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真田十勇士

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巻ノ四十一 石田三成その六

「天下の英傑、豪傑と聞いていますので」
「それ故に」
「我等全員をですか」
「呼んで頂いたのですか」
「はい、そして」
 さらにだった、石田は彼等に言った。
「その噂はその通りの様ですな」
「まだお会いしたばかりですが」
 幸村はその石田に返した。
「それでもですか」
「身体の動き、そして目を見ればです」
「そうしたことがですか」
「わかります、真田殿と家臣の方々はです」
 まさにというのだ。
「天下の英傑、豪傑ですな」
「動きと目ですか」
「強さは動きにも出ています」
「身のこなしにですな」
「武芸、忍術も含めて」
 特にその術に注目してだった。
「相当な方々ですな」
「そう言って頂き恐縮です」
「貴殿達ならば」
 石田はさらに言った。
「必ずや素晴らしいお力になられますな」
「羽柴家のですか」
「はい」
 まさにというのだ。
「貴殿はご次男ですし」
「羽柴家にですか」
「如何でしょうか」
「そのことですが」
 幸村は既に読んでいた、それでだ。
 一呼吸置いてだ、こう答えたのだった。
「折角ですが」
「左様ですか」
「はい、それがしは真田家の者です」
「だからですな」
「他のどの家にもです」
「貴殿ならばです」
 石田は幸村の言葉に表情を変えずにこうも返した。
「万石の大名にもです」
「なれると」
「間違いなく、それでもですか」
「それがし石高はです」
「必要なだけあればですか」
「いりませぬ」
「大名にもですか」
 石田はその幸村に問うた、さらに。
「そちらにも」
「はい、興味はです」
「では地位も」
「官位や役職にですな」
「若しです」
 この前置きから言った石田だった。
「羽柴家の家臣になれば」
「それで、ですな」
「朝廷の官位も夢ではありませぬ」
「功績次第で」
「はい、それでもですか」
「やはりです」
 幸村はまたすぐにだった、石田に答えた。
「興味がありませぬ」
「お家のこととですな」
「そして義です」
 幸村は言い切った。
「この二つにはです」
「興味がおありですな」
「はい」
 その通りという返事だった。
「その通りです」
「そうですか、金銭や宝もですな」
「当家の旗は六文銭ですが」
「地獄の沙汰もですな」
「その心構えですが」
「ご自身の懐にはですか」
「必要なだけあれば」
 つまり生きていけるだけのものがあればというのだ。 
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