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真田十勇士

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巻ノ四十二 大谷吉継その十一

「わしは今度は小竹と話がある」
「だからですか」
「そうじゃ、御主達との話は終わりじゃ」
 明るく笑っての言葉だ。
「ご苦労じゃった」
「それでは」
「うむ、また会おうぞ」
 秀吉は気さくに笑ってだった、彼等と別れた。秀吉が退室した後幸村達も控えの間に案内された。そしてだった。
 その控えの間にだ、一行が入って暫くしてだった。羽柴家に仕える若い小姓が幸村のところに来てだった。
 彼にだ、こう言って来た。
「あのお一人でいらしてくれますか」
「一人で、ですか」
「はい、茶室にです」
 この本丸にあるというのだ。
「そこに来て頂けますか」
「どなたかがですな」
「真田殿にお話したいことがあるとのことなので」
「そうですか」
 ここで察した幸村だった、だが。
 それは隠してだ、そのうえで言ったのだった。
「わかりました、では」
「はい、ご家臣の方々はです」 
 十勇士達はというと。
「茶室の隣の間で休んで頂くということです」
「我等は殿と常に一緒」
「隣の間においてです」
「殿をお守りします」 
 若し何かあればというのだ。
「ではここで」
「どなたかとです」
「お会い下され」
「うむ、ではな」
 幸村も彼等に応えて言う。
「行って来る」
「はい、それでは」
「行ってらっしゃいませ」
 その茶室にとだ、十勇士達は応えた、そして実際に彼等は茶室の隣の部屋で詰めて控えてだった。
 幸村は茶室に入った、するとそこには。
 大谷がいた、大谷は幸村が部屋に入ると微笑んで迎えてきた。
 そのうえでだ、こう彼に言ったのだった。
「この度はです」
「先程のお話とは違いですな」
「先程のは挨拶でした」
 それだったというのだ。
「しかしです」
「この度はですか」
「真田殿にお願いがあってです」
 そのうえでというのだ。
「おいでになって頂きました」
「左様ですか」
「そのことはもうお察しだと思いますが」
「違うと言えば嘘になります」
 これが幸村の返事だった。
「そのことは」
「やはりそうですか」
「大谷殿の、ですな」
「娘がおりますが」
 大谷から切り出してきた、その話を。
「まだ独り身でして」
「それで、ですな」
「聞けば真田殿もお一人のこと」
「だからですな」
「是非にと思っております」
「大谷殿の娘殿をそれがしの」
「妻にして頂けますか」
 こう幸村に申し出たのだった。 
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