非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
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第15話『休日』
前書き
さて今回は学校から離れて自宅編です。もちろん、晴登君の。
皆さんも暇なら、家でのんびり過ごしましょう。ちなみに自分は最近、めちゃ忙しいです。
4月がもう終わりを迎えようとしていた。
この一月中に、友達がたくさんできたのは嬉しい。
けど反面、魔術だったり、不登校で色々問題を持つ美少年だったりと、色々変なことがよく起こった。
だからこうして、自宅の部屋のベッドでただ天井を仰ぐのは気楽で良い。
「魔術か…」
掌を上へと伸ばし、それを見る俺。
部長みたいに、この手から魔術を使えるのだろうか。
俺はあの日のことを思い出す。
*
「えっ部長、ホントに俺らにもそれできるんですか?」
「まぁ確かにお前の風じゃ難しいかもな、あの威力は。暁のは攻撃用だからいけると思うけど」
俺のはあまり攻撃向けではないということか。
どうせならズバーッとやったり、ドガァンってしたかったけどな…。
「そう落ち込むな三浦。こんな攻撃はできないかもしれないが、風には風のやり方ってもんがあるだろ?」
「それって何ですか?」
「さぁ?」
「えぇ…」
つまり、自分で考えるしかないということか。火とか雷ならイメージはつくけど、風って何ができるんだ? 相手を吹き飛ばしたり、後は飛んだりとか? ・・・考えてみると、結構実用性が高そうだ。でもちょっと地味かな…。
「とにかく魔術を会得しさえすれば、後は自分で模索するといい。そのために、魔力の源作りを急がなきゃな」
「「はい!」」
俺と暁君は揃って返事をする。体育祭までってことは…大体1ヶ月か。頑張ろう!
*
トントン
不意と鳴ったノックの音に、俺の回想は途絶える。
「何だ智乃?」
「お兄ちゃん、ご飯だよ!」
「わかった」
時計を見ると、既に12時を示していた。窓から空を見ると、太陽が真上で燦々と照っている。
朝からずっと魔術のことを考えていたが、ここまで時間が経つのは早いものなのか。
*
1階に降りてくると、智乃が食卓に昼飯を並べている最中だった。見たところインスタントのスパゲッティのようである。
それよりも休日であれば、普段母さんが昼飯を作るのだが、なぜ今日は智乃なのだろうか?
「母さんは?」
「さっき父さんと出かけたよ。気づかなかったの?」
「え? まぁ…」
予想外の智乃の返答に少々戸惑う俺。てか父さんもいないのか、今。
俺の両親は非常に仲が良い。そのせいか、よく2人で買い物やら何やら行くことが多い。主に休日は。今日も例外ではない。
「お兄ちゃん、あと卵焼きでも作ろうか?」
「いや、別にいいよ」
智乃の問いに俺はNOで答える。
スパゲッティに卵焼きはミスマッチな気がするからな…。
「え、良いじゃん。食べてよ」
「何でねばるんだ。わかった、食べるよ」
「ちょっと待っててね」
別に智乃の卵焼きが不味い訳じゃないから、食べても何も問題無いのだが、ただミスマッチだと思う。
*
「できたよ~」
「お、綺麗だな」
目の前に出されたのは、綺麗に整えられた卵焼きだった。黄色く輝くその姿は、中々の貫禄を醸し出していた。
「フォークよし、お茶よし。いただきます!」
「いただきます」
智乃は俺の隣に座った。
そういや智乃の卵焼きって懐かしいな。最後に食べたのは結構前になるのかな…。
「どれどれ?」
俺は一口卵焼きを食べる。
その瞬間頭に何かがビビッと来た。
「どう?」
智乃が期待の表情でこちらを見てくる。俺は率直な感想を返した。
「メチャクチャ美味しいじゃん」
そう言った途端、急に体が重くなった。
体調が悪いからではない。ただ、智乃が俺に抱きついてきたのだった。
「…ってて。危ないだろ智乃」
「へへっ」
あまりの勢いに椅子から転げ落ち、少々痛い目に遭う俺。
だが智乃は、そんな俺の注意も笑顔で弾き飛ばした。
「早く飯食わせてくれよ」
「ごめんごめん」
ようやく智乃が俺から離れ、自分の席に戻った。
何か今日は、休日なのに疲れそうだ。
*
「あれ?」
俺は目の前の光景に目を疑った。
次第に、草木の独特な匂いが鼻をつく。
「草原?」
俺はいつの間にか、草原の真ん中に立っていた。
終わりなんか到底見えない。地平線の彼方まで続いている。
見上げると空は雲に覆われており、太陽は隠されて見えなかった。
「何でこんなとこに…。誰か、いないのか…?」
俺は問いかける。だが周りに人の姿は無く、返ってくるのはそよ風の感触のみ。花と草が一面に広がり、俺だけが異端な存在だった。
「マジかよ…」
どうしてこうなったのだろうか。
先程まで智乃と昼食を食べて、そして自分の部屋に戻ってから・・・どうしたっけ。
しかし、この風景だけは不思議と覚えている気がした。以前どこかで──
ガサッ
──!?
不意に後ろから足音がした。背筋に嫌な汗が流れる。
少なくともさっきまでは人どころか、植物以外の生き物自体いなかった。それなのに、誰かが俺の後ろに急に現れた。これほど怖いことがあるだろうか。
『やぁ』
「っ!?」
その存在は声を掛けてきた。若い男の人の声だ。まるで優しく語りかけるかのような、穏やかな口調である。
だが、俺は振り返ることができない。あまりの恐怖で、首が回ろうとしてくれないのだ。金縛りを受けているみたいに。
『ようやくか。待ちくたびれたよ』
待ちくたびれた? 俺は誰とも会う約束なんてしていないはずだ。一体何を待っている? そもそもこいつは誰なのだ。
『今日は曇りみたいだね』
曇り、確かにそうだ。空一帯は雲で席巻されている。
でも、それがどうした。天気なんて関係ない。俺が気になることはただ1つ・・・
「誰、ですか…?」
『……』
俺が声を振り絞って出した質問に、謎の人物は何も答えない。その瞬間、俺の中で恐怖心よりも好奇心が打ち克った。
「このっ…!」
その瞬間金縛りが解け、俺は勢いで身体ごと振り返る。そしてその存在を視界に捉えた・・・はずだった。刹那、目の前の景色がぐにゃりと歪む。徐々に意識が遠のいていくのを感じた。
『明日は、晴れるといいね』
「待て…!」
目が眩む中、歪んで原型を留めていないその影へと俺は手を伸ばす。しかし、その手が何かを掴むことはなかった。
*
「はぁ……」
俺はベッドの上でボンヤリしていた。
先程のは“夢”。それも入学式の日の朝に見たものと同じ景色の。そこまで思い出した。
ただ1つ、違っていた。あの人は一体・・・。
どうやら俺は昼食を食べた後、部屋で昼寝をしたようだった。その証拠に、窓の外は青空ではなく夕焼けが目立っている。
「もう夜なのか」
時が経つのは早いものだ。どうせまた・・・
「お兄ちゃん、晩ご飯の時間だよ!」
智乃がドアをこじ開け入ってきた。
予想通り。全く、完全に見たことのある光景だ。こういうのを『デジャブ』と言うのだろうか?
いや、どうでもいいや。
「今行くよ」
俺はそう返し、すぐさま夕食を食べに1階に向かった。
*
夕食を終えた俺と智乃は、ソファに座ってテレビを見ていた。今日は久しぶりに智乃と2人きりで過ごしたな。そのせいか彼女は一日中元気で、おかげでこっちは何もしてないのにクタクタだ。
「母さん達はまだなの?」
「帰りが遅くなる、って電話ならあったよ」
子供2人を家に置いてどこまで行ってるんだよ。ホントに仲が良いな。良すぎるくらいだ。
「ねぇお兄ちゃん、一緒にお風呂入らない?」
「ぶっ!!」
智乃の唐突な発言に思わず噴き出してしまう。
こんなことを言われるのは、ここ1年はなかったのだが…。
「お母さん達がいないから、ね?」
「い、いやいいよ。そんな歳じゃないし」
可愛く訴えてくるも、俺にはそんな気もないので軽くあしらう。今さら妹と一緒にお風呂に入るなんて、恥ずかしいことこの上ない。
「お兄ちゃんのケチ」
「いやケチじゃないだろ」
「いいじゃんいいじゃん」
「いや、ダメだ」
中々引き下がらない智乃。
好かれているというのはとても嬉しいのだが、これでは…な。
「一緒には入らない。先に入るか後に入るか、どっちか選んでくれ」
「ぶぅ・・・じゃあ後で」
「了解」
智乃は不満顔だが、これでいいのだ。うん。
*
「やっぱり風呂は落ち着くな~」
湯船に浸かりながら、陽気にも鼻唄を歌う俺。日本人は入浴が好きというが、その気持ちはよくわかる。一日の疲れが一気に取れていく気分だ──
「お兄ちゃん!」
「うわぁお!?」
突然、タオルを身にまとった智乃が乱入してくる。これは予想していなかった。なるほど。先に俺を入れたのはそういうためか。
どうしたものか。追い出す・・・は、さすがに可哀想だろうか。かといってこのまま一緒に入るのも──
「では失礼」
考えている間に入りやがった。俺の膝の間に入り込み、背中を預けてくる。妹とはいえ、やっぱり恥ずかしい。早くここから脱出しないと。
「あー逆上せたかも。そろそろあが──」
「どこ行くのお兄ちゃん?」
手を…掴まれた。
なぜだ。なぜそこまでして俺と風呂に入りたがる? なぜそんな寂しそうな目で俺を見る?
もうダメだ。諦めろという神のお告げが聴こえた気がした。俺の敗けだ。
その後、普通に2人で入った。
*
時刻は午後9時。
こんな時間になっても帰ってこないウチの親。どうなっていやがる。帰りを待とうと、テレビを見て時間を潰しているというのに。
「ふわぁ。そろそろ寝るねお兄ちゃん」
「あぁ、おやすみ」
欠伸をしながらそう言う智乃。そして二階へ上がっていった。
さっきの風呂といい、また何か仕掛けてくると踏んでいたが、杞憂だったようだ。
「俺も寝るか」
テレビの前から立ち上がり、自分の部屋へと戻ることにした。もう母さん達は今日帰ってこないだろう。実際、そういうことは今までにもあった。だから言い切れる。
階段を上がり、ドアノブに手を掛ける俺。
油断は…しまくっていた。
「……」
「ぐぅ」
コイツ…やりおった。まさかの俺のベッドに…。
どうせまた選択肢はないんだろう。わかっている。
ったく、一緒に寝てやるか。兄妹だしな。
「もうちょい端っこで寝ろよな…」
智乃を奥の方へ軽く追いやりながらベッドに入る俺。…温かいな。当たり前か。
全く、最後まで手間をかけさせてくれる。これじゃ休めるものも休めない。
はぁ…もう寝よ。どうせ今日限りだし。ふわぁ…。
この後、智乃が抱きついてきたのは言うまでもない。
後書き
近々、現実で体育祭がありした。お陰で投稿も遅れていたという訳です。
練習がマジでダルいです。自分、水泳部なんで『水泳』を競技として取り入れて頂きたいものです。ホント。
話を変えて、今回の話について。
目的は殆どありません。強いて言うならサービスです(ニッコリ
ただ、智乃との関わりも欲しいなと、自分的に思っただけです。
まだ忙しいので投稿が遅れるかもですが悪しからず。
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