の掛け声が行われる。
「準備はいいですか〜? いきますよ! デュエリストたちが!」
「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形……」
「アクショ〜ン」
「「デュエル!!」」
2人の宣言と共にフィールド内へと散らばる。 先行を取ったのはデスガイドだ。
[光津 真澄]LP4000
[常闇 冥 ]LP4000
「さてさて、やりますか。 私はモンスターをセット。 カードを二枚伏せてターンエンドです」
相手に一切の情報を与えず、堅実に守りを固める冥に対し、真澄は好戦的な表情を浮かべる。
「あら、悪夢なんて呼ばれるわりには消極的なのね」
「そんなやっすい挑発にはのりませんよ。喧嘩売るくらいなら、ジェノサイドキングサーモンでも貢いでください。 ささ、あなたのターンですよ」
戯けてみせる冥はLDSと少なくない因縁を持つ。
マイアミチャンピオンシップの出場条件の一つ、『6連勝の達成』を常闇 冥という少女は全て舞網市一の決闘塾LDSの生徒を相手にして達成してみせたのだ。 しかも、全てオーバーキル。 故についたあだ名が『悪夢』。 もっとも悪魔ではあるのでその名前は遠からず近からずと言ったところなのだが、本人はあまり好いていないようで形の良い眉を少し寄せた。
[常闇 冥]
LP4000
手札2枚
魔法・罠伏せ二枚
場
セット
冥のターンが早々に終了し、真澄へとターンが移り、ドローと共に駆け出した。
「まずは、一枚目!」
石畳の割れ目へと挟まるようにして置かれていたアクションカードを手札に加えた。
「行くわよ……! 私は永続魔法〈魂吸収〉を発動。さらに魔法カード〈ジェムナイト・フュージョン〉を発動!手札の〈ジェムナイト・ガネット〉と〈ジェムナイト・オブシディア〉を融合!」
ざざっと砂埃を立てながら、急ブレーキをかけ、立ち止まると向かい側で余裕の表情で佇む冥を見据える。 そして、彼女の背後に赤と青で彩られた渦が発生する。
「紅の真実よ! 鋭利な漆黒よ! 光渦巻きて新たな輝きと一つとならん!融合召喚!赤き友情の輝き!〈ジェムナイト・マディラ〉!」
〈ジェムナイト・マディラ〉☆7
ATK2200
紅い閃光が渦の中央から起こり、陰鬱とした雰囲気のアクションフィールドを明るく照らす。 真澄の代名詞と言える融合召喚により、彼女のフィールドに赤熱した赤い大剣を携えた宝石の騎士が降り立った。
「まだよ! 効果で墓地に送られた〈オブシディア〉の効果により、墓地から〈ガネット〉を特殊召喚! さらに〈オブシディア〉を墓地から除外し、〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札へと加える。 最後に〈魂吸収〉の効果により、私はライフを500回復する」
[光津 真澄]LP4000→4500
ジェムナイト・フュージョンは墓地のジェムナイトを除外することで何度も使用でき、さらに魂吸収の効果でライフを回復していく。 融合召喚はコストが重くなりがちだが、それぞれの特性を最大限に発揮させ、最高のポテンシャルを引き出してみせる。だが、彼女のターンはこれしきでは終わらない。
「もう一度〈ジェムナイト・フュージョン〉を発動! フィールドの〈ジェムナイト・ガネット〉と手札の〈ジェムナイト・ラズリー〉を融合! 紅の真実よ! 神秘の光と一つとなりて新たな輝きとならん!融合召喚!赤き闘志、〈ジェムナイト・ルビーズ〉!」
〈ジェムナイト・ルビーズ〉
ATK2500
二度目の融合召喚により、生み出されたのは紅い鎧に身を包み、斧を構えたルビーの騎士。 青いマントを風になびかせながら、もう一体の騎士と並ぶ様は壮観だ。
「ほー、もはやお約束レベルの連続融合……まぁ、優希さんので見飽きてるんですがね」
「く……バカにして!」
冥の言葉に反応した真澄はキッと鋭い視線を飛ばす。だが、当の本人に効果は今ひとつのようだ。
「まぁ、いいわ。一応説明しといてあげる。マディラは戦闘時に相手の魔法・罠、モンスターの効果の発動を封じ、ルビーズは貫通効果を持っているわ! バトル! マディラでセットモンスターを攻撃!!」
「説明乙です。 攻撃宣言前にリバースカードオープン!罠カード〈堕ち影の蠢き〉発動! デッキから〈シャドール・ハウンド〉を墓地に送り、さらにセットされた〈シャドール・ヘッジホッグ〉をリバースします!」
「シャドール、ですって?!」
驚愕を露にする真澄。常闇 冥がLDSでの試合で使用したのは6戦とも多少構築の差はあれど全て《暗黒界》だったからだ。 だが、蓋を開けてみれば全く別のカテゴリ。真澄が驚くのも無理はない。デッキとは、決闘者にとっては自らの魂と同じである。 むしろ、頻繁にデッキを変える方が稀だ。
一方で、ニヤニヤと笑みを浮かべた冥がデュエルを続行する。
「〈ハウンド〉と〈ヘッジホッグ〉の効果を発動! 〈ハウンド〉の効果によりルビーズを守備表示へと変更し、さらに〈ヘッジホッグ〉の効果でデッキから〈影依融合〉を手札に加えます」
「……マディラでヘッジホッグを攻撃よ」
〈ジェムナイト・ルビーズ〉
DEF1300
糸状に伸びた影がルビーズへと纏わりつき、地面へと縫いつけられる一方で、マディラの大剣が影鼠を叩き割る。
真澄が融合召喚によって出したリバース効果を封じられるマデュラと貫通能力を持つルビーズはリバース効果を多用するシャドールに対して最適解であったが、冥のが一枚上手だった。結果ダメージを与えられずにバトルフェイズを終え事になる。
「〈ラズリー〉を除外し、〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻し、ライフを回復。 さらにカードを一枚伏せエンドよ」
[光津 真澄]
LP4500→5000
[光津 真澄]
LP5000
手札2枚
魔法・罠伏せ一枚
場
〈ジェムナイト・マディラ〉
〈ジェムナイト・ルビーズ〉
「私のターン、ドロー! 〈影依融合〉発動! このカードは相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する時、デッキのモンスターを素材に融合できます! 私はデッキから〈シャドール・ビースト〉と〈メタモルポット〉を融合! 陰険なる影の女王よ、忌まわしき兵器にその身を委ねよ!融合召喚!神罰の執行者!〈エルシャドール・シェキナーガ〉!」
〈エルシャドール・シェキナーガ〉☆10
ATK2600
ゴゴゴと凄まじい地響きと共に伏魔殿が影に覆われる。 上空には目を見張るほどの巨大な物体が浮かんでおり、その中央の玉座には紺色の衣に身を包んだ美女が囚われていた。
上空を占拠する巨大な物体ーー〈エルシャドール・シェキナーガ〉を見上げ、苛立ちを募らせながら呟いた。
「……アンタはエクシーズ使いじゃなかったわけ?」
「いや、私はエクシーズしか使えないなんて一言も言ってないですが? まぁ、そんなにエクシーズ使って欲しいんなら使いますよ? え?」
「……別に、やればいいじゃない」
ニヤニヤとしながら挑発を行なう冥のせいで真澄はより強い怒りの念を募らせる。優希という前例がいるため 別に自分以外が融合召喚を使おうと何も思わないが、こうも正面きって挑発されるとさすがに腹がたつ。もっともデスガイドにとってはこの程度、序の口なのだが。
「じゃあ、リクエストにお応えしましょう! 〈魔界発現世行きデスガイド〉を素敵に召☆喚! 」
〈魔界発現世行きデスガイド〉☆3
ATK1000
クルリとターンを踏みながら、己の分身とも言えるカードをプレートへと置く。
数秒も経たないうちに薄暗い伏魔殿内に一筋の明かりが射し込む。 ライトを点けた〈魔界発現世行きバス〉が魔物の口か、と恐怖を覚えさせる凶々しい意匠の門から中へと入り、冥の側へと停車する。 プシューと聞き馴染みのあるサウンドと共にバスのドアが開き、中から彼女によく似た紺色の制服に身を包んだ添乗員が現れた。
デュエルモンスターズの中でも上位の部類に入る、所謂"嫁カード"の登場とあって会場が今まで以上に沸き立った。 主に男共が。
デスガイドによって何が呼ばれるのか、期待を込めた視線を送る中、デスガイド続いてバスからは餓鬼を思わせる褐色肌の悪魔が現れ、男たちがガックリと肩を落とした。
「ビバ、ワタシ! デスガイドの効果を発動します。 デッキから星3悪魔族ーー〈彼岸の悪鬼 スカラマリオン〉を効果を無効にして特殊召喚!」
〈彼岸の悪鬼 スカラマリオン〉☆3
DEF2000
「レベル3が二体……!」
「レベル3二体でオーバレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 七獄と七天を巡りし謳い手!ランク3〈彼岸の旅人 ダンテ〉!」
〈彼岸の旅人 ダンテ〉★3
ATK1000
二体のモンスターが光の渦へと呑み込まれていく。
光が爆発し、そこから現れたのは旅人のような装いの男性。 攻撃力が1000しかないが、真澄がそれを侮る事はない。
「〈ダンテ〉のORUを一つ取り除き、効果発動! デッキトップを3枚墓地に送り、エンドフェイズまで攻撃力を一枚につき500ポイントアップします!」
〈彼岸の旅人 ダンテ〉
ATK1000→2500
墓地に〈悪魔の偵察者〉、〈暗黒界の龍神 グラファ〉、〈暗黒界の魔神 レイン〉が墓地に送られるだけではなく、〈ダンテ〉の攻撃力が下級から一気に上級モンスターの基準値2400ーー所謂"帝ライン"を越えた。
「罠カード〈リバース・リユース〉発動! 墓地からリバースモンスター、〈メタモルポット〉と〈悪魔の偵察者〉を相手の場に裏側守備表示で特殊召喚します」
「な、なんですって!?」
彼女が驚いたのは、自分フィールドにモンスターが召喚されたからではない。 〈メタモルポット〉が裏側でフィールドに出された事に対してだ。 先ほどのダンテの効果で暗黒界が墓地に送られているの見るに、やはり暗黒界は健在なのだ。 〈メタモルポット〉のリバース効果だけはなんとしてでも伏せがなければならない。
「バトルです! ダンテで裏守備の〈偵察者〉を攻撃! 」
「くっ……!」
ぐるりとカードが表になり、現れたのは単眼の青い悪魔族。 ギロリと大きな単眼が妖しく光る。
「リバース効果は強制です! 〈偵察者〉の効果により、私は3枚ドロー!その後、効果でドローしたカードを互いに確認し、魔法カードは全て墓地へと送られます」
「はぁっ!? ちょっと、待ちなさいよ! 何そのぶっ壊れ効果?!頭おかしいんじゃない?」
「いや、本来ならドローするのは相手なんですけどね。 しかし、この私にかかればそれすらも覆すのです!」
正論なので反論できない。 苛立たしげに単眼が映し出している3枚のカードを確認しーー、一瞬で血の気が引いた。
空中に映し出されていたのは、〈暗黒界の龍神 グラファ〉、〈暗黒界の軍神 シルバ〉、〈暗黒界の術師 スノウ〉。〈 暗黒界〉のスリーカードだ。
「さて、まだ私の攻撃は続きますよー! 〈シェキナーガ〉で裏守備の〈メタモルポット〉を攻撃!」
「やらせない! アクションマジック〈回避〉! その攻撃は無効よ!」
「ところがどっこい、アクションマジック〈エラー〉!そのアクションカードは無効です!」
真澄の発動したアクションカードに赤い閃光が走り、効果を発動することなく消滅する。 一方、もう片方の裏側守備表示モンスターが起き上がり、下卑た笑みを浮かべた。
「わくわくドキドキ、〈メタモルポット〉の効果のお時間でぇす!その効果により、互いのプレイヤーは手札を全て捨て、5枚ドローします」
いやー、手札のない相手に5枚ドローさせてあげるとか私マジ天使ですね。 こういうのを敵に塩を送るって言うんでしたっけ? などとのたまうものだから真澄の怒りのボルテージが上昇する。
「さて、手札から捨てられた〈暗黒界〉の効果が発動します。 しかも、今回はスペシャルですねぇ!! 私は〈シャドール・ファルコン〉、〈シルバ〉、〈スノウ〉、〈グラファ〉の効果を発動!」
冥の言う"スペシャル"の意味がわからないのか、訝しげな表情を浮かべる。 だが、その真意はすぐに明らかとなった。
「まずは〈グラファ〉の効果発動! 〈ルビーズ〉を破壊し、さらに相手のカード効果により捨てられたため、もう一つの効果が発動されます! 相手の手札をランダムで選択し、それがモンスター効果なら私のフィールドに特殊召喚できちゃいます」
「な、待って! 〈メタモルポット〉はアンタのモンスターでしょうが!」
「はて、なんのことです? 〈メタモルポット〉の効果が発動された時点でのコントローラーはあなた。 よって、あなたが発動した効果となるのでした〜、ザンネーン!!」
真紅の騎士が雷に撃たれ破壊され、また真澄にも龍神の魔手が迫る。 ランダムに選出された1枚は、〈パーティカル・フュージョン〉。 魔法カードだ。
「悪運がよろしいことで……では、次〈スノウ〉の効果発動!デッキから〈暗黒界の門〉を手札に加えます。 そして、二つ目の効果により、相手の墓地からモンスター一体を特殊召喚します! 我が僕として読みかえれ、〈ジェムナイト・ガネット〉!」
〈ジェムナイト・ガネット〉☆4
ATK1900
地面に魔法陣が形成され、ガネットが引き摺り出された。 呪術のせいか、その身に真紅の輝きは失われ、目は虚ろだ。
「私のモンスターを……!」
「そして、〈シルバ〉の効果を発動! このカードを墓地より特殊召喚!さらに第二の効果により、相手の手札を二枚デッキに戻します!」
〈暗黒界の軍神 シルバ〉☆5
ATK2300
手札が5枚から3枚に。 相手に甘い汁だけでなく、苦汁(苦渋)も与えるのがデスガイドクオリティ。
「最後に〈ファルコン〉を裏守備で特殊召喚します。 そして、バトルフェイズ中の特殊召喚のため、攻撃は続きますよ。 〈シルバ〉で〈マディラ〉を攻撃、そして、〈ガネット〉で直接攻撃です」
「なっ……キャァ!」
[光津 真澄]LP5000→4900→3000
忠誠を誓うはずの騎士が主人へと剣の矛先を向ける。 二度の攻撃を食らってなお、ライフに余裕があるのは先のターンで〈ジェムナイト・フュージョン〉と〈魂吸収〉のコンボでライフを回復したからである。そして、真澄もまたやられてばかりでは終わらない。
「〈ジェムナイト〉が相手によって破壊された時、罠カード〈ブリリアント・スパーク〉を発動! 破壊された〈マディラ〉の攻撃力分のダメージを受けなさい!!」
[常闇 冥]LP4000→1800
白い雷が冥を撃つ。 大きくライフポイントを削られるが本人はどこ吹く風である。ぱぱっと肩についた埃を払うとターンを続ける。
「バトルフェイズ終了に伴い、〈ダンテ〉は守備表示に変更されます。 フィールド魔法〈暗黒界の門〉を発動します。 この効果により、私の悪魔族の攻守ともに300ポイントアップします。 そして、もう一つの効果を発動。 墓地から〈スノウ〉を除外し、〈ブラウ〉を捨てドロー。 さらに〈ブラウ〉の効果でさらにドローします。 そして、〈シルバ〉を手札に戻し、〈グラファ〉を特殊召喚します」
「……カードが除外されたことでライフを回復するわ」
[光津 真澄]LP3000→3500
既に冥のフィールドはモンスターで埋めつくされているのに関わらず、彼女の手札は先ほどより1枚増えた6枚だ。 末恐ろしい。
「カードを二枚伏せて、エンドフェイズに墓地の〈スカラマリオン〉の効果により〈デスガイド〉を手札に加えてエンドです」
[常闇 冥]
LP1800
手札5枚
魔法・罠伏せ二枚
〈暗黒界の門〉
場
〈エルシャドール・シェキナーガ〉
〈彼岸の旅人 ダンテ〉
〈暗黒界の軍神 シルバ〉
〈ジェムナイト・ガネット〉
〈セット(シャドール・ファルコン)〉
「私のターン、ドロー! 〈マディラ〉を除外し〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻し発動! 〈ラピス〉と〈ラズリー〉で融合! 神秘の力秘めし青き石よ!今光となりて現れよ!融合召喚! レベル5〈ジェムナイトレディ・ラピスラズリ〉!」
[光津 真澄]LP3500→4000
「〈ラズリー〉の効果で〈ラピス〉を手札に戻し、さらに デッキから〈ジェムナイト・ルマリン〉を墓地に送り、〈ラピスラズリ〉の効果発動! 特殊召喚されたモンスター一体につき500ポイントのダメージを与える! これで終わりよ!」
「無駄です! 〈シェキナーガ〉の効果発動! 特殊召喚された〈ラピスラズリ〉の効果を無効にし、その後〈シェドール・ドラゴン〉を手札から捨てます!神罰執行! 」
「くっ……」
上空を占拠する〈シェキナーガ〉の甲殻の一部が開き、灰色の光線が放たれ〈ラピスラズリ〉を穿った。 そして、細い糸が〈魂吸収〉のカードを切り刻む。
「〈ドラゴン〉の効果で〈魂吸収〉を破壊します。 さ、これくらいでネタ切れですか?」
「やってやるわよ! 墓地から〈ラズリー〉を除外し、〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻す! そして、〈クリスタル・ローズ〉を召喚し、効果発動!デッキから〈ラズリー〉を墓地に送り、同名モンスターとして扱う。そして、〈ラズリー〉の効果により、〈ルマリン〉を手札に戻す!そして、〈ジェムナイト・フュージョン〉を発動!手札から〈ラピス〉、〈オブシディア〉、〈ルマリン〉を融合!
神秘の石よ!鋭利な漆黒よ! 雷帯びし秘石よ!光渦巻きて新たな輝きと一つとならん!融合召喚! 現れろ、全てを照らす至上の輝き!レベル10〈ジェムナイトマスター・ダイヤ〉!」
〈ジェムナイトマスター・ダイヤ〉☆10
ATK2900
様々な輝きが神秘の渦へと吸い込まれて行き、一際強い光が外へと向けて迸る。 最強にして、至高の騎士が七つの宝石が埋め込まれた大剣を手に、悪魔の根城へと君臨する。
「〈オブシディア〉の効果により、〈ルマリン〉を特殊召喚! さらに〈オブシディア〉を墓地から除外し、〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻して発動!〈 クリスタル・ローズ 〉と〈ルマリン〉を融合!
芸術の華よ! 雷帯びし秘石よ! 光渦巻きて新たな輝きと一つとならん!融合召喚! 現れろ、幻影の輝き!レベル7〈ジェムナイト・プリズムオーラ〉!」
〈ジェムナイト・プリズムオーラ〉☆7
ATK2450
至高の輝きに並ぶのは、七色の輝きを放つ騎士。 さっそく二人のデュエルが悪魔vs正義の騎士となりつつあり、観客たちはアクション映画を観るように期待を込めた眼差しを送る。
「〈マスターダイヤ〉は墓地の〈ジェムナイト〉一体につき攻撃力が100ポイントアップする。 私の墓地には〈ルビーズ〉、〈ラピスラズリ〉、〈ラピス〉、〈ラズリー〉、〈ルマリン〉の五体が存在する!」
〈ジェムナイトマスター・ダイヤ〉
ATK2900→3400
仲間の力を糧としてダイヤの輝きが増す。 攻撃力3000の"青眼ライン"を超え、現フィールドで攻撃力が一位となる。
また〈マスターダイヤ〉には墓地の融合ジェムナイトを除外し、効果と名前をコピーする能力があるが〈シェキナーガ〉を気にしてか、バトルを選択した。
「〈マスターダイヤ〉で〈シェキナーガ〉を攻撃! 喰らえ、金剛一閃!」
[常闇 冥]LP1800→1000
ダイヤの騎士がダンテッと地を蹴り、飛び上がると刀身から強い光を放つ大剣を一閃。 七色の光を帯びた斬撃が神造兵器を両断し、 真っ二つに両断された〈シェキナーガ〉が崩れ落ちて行く。
「〈シェキナーガ〉が破壊されたことで墓地から〈影依融合〉を手札に加えます」
「続いて〈プリズムオーラ〉で〈ガネット〉を攻撃!虹螺旋槍殺!」
「グッ……」
[常闇 冥]LP1000→450
虹のオーラを纏ったランスが突き出され、ガネットを貫通し、冥まで及ぶ。 体に走る衝撃に耐えれず、後ろへとたたらを踏んだ。
「さて、厄介な奴はいなくなったことだし……〈マスターダイヤ〉の効果発動!〈ラピスラズリ〉を除外し、名前と効果を得る!そして、〈 マスターダイヤ 〉の効果を発動! エクストラデッキから〈ラピスラズリ〉を墓地に送り、効果ダメージを喰らいなさい!!」
〈マスターダイヤ〉の剣先から光が放たれ、冥へと向かう。 これを喰らえばゲームエンド。 万事休すかと思った矢先、黄色い悪魔が彼女の目の前へと現れ、大きな口を開けてそれを呑み込んだ。 完全に決まった、と思っていたので真澄も動揺が隠しきれない。
「なっ……!?」
「〈ダメージ・イーター〉の効果。 相手ターンに発生した効果ダメージ分、ライフを回復します」
[常闇 冥]LP450→2950
危機から一転、ライフが大きく回復する。 真澄が動揺したのは一瞬で、効果ダメージで決める事を諦めると即座に次の戦略に打ってでる。
「なら、墓地から〈ラピス〉を除外し、〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻す。そして〈プリズムオーラ〉の効果発動!〈ジェムナイト・フュージョン〉をコストに、〈グラファ〉を破壊する!」
「……受けますよ」
虹色のオーラに貫かれた龍神は霞を散らすように姿を消す。 何度でも蘇るが、消しておくに越したことはない。
「〈ラズリー〉を除外し、〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻す。 そして、〈ジェムナイト・フュージョン〉を捨て、墓地から〈ブリリアント・スパーク〉を手札に加える。 〈ルマリン〉を除外することでもう一度〈ジェムナイト・フュージョン〉を手札に戻す。 そして、カードを二枚セットしターンエンドよ」
〈ジェムナイトマスター・ダイヤ〉
ATK3400→3100
苦肉の策か、効果ダメージを発生させる〈ブリリアント・フュージョン〉とともにブラフである〈ジェムナイト・フュージョン〉を伏せる彼女に後はない。
「ふーむ、小賢しい。 私は二枚の罠カード〈暗黒界の軍勢〉と〈リバース・リユース〉を発動します。墓地から〈レイン〉と〈スノウ〉を手札に加え、〈メタモルポット〉と〈悪魔の偵察者〉を裏守備で相手のフィールドに特殊召喚します」
「くっ……」
[光津 真澄]
LP4000
手札0枚
魔法・罠伏せ二枚
場
〈ジェムナイトマスター・ダイヤ〉
〈ジェムナイト・プリズムオーラ〉
「私のターン、ドロー。 例によって例の如く〈影依融合〉を発動!場の〈シャドール・ファルコン〉とデッキの〈ADチェンジャー〉を融合! 光と闇が交わり、影が生まれる!さぁ、愚か者共に意のままに操りましょう! 融合召喚! 陰険なる影の女王、レベル8〈エルシャドール・ネフィリム〉!」
〈エルシャドール・ネフィリム〉☆8
ATK2800
影が脈動し、命を持ったかのように動き出す。 影が一箇所に集まり、より深い影となると美しい女性のシルエットが浮かび上がる。 闇が払われ、現れたのは〈シェキナーガ〉の玉座で囚われていた女性。 しかし囚われていた時とは異なり、瞳は開けられており、冷たくも美しい双眸が真澄へと向けられる。
「ボーっとしてる暇はありませんよ。 〈ADチェンジャー〉除外し、効果発動!〈メタモルポット〉を表側攻撃表示に変更する!」
「っ! しまった……!」
青が下げられ、赤の旗が上げられる。 ピィーー!甲高いホイッスルの音が響き、カードの裏側からまたしても下卑た笑みが姿を見せた。
「〈メタモルポット〉発動! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、5枚ドロー! またしても手札のないプレイヤーに手札恵んであげるとか私やさ死ー!!」
大量に持った手札が全て墓地へと送られる。 それを合図に暗黒界とを繋ぐ門が地響きを立て、開き魔の軍勢が侵略を開始する。
「私は〈スノウ〉、〈レイン〉、〈シルバ〉の効果を発動! 〈シルバ〉を墓地より特殊召喚し、さらに手札二枚をデッキに戻してもらいましょう!
そして、〈レイン〉を特殊召喚! そして、〈レイン〉は自身の効果により特殊召喚された時、相手のモンスター、または魔法・罠カードを全て破壊出来ます。よって、魔法・罠全てを破壊する!」
手札を削られるだけでなく、セットカードもブラフごと粉砕される。 後はモンスターを残すのみとなったが、それを圧倒的な軍勢を前にすぐに蹂躙されることになるだろう。 このままでは、不味いと思い立ち真澄が駆け出す。
「そして、〈スノウ〉の効果によりデッキから〈暗黒界の門〉を手札に加えます。 おっと、そこ逃しませんよ!」
「くっ、邪魔よ!」
冥の指示に従い、彼女のモンスターが道を塞ぐ。 先にも後にも進めず、真澄は悔しげに拳を握る。
「そうそう、大人しくしてればいいんですよ。〈シルバ〉を手札に戻し、〈グラファ〉を特殊召喚! そして、レベル8の〈グラファ〉と〈ネフィリム〉でオーバレイ・ネットワークを構築!」
「えっ……!?」
どちらも強大な力を秘めたモンスターが光の渦へと呑まれていくのを見て、真澄は困惑の声を零した。 何かとてつもなく嫌な予感が決闘者としての本能が告げている。 しかし、依然として暗黒界の魔神レインが立ち塞がり、逃げ出すこともままならない。
「宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時をさかのぼり銀河の源よりよみがえれ!顕現せよ、そして我を勝利へと導け!『銀河眼の時空竜』!!」
『銀河眼の時空竜』★8
ATK3000
銀河の竜が時空を超え、生誕の産声を上げる。バサリと翼を羽ばたかせると金色の粒子がキラキラと舞い散った。
雄々しいドラゴンの姿に観客たちの目が釘付けになる中、赤と青のラインに彩られた時空竜が黒々と渦巻く闇に沈んでいく。
「私は『銀河眼の時空竜』でオーバレイ・ネットワークを再構築! 時空を超える竜よ! 闇に身を委ね、その身を黒く染めろ!!!」
瘴気が漏れ出す渦から、黒い繭が姿を見せる。 表面に走った紅いラインがどくんどくんと血管のように脈打ち、繭が刻々とその姿を変えていく。 繭に一筋の割れ目が走り、黒く煌めく粒子とともにその身を暗黒物質へと変えたドラゴンが産まれ落ちる。
「銀河に漲る力…… その全身全霊が尽きるとき 王者の魂が世界を呪う! 現れろ!!『ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン』!!」
『ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン』★9
ATK4000
生誕の喜びか、はたまた闇に呑まれた怒りか……咆哮を轟かせる銀河眼には先ほどまでの勇ましい姿は欠片も残されていない。 ダークマターは3対の翼を広げ、骸のような顔で猊下され、真澄の体が小さく震えた。 それを見た冥が加虐的な笑みを浮かべる。
「ふふ、あんだけ吠えた癖にエクシーズモンスターを前に震えちゃって、情けない。 やはり期待外れでしたか。 あなたのご親友の方がよほど逞しいですよ」
「くっ、誰が震えてなんか……!」
そう言う真澄の声はか細く弱々しい。 指摘され、彼女自身が初めて気づくほどの小さな震えだが、過去一度とて敵を前にこれほどまで恐怖の念を抱いたことはなかった。思わず左腕を掴み震えを抑える。
「まぁ、所詮は敗北してなお惨めに生き残った負け犬。 キャンキャン吠えたところで、惨めさが増し増しになるのがオチですよ」
「だ、誰が負け犬よ……!」
「ほら、また」
怒りと羞恥に耳まで赤くするも、震えまでは隠せていない。
「さて……そろそろ終いにしましょうか。 〈ダークマター〉のORUを一つ消費し効果を発動。 このターン、自身は二回モンスターを攻撃出来ます。 バトルです。 〈ダークマター〉で〈メタモルポット〉と〈マスターダイヤ〉を攻撃!」
「ーーーッ!?」
後悔しても既に遅し。 ダークマターの標準が定められ、闇色の閃光が放たれる。
「終わりです。 壊滅のフォトンストリーム!!」
「ぁ、ァァァァァァァァッ!?」
慈悲なき攻撃が二体のモンスター消しとばし、真澄のライフを喰らい尽くした。
接戦から一転、ただの蹂躙劇となった両者の闘いに幕が降り、倒れ伏す真澄を他所に、悄然とした会場内を冥は後にした。
後書き
2016年夏、3DSで遊戯王新作が発売されるそうですね。
そして、サポートキャラは我らが『魔界発現世行きデスガイド』の色違い。
これは、勝つる……!
ページ上へ戻る