真田十勇士
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巻ノ四十二 大谷吉継その七
「その責務もな」
「石田殿と並びですか」
「そうなられますか」
「その通りです、しかもです」
ここで兼続が一同に話した。
「あの御仁は御覧になられた通り」
「ご気質がですな」
「穏やかで誰からも好かれます」
「そうした方ですな」
「佐吉殿はです」
兼続は彼の親友でもある石田のことを話した。
「あの御仁、決して悪い方ではないのですが」
「一本気過ぎるが故に」
「はい、己を曲げませぬ」
困った顔での言葉だった。
「誰にも遠慮なく厳しいことを言います」
「それがその人の為になると思えば」
「そのせいで、です」
「敵もですな」
「今はそれ程多くはありませぬが」
それでもというのだ。
「やがてはです」
「敵が多くなる」
「そうした困ったところもあります」
「左様ですか」
「裏表がなく腹は奇麗ですが」
あまりにも一本気で遠慮なくものを言うからだというのだ。
「あの方はです」
「あまりにもですな」
「敵が多くなってしまいます、しかし」
「大谷殿はですか」
「慎みがあり言葉も少なく」
「誰にもですな」
「好かれる、そうした方なので」
「それがしもですか」
幸村はあえてだ、兼続に問うた。
「あの方と」
「お近付きになられ」
そしてというのだ。
「これからもです」
「親しくですな」
「お付き合いされればです」
「有り難いと」
「左様です」
まさにという返事だった。
「如何でしょうか」
「はい」
すぐにだ、幸村は答えた。
「そのお言葉しかとです」
「受けて頂きますか」
「そうさせて頂きます」
「それは何よりです」
「それでは」
こう話したのだった、そして。
話が終わった時にだ、ここでだった。
ふとだ、部屋にだった。
小姓が一人入って来てだ、一同に言って来た。
「お待たせしました」
「それでは」
「はい、これよりです」
小姓は兼続に応えた。
「ご案内致します」
「それでは」
兼続が応えてだ、そしてだった。
彼等は御殿の中でも特に見事な部屋に案内された、その部屋の奥にだった。みらびやかな着物を着た小柄な猿面冠者がいた。
その彼がだ、小姓に言われた。
「ご案内しました」
「うむ」
男は応えた。
「ご苦労」
「はい」
「ではじゃ」
「はい、それではそれがしは」
「休んでおれ」
猿面の男は小姓に言ってだった、彼を下がらせてだった。部屋に彼と幸村と兼続それの十勇士達だけにさせた。
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