遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
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二十五話 ー 舞え、幻奏の歌姫!、です。ー
[優希 ]LP4000
手札四枚
魔法・罠:伏せ一枚
場
『電光千鳥』
『M・HERO ダークロウ』
[柚子 ]LP2800
手札一枚
魔法・罠:無し
場
『幻奏の音姫 プロディジー・モーツァルト』
『幻奏の音女 タムタム』
「お楽しみは、これからよ!!」
声高らかに叫んだ柚子は、一枚のみの手札を掲げ、プレートへ叩きつけるようにして発動させる。
「行くわよ!魔法カード『融合』発動!私のフィールドのプロディジー・モーツァルトとタムタムを融合!」
「けど!ダークロウの効果により二体は墓地にはいかず、除外される!」
手を掲げ、頭上で結ぶと柚子の背後に渦が広がり、その中央へ二人の奏者が並び立つ。そして、二つの旋律が溶け合い、新たな音色を響かせる。
「至高の天才よ!魂の共鳴よ!タクトの導きにより、力重ねよ。融合召喚!今こそ舞台に情熱の歌を!『幻奏の華華聖 ブルーム・ディーバ』!」
青い花弁に包まれた蕾が花開き、澄んだ歌声を響かせながら柚子の新たな仲間が生誕する。
『キマシタワァーー!』
高度な召喚法が行われたのとは別に極一部の人間が大衆に負けず劣らない歓喜の絶叫を上げる。その光景には流石の私も苦笑いをせずにはいられなかった。
「ブルーム・プリマは融合素材一体につき、攻撃力を300ポイントアップするわ!」
「2500か……、ダークロウを超えたか」
新たな仲間を得た柚子は上空で旋回する雷光千鳥と柚子を見据え、ブルーム・プリマの周りを浮遊する蕾が狙いを定める。
「さぁ、行くわよ!バトル!ブルーム・プリマで千鳥を攻撃!」
「躱せ!」
蕾から放たれた閃光を大きく旋回し、回避するが続くニ射目は命中し撃ち落とされる。
万事休す。空中に無防備な状態で放り出された私を、颯爽とヒーローが現れ、抱きかかえるように受け止めるとそのまま足場まで運ばれる。地に足がつき、ホッと安堵した瞬間ーー
「やれ、ブルーム・プリマ!」」
「ダークロウ!?」
ーーダークロウの背中を、一条の光が貫き、破壊する。
「……なかなか容赦がないね、柚子ず」
「それはお互い様よ。それと、柚子ずって言うな!」
キレ気味な口調でターンの終わりを宣言した柚子は、ブルーム・プリマに手を引かれ、移動圏を無数の橋から空中へと変更する。
おそらく次のアクションカードを見つけ、取りに行ったのだろうと予測し阻止するべくターンを開始する。
「ドローッ!よし、まずはこいつを召喚!」
プレートにカードを置くや否や現れたのは顔全体を覆う仮面を被ったカメレオン。その名も……
「来い、カメレオン!」
「……まんまね」
うるさい!と内心愚痴りながら、カメレオンへと指示を出すと長い舌が墓地へと差し込まれ、簀巻きのような状態でゴブリンドバーグが引っ張りだされた。
「カメレオンの効果で守備力0の『ゴブリンドバーグ』を特殊召喚する!」
「っ!レベル4が二体……!まさかまたエクシーズ!」
同レベル帯が二体並んだことで柚子は警戒の姿勢を強める。一方で、私は「その言葉待ってました!」とほくそ笑む。
「せっかくだし、 見せて上げる!融合、エクシーズに並ぶもう一つの召喚法を!私はレベル4『ゴブリンドバーグ』にレベル4チューナー『カメンレオン』をチューニング!」
カメンレオンの体が膨らみ、緑に光るリングへと分かれるとゴブリンドバーグがその中を通過する。同調が開始され、強い風と共にリングの中央を一条の閃光が貫く。
「星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!シンクロ召喚!『閃珖竜 スターダスト』!!」
『エクシーズに続き、シンクロ召喚だ!しかし、なんだこの美しいドラゴンは!わたしもこれほどまでに雄々しく、そして美しいモンスターは見た事がありません!』
『……綺麗』
星屑の竜はその雄々しき翼を広げ、主人へと寄り添う。スターダストの登場に喧騒は止み、会場が静寂に包まれる。
「キレイね、優希」
「ふふ、けど見惚れてる場合じゃないよ!魔法カード『ミラクル・フュージョン』、発動!墓地のE・HERO エアーマンとシャドーミストを融合!出幻せよ!『E・HERO エスクリダオ』!さて、役者は揃った!バトルだ!スターダストでブルーム・プリマを攻撃する! 流星閃撃 !!」
「ーーこのっ!」
「躱したぁ!?」
スターダストの一撃を目を見事躱して見せた柚子は橋の手すりへと足をかけ、飛び降りた。
そして、空中へと配置されたアクションカードをゲットし、それを即座にプレートへと叩きつけ、発動させる。
「アクションカード『大脱出』!この効果で、バトルフェイズは終了よ!プリマ!」
落下していく柚子はすぐに馳せ参じたブルーム・プリマに捕まり、事なきを得る。体を張ったアクションにオォ!と会場から歓声が起こる。
「こ、怖いことするね……。心臓が止まるかと思ったよ⁉︎」
「こうでもしなきゃ、あなたには勝てないからね。それにエンタメデュエリストとして先輩である私がアクションで負けていられないの!」
プレイングで観客の注目を集めた私に対し、体を張ったアクションで一瞬にして観客の注目を掻っ攫っていく柚子。その凛とした佇まいから絶対に負けられない! と気迫が伝わってくる。
「いいね、そう来なくっちゃね!私はこれでターン、エンド」
[優希]LP3300
手札三枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『E・HEROエスクリダオ』
『閃珖竜 スターダスト』
「私のターン、ドロー!」
カードを引くなり、ブルーム・プリマへと指示を出し空中を駆けて行く。狙いはアクションカードか。
「スターダストっ」
すぐさまスターダストを呼び寄せ、妨害に向かうがやはり地の利は向こうにあり、アクションカードを取られてしまう。そして、こちらへと向き直り……
「バトル!ブルーム・プリマでスターダストを攻撃!」
「相打ち狙いっ!?」
ブルーム・プリマとスターダストの攻撃力は同じ。しかし、柚子の手札は今取ったアクションカードを除き、一枚のみ。わざわざ自軍のモンスターを減らす真似はしない筈だ。なら、残る可能性は一つ。
「閃珖竜 スターダストの効果発動!モンスター一体を対象に発動し、このターンに一度だけいかなる破壊からも守る!私が選ぶのはスターダスト!」
「アクションマジック『ハイダイブ』発動!プリマの攻撃力をターン終わりまで1000ポイントアップする!破壊はされなくてもダメージは通る!行って、プリマ!」
魔法カードにより強化された一撃が私のドラゴンへと放たれる。しかし、衝突の寸前に張られたバリアによって直撃は免れる。だが、衝撃の余波に体を煽られ、落っことされそうになる。
[優希]LP3300→2300
「ブルーム・プリマは一ターンに二度攻撃出来る!スターダストを攻撃!」
プリマの周りを浮遊する蕾から光線が放たれ、スターダストを破壊する。このターン、スターダストが居なかったら全滅していたと思うとゾッとする。だが、柚子の手札は残り一枚のみ。確実にこちらが有利だ、と思っていた矢先柚子は最後の手札をデュエルディスクへと置いた。
「魔法カード『命削りの宝札』発動!私の手札が三枚になるようにドローする。私はハンドレス。よって、三枚ドローッ!!」
「ファッ!?」
ここにきて、ドローカード。これには驚かざるを得ない。これで柚子の手札は一枚から三枚へと増える。しかし、命削りの宝札には大量ドローと引き換えに重いデメリットがある。
「命削りの宝札を使用したターンの終わりまで、相手に与えるダメージは0になる」
しかし、すでに戦闘終了している今、そのデメリットは無いに等しい。他にも、特殊召喚不可とターンの終わりに手札を全て捨てなければならないといけないが……
「私はカード二枚を伏せ、ターンエンドよ。そして、ターンの終わりに命削りの宝札の効果で手札を墓地に送り、さらにハイダイブの効果が終了し、ブルーム・プリマの攻撃力は元に戻るわ」
ドローした三枚の内、モンスターは一枚だけだったらしく、一枚手札が墓地に送られる。同時にブルーム・プリマの攻撃力も元に戻る。
『幻奏の華歌聖 ブルーム・プリマ』
ATK3500→2500
[柚子]
手札0枚
魔法・罠:伏せ二枚
場
『幻奏の華歌聖 ブルーム・プリマ』
「……うーん、なかなか厳しいな」
現状を把握し、攻めきれずにいるのを不味く思う。
圧倒的なカードアドバンテージと多彩な召喚を持っている此方の方が有利だが、アクションデュエルにおいては向こうに一日の長がある。どうもアクションカードを先に取られてしまい有利な展開に持って行かれてしまう。
「まぁ、考えも仕方ないね。私のターンッ! 『E・HERO ブレイズマン』を召喚し、効果で『融合』を手札に加え、発動! 手札の『ブリキンギョ』と場の『ブレイズマン』を融合! 吹雪け、『E・HERO アブソルートZero』!」
「うっ……寒っ」
Zeroの登場に伴い、アクションフィールド『無限架橋』内に猛烈な吹雪が舞う。 さすがにそんな天候下では飛ぶことができないのか、向かい側の橋に柚子が腕を摩りながら着陸する。 これは嬉しい誤算だ。
「バトルだ! エスクリダオでブルーム・プリマを攻撃!」
「くっ……、キャァ!」
[柚子LP]2800→2700
エスクリダオの攻撃力は100しか上昇していないが、ブルーム・プリマを仕留めるには充分だ。 吹雪でうまく飛ぶことの叶わないブルーム・プリマをゆらりと影の中から姿を現したエスクリダオが叩き落とす。
「もういっちょ! Zeroでダイレクトアタック!」
「やらせない! 罠発動、『奇跡の光臨』! 除外されている『幻奏の音姫 プロディジー・モーツァルト』を特殊召喚!」
仮想の空を覆う曇天を裂くように一筋の光が差し込み、歌唱の天才が極寒の戦士の前へと立ち塞がる。 攻撃力があと一歩届かずあえなく攻撃が止められる。
「私はこれでターン、エンド」
[優希]
LP2500
手札三枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『E・HERO エスクリダオ』
『E・HERO アブソルートZero』
「私のターン、ドロー! よし、来たっ! 私はプロディジー・モーツァルトの効果を発動! 手札から『幻奏の音女 タムタム』を特殊召喚! そして、『タムタム』の効果でデッキから『融合』を手札に加えて、発動!」
流れるような動作で融合召喚まで繋げると、柚子は頭上で手を重ね合わせた。
轟々と吹雪く中、彼女の背後に赤と青に彩られた渦が出現し美しい旋律が響く。
「至高の天才よ! 魂の響きよ! タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚! 今こそ舞台に勝利の歌を!『幻奏の華歌聖 ブルーム・ディーバ』!」
『幻の華歌聖 ブルーム・ディーバ』
ATK1000
美しい旋律に合わせ、ラララ〜と綺麗な歌声が響く。 桃色の蕾が開花し、デュエルの舞台へと上がったのは美しい歌い手だ。 攻撃力は1000と融合モンスターにしてはかなり低い。 ということは、自信のステータスを大幅に上げられる効果か、主に柚子の幻奏モンスターをサポートする効果を持っていることが考えられる。
「タムタムを融合素材にしたことでブルーム・ディーバの攻撃力を500ポイント下げ、相手に500ポイントのダメージを与える! 」
「なかなか強かだね、罠カード『ダメージ・ダイエット』発動! このターンに受けるダメージを半分にする!」
『幻奏の華歌聖 ブルーム・ディーバ』
ATK1000→500
優希LP2500→2250
ドーーンと銅鑼の音が響き、衝撃波が橋を揺らす。
足場も悪く、雪も積もっているので恐ろしく怖い……!
「ひ、酷いことするねっ柚子ず!?」
「煩い! そんな軽口叩けなくしてあげるわ! ブルーム・ディーバでエスクリダオを攻撃!」
「攻撃力は下だよ!」
「ブルーム・ディーバは戦闘・効果で破壊されず、戦闘ダメージも0になる。さらに特殊召喚されたモンスターと戦闘を行ったダメージ計算後に、元々の攻撃力の差の効果ダメージを与え、さらに相手モンスターを破壊するのよ! 行け、ブルーム・ディーバ!リフレクト・シャウト! 」
[優希]LP2250→750
華歌聖の吐息が桃色の花弁を散らしながら、エスクリダオへと殺到し引き裂いていく。 そして、その攻撃力の差がダメージとして私を襲い、危うく落下しそうになるのを手摺を掴んで耐える。 ほっとしたのもつかの間、七色のスポットライトがブルーム・ディーバを照らした。
「ここで罠カード『幻奏のイリュージョン』発動! ブルーム・ディーバはこのターン、相手の魔法・罠の効果を受けず、1ターンに二度攻撃できる! アンコールに答えてあげて! 」
「そんなリクエストはしてないっ!」
「アブソルートZeroを攻撃! リフレクト・シャウト!」
「グッ……、ダメージ・ダイエットの効果でダメージは半分になる!」
[優希]LP1500→750
再びブルーム・ディーバが歌い、アブソルートZeroが破壊される。
「アブソルートZeroはフィールドから離れた時、相手モンスターを全て破壊する……けど」
「ブルーム・ディーバは戦闘及び効果では破壊されない!」
「デスヨネー」
極寒の戦士が退場したことで激しく吹いていた吹雪は止み、代わりにひらひらと桃色の花びらが舞っている。そんな様子を見、手摺にもたれ掛かりながら一人ゴチた。
「あっぶな……ライフなくなる前に落っこちて死んでたわ……」
「私も強くなったんだから! これでターンエンドよ!」
ふふんっと鼻を鳴らすと強気な姿勢を見せ柚子はターンを終えた。
[柚子]
LP2700
手札0枚
魔法・罠伏せ無し
『奇跡の光臨』
場
『幻奏の華歌聖 ブルーム・ディーバ』
「さて、どうしようかね〜……」
視線を下へと向け、己の手札を確認する。
柚子のブルーム・ディーバは対特殊召喚と言っても過言はない。 それ故に火力をエクストラデッキに頼っている私には少々荷が重い。 しかし、いくら破壊耐性を持っていようとバウンスは通る。 もちろん、バウンス効果持ちのカステルは入っているし、柚子は伏せカードも無ければ、墓地で発動するようなカードもなく手札も満足。 迷わず、カステルでも出して効果をブッパなしたいところだが、しかし今行っているのは普通のデュエルではない。 アクションカードという不確定要素があるアクションデュエルだ。 効果対象に取られなくするアクションマジックでも使われたらひとたまりもない。故に下手に動けない。
「まぁ、考えて仕方ないし……ドロー! 『貪欲な壺』を発動!」
電光千鳥、スターダスト、アブソルートZero、エスクリダオ、ブレイズマンを戻して二枚ドロー。
おっ……? 今手札へと加わったカードを見て、ほくそ笑んだ。
「まぁ、今更だけど……この際手段は問わないでいこう。 魔法カード『おろかな埋葬』を発動し、『ハネクリボー』を墓地に送るよ」
「……ハネクリボー?」
なぜ今そんなカードを……? と柚子が訝しげな視線を向けてくる。ハネクリボー自体には、墓地で発動する効果など持ち合わせていない。 だが、彼女は知らない。ハネクリボーが墓地に存在することで発動条件を満たすカードの存在を。
「ライフを半分支払い、魔法カード『賢者の石 ー サバティエル』を発動! このカードは墓地に『ハネクリボー』が存在することで発動がすることができる。 そして、その効果はデッキから『融合』または『フュージョン』と名のつく魔法カードを手札へと加えられる。 私が手札へと加えるのはーー
目の前に、透き通るような緑色の石が現れ、神秘の輝きを放つ。 それは皆が見つめる中、一枚のカードを創造した。その名は究極の融合……
「ーー『超融合』を手札へと加える。 さらに『Eー エマージェンシー・コール』を発動し、『E・HERO ブレイズマン』を手札に加え、召喚! 効果でデッキから『融合』を手札に……そして、手札を一枚捨て、『超融合』発動!」
「けど、優希! あなたの場にはモンスターが一体だけ。 それに手札もない。 それでは、融合召喚はできない!」
「ーーいや、融合素材はいるよ。 柚子のフィールドにね!! 『超融合』は互いのフィールドのモンスターで融合できる! 」
「なっーー!?」
「私は『E・HERO ブレイズマン』と『幻奏の華歌聖 ブルーム・ディーバ』を融合! 炎の戦士よ、闘志を燃やし、光輝け! 融合召喚!来い、『E・HERO Theシャイニング』!」
『E・HERO Theシャイニング』☆8
ATK2500
二体のモンスターが神秘の渦で一つとなる。 カッと光が差し込み、上空では光の戦士が燦然と輝いた。
「シャイニングは除外されているE・HERO一体につき、攻撃力を300ポイントアップする! 今二体のE・HEROが除外されているため、攻撃力が600ポイントアップ!」
『E・HERO Theシャイニング』
ATK2500→3100
シャイニングが放つ光が強度を増し、遂に柚子の残りライフを超えた。
「ラストバトル! 」
「あ、アクションカード……!」
咄嗟に柚子が周囲を探るがしかし一向に見当たらない。
「シャイニングで柚子にダイレクトアタック!」
「キャァァァァ……!」
眩い閃光が放射状に放たれ、柚子の残りライフを焼き切る。 遂に長かったデュエルに決着がついた。 苦しくも勝利を収めた優希は、少し居心地の悪そうに頬を掻きつつ、嬉しそうにはにかんだ。
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