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真田十勇士

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巻ノ三十八 双槍その四

「何と」
「殿も凄いが」
「直江殿もな」
「うむ、我等と手合わせをされた時とぽなじく」
「お見事じゃ」
「全くじゃ」 
 十勇士達は幸村と兼続の勝負を見て言った。
「殿の槍は風の様に速い」
「そして火の勢いがある」
「直江殿の剣は水が流れる様に動き」
「木の葉の様に舞う」
「動かぬ時は大地の如く」
「動く時は雷じゃ」
 彼等の動きのことも話される。
「お見事じゃ」
「まさに龍虎の勝負よ」
「殿と互角とは」
「直江殿恐るべし」
「主殿凄いが」
「直江殿もな」
「直江殿の剣は謙信公に教えて頂いたものです」 
 兼続の従者がまた十勇士に話した。
「二刀流はご自身で行き着かれましたが」
「その謙信公の剣」
「それを受け継がれたものですか」
「そしてその剣にですか」
「殿は」
「はい、我等が殿の剣は上杉家一」
 先程の言葉をだ、従者はまた言った。
「その剣と互角とは」
「殿が、ですか」
「凄いと言われますか」
「はい、真田源四郎殿はです」
 まさにというのだ。
「天下きっての武芸者ですな」
「殿も凄く直江殿も凄い」
「そういうことですな」
「お二人共」
「そうなのですな」
「そうなるかと、いや源四郎殿のご武勇なら」
 確かな声でだ、従者は言った。
「必ずや見事なことを為されるでしょう」
「はい、殿は武芸だけではありませぬ」
「学問もおありです」
「軍学も備えられていますし」
「ですから」
「そうですな、まさに文武両道」
 幸村こそがとだ、兼続の従者も言った。
「それならば」
「しかし、随分と」
「そうであるな」
 ここで十勇士達は二人の稽古を見ながらあらためて言った。
「お二人の稽古は長い」
「かなりしておられる」
「もうどれだけになるか」
「一刻にもなろうか」
「日もそろそろ暮れる」
「それでは」
「はい、そうですな」 
 従者もここで言う。
「ですから」
「もう止めて頂きますか」
「稽古の途中ですが」
「それでも」
「そうしましょうぞ、殿」
 すぐにだ、従者は彼の主に言った。
「折角ですが」
「稽古をか」
「はい、もういい時かと」
「わかった」
「殿もですぞ」
 十勇士達も幸村に言った。」
「もうよいかと」
「今日の稽古は」
「わかった」
 幸村も応える、そしてだった。
 二人は共に稽古を止めてだ、お互いに。 
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