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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第46話

テレサから状況を聞いたエステル達は愉快犯の可能性を考え、見知らぬ人物を孤児院の周辺で見なかったと聞くと、火事が起こり逃げられなくなった際、銀髪の青年がテレサ達を助けてくれただけで、テレサ達を助けた青年は関係ないと思い、続きを話そうとした所ヨシュアの様子がおかしかった。ヨシュアの様子に不思議に思ったエステルはヨシュアに尋ねたがヨシュアは誤魔化した。そこにクロ―ゼが部屋に入って来た。



~白の木蓮亭・宿屋の一室~



「……失礼します。」

「あれ、クローゼさん?」

「あの子たちはどうしたの?」

下にいるはずのクロ―ゼにエステルとヨシュアは首を傾げた。

「ふふ……。下でケーキを食べています。それとティア様達が子供達の相手をして下さってます。あの、先生。お客様がいらっしゃいました」

「お客様?」

クロ―ゼの言葉にテレサは不思議そうな表情をした。

「お邪魔するよ。」

「あ……!」

「ダルモア市長……」

そこにルーアンの市長ダルモアと秘書のギルバートが部屋に入って来た。

「おや、昨日会った遊撃士諸君も一緒だったか。さすがはジャン君、手回しが早くて結構なことだ。さて……」

エステル達に気付いたダルモアは一人で感心した後、テレサの正面に来た。

「お久しぶりだ、テレサ院長。先ほど、報せを聞いて慌てて飛んできた所なのだよ。だが、ご無事で本当に良かった。」

「ありがとうございます、市長。お忙しい中を、わざわざ訪ねてくださって恐縮です。」

「いや、これも地方を統括する市長の勤めというものだからね。それよりも、誰だか知らんが許しがたい所業もあったものだ。ジョセフのやつが愛していた建物が、あんなにも無残に……。心中、お察し申し上げる。」

「いえ……。子供たちが助かったのであればあの人も許してくれると思います。遺品が燃えてしまったのが唯一の心残りですけれど……」

ダルモアの言葉に答えたテレサは残念そうに視線を下に落とした。



「テレサ先生……」

クロ―ゼはテレサの様子に何も言えなかった。

「遊撃士諸君。犯人の目処はつきそうかね?」

「調査を始めたばかりですから確かな事は言えませんが……。ひょっとしたら愉快犯の可能性もあります。」

ダルモアはエステル達に調査の状況を聞いたがヨシュアは芳しくない状況である事を話した。

「そうか……。何とも嘆かわしいことだな。この美しいルーアンの地にそんな心の醜い者がいるとは。」

「市長、失礼ですが……」

無念そうに語るダルモアにギルバートが話しかけた。

「ん、なんだね?」

「今回の件、もしかして彼らの仕業ではありませんか?」

「………………………………」

「ま、待って!『彼ら』って誰のこと?」

ギルバートの言葉にダルモアは黙ったがエステルは反応して訪ねた。

「君たちも昨日絡まれただろう。ルーアンの倉庫区画にたむろしているチンピラどもさ。」

「あいつらが……」

「………………………………」

「失礼ですが……。どうして彼らが怪しいと?」

ロッコ達の事を思い出したエステルは厳しい表情をし、クロ―ゼは沈黙し、ヨシュアは冷静に尋ねた。



「昨日もそうだったが……。奴ら、いつも市長に楯突いて面倒ばかり起こしているんだ。市長に迷惑をかけることを楽しんでいるフシもある。だから市長が懇意にしているこちらの院長先生に……」

「ギルバード君!」

「は、はい!」

「憶測で、滅多なことを口にするのは止めたまえ。これは重大な犯罪だ。冤罪が許されるものではない。」

「も、申し訳ありません。考えが足りませんでした……」

調査を混乱しかねない情報を言うギルバートにダルモアは声を荒げた後、一喝した。

「余計なことを言わずともこちらの遊撃士諸君が犯人を見つけてくれるだろう。期待してもいいだろうね?」

「うん、まかせて!」

「全力を尽くさせてもらいます。」

「うむ、頼もしい返事だ。」

エステルとヨシュアの返事に満足げに頷いたダルモアはテレサに尋ねた。

「ところでテレサ院長……。1つ伺いたいことがあるのだが。」

「なんでしょうか?」

「孤児院がああなってしまってこれからどうするおつもりかな?再建するにしても時間がかかるし、何よりもミラがかかるだろう。」

「………………………………。正直、困り果てています。当座の蓄えはありますが、建て直す費用などとても……」

「院長先生……」

「………………………………」

悲痛そうに語るテレサをエステル達はただ見ているだけしかできなかった。



「やはりそうか……。どうだろう。私に1つ提案があるのだが。」

「……なんでしょう?」

「実は、王都グランセルにわがダルモア家の別邸があってね。たまに利用するだけで普段は空き家も同然なのだが……。しばらくの間、子供たちとそこで暮らしてはどうだろう?」

「え……」

「もちろん、ミラを取るなど無粋なことを言うつもりはない。再建の目処がつくまで幾らでも滞在してくれて構わない。」

「で、ですがそこまで迷惑をおかけするわけには……」

テレサはダルモアの申し出に戸惑った後断ろうとした。

「どうせ使っていない家だ。気がとがめるのであれば……。うん、屋敷の管理をして頂こう。もちろん謝礼もお出しする。」

「あの………僕からも提案があります。」

「ほう?一体それはなんだね?」

ギルバートの言葉に首を傾げたダルモアは続きを促した。

「その前にお聞きしたいのですが……こちらに来る際、下で子供たちと談笑しているイーリュンのシスターを見たんですが……もしかして院長がお呼びになったのですか?」

「はい。子供達の傷が深かったので宿屋の主人にお願いして呼んでもらったのです。」

「そうですか。……僕の提案なんですが下にいるイーリュンの方に頼ってみてはいかがでしょう?」

「ほう、何故だね?」

ギルバートの提案にダルモアは不思議に思い続きを促した。



「人から話伝手で聞いた事なんですが……イーリュン教はメンフィル帝国からの援助を受けてさまざまな街で孤児院を経営していると聞きます。ですから再建の目処が建つまでそちらでお世話になったらいかがですか?孤児院には護衛として精強なメンフィル軍の兵士が門番として守っていると聞きますし、孤児院の周辺もメンフィル帝国兵がよく巡回している上子供達の教育もしていて、成長した子供達の希望があれば仕事を紹介してくれ、またその仕事に合った勉強を子供の頃から教育してくれると聞きます。防犯や子供達の未来を考えたらこれほど環境が整っている孤児院はほかにはないと思いますよ?」

「ふむ……先ほどさまざまな街にあると言ったがリベールにもあるのかね?」

「はい。メンフィル大使館があるロレント市にもあります。特にあそこはあの”闇の聖女”もたまに顔を出して子供達のお世話をしてくれるそうですよ。それになんたってあのメンフィル大使――リウイ・マーシルン皇帝陛下がいる街ですから、いざという時は10年前の”百日戦役”のようにメンフィル軍が守ってくれると思います。」

「そうか……そう言えば遊撃士の諸君はロレントから来たと言っていたね。実際どうなのだい?」

ギルバートの言葉に頷いたダルモアはエステルやヨシュアに尋ねた。

「え~と……そうね、秘書さんの言っている事は大体合っているわよ。日曜学校に通っていた時イーリュンの孤児院に住んでいる知り合いとかに聞いたけど、孤児院に務めている人達はみんな優しくて食事も美味しいし、将来に向けての勉強もさせてくれて楽しいって言ってたわ。もちろん遊ぶ時間も一杯あるそうよ。王国軍の兵士になりたいって言ってた男の子も毎週決まった日にメンフィル軍の兵士に稽古をつけてもらえてるって嬉しそうに話していたわ。……今考えるとメンフィルって太っ腹よね。他国の軍の兵士になりたいって言ってる子供の面倒を見てくれるんだから。」

「それとロレント市内をメンフィル軍の兵士や闇夜の眷属の人達が見回りなのかよくロレントで見かけました。……普通同盟国とはいえ他国の軍の兵士がいれば街は緊張状態になるのですが、誰も気にせずむしろ街の警備もしてくれますからありがたがってました。また孤児院に務めている人達はイーリュンの信徒だけでなく子供を病気や事故等でなくした母親なども務めています。」

「おお、そうか。テレサ院長、そちらもいいと思うがどうかね?」

エステルとヨシュアの説明を聞いたダルモアは感心した声を出した後、テレサに提案した。

「市長……。………………………………。少し考えさせて頂けませんか?どちらもありがたい申し出ですけれど、いろいろな事が起こりすぎて少し混乱してしまって……」

「無理もない……。ゆっくりお休みになるといい。今日のところはこれで失礼する。その気になったらいつでも連絡して欲しい。イーリュンの孤児院の件に関してもロレント市長とは知り合いだから、彼に君達が孤児院に受け入れてもらえるようにイーリュンの方達に口添えしてもらうように言っておこう。」

「はい……。どうもありがとうございます」

「ギルバード君、行くぞ。」

「はい!」

テレサの感謝の言葉を聞いたダルモアはギルバートを伴って部屋を出た。



「は~、驚いちゃった。メイベル市長もそうだったけどめちゃめちゃ太っ腹なヒトよね。」

「そうだね……。元貴族っていうのも頷けるな。」

ダルモア達が出ていった後、エステルとヨシュアはダルモアの申し出に感心していた。その一方でクロ―ゼが不安げな表情でテレサに尋ねた。

「先生、市長さんの申し出やギルバートさんの提案、どうなさるおつもりですか?」

「そうですね……。あなたはどう思いますか?」

「………………………………常識で考えるのなら受けたほうがいいと思います。特にイーリュンの孤児院はあのメンフィル帝国が援助しているのですから、生活の心配はないと思います。……だけど……。一度王都やロレントに行ってしまったら……。いえ……。なんでもありません。」

テレサに尋ねられたクロ―ゼは辛そうな表情をしながら答えた。

「ふふ、あなたは昔から聞き分けがいい子でしたからね。いいのよ、クローゼ。正直に言ってちょうだい。」

「………………………………。あのハーブ畑だって世話する人がいなくなるし……。それに……それに……。先生とジョセフおじさんに可愛がってもらった思い出が無くなってしまう気がして……。ごめんなさい……。愚にも付かないわがままです。」

「ふふ、私も同じ気持ちです。あそこは、子供たちとあの人の思い出が詰まった場所。でも、思い出よりも今を生きることの方が大切なのは言うまでもありません。」

「はい……」

辛そうにしているクロ―ゼにテレサは諭した。

「近いうちに結論を出そうと思います。あなたは、どうか学園祭の準備に集中してくださいね。ミントやツーヤ、そしてあの子たちも楽しみにしていますから。」

「…………はい。」

テレサの言葉にクロ―ゼは先ほどの辛そうな表情はなくし、力強く頷いた。

「エステルさん、ヨシュアさん申しわけありませんが……。調査の方、よろしくお願いします。」

「お任せください。」

「絶対に犯人を捕まえて償いをさせてやりますから!」

テレサの言葉に2人は力強く頷いた。



その後エステルとヨシュアは調査をどうするか考え、一端ギルドに戻ってジャンやプリネ達と相談して捜査方針を決めようとしたところ、エステルやダルモア達の会話を盗み聞きしたクラムが村を飛び出して『レイヴン』がいる倉庫に向かったらしいという情報をマリィから聞き、

急いで追いつくため、リフィア達に子供達の世話やティアにもう少しだけ残ってもらえるように頼んだ後、クロ―ゼと共に急いでルーアンに向かった………… 
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