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真田十勇士

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巻ノ三十六 直江兼続その十一

「是非」
「そうですか、それでは」
「はい、その後で」
「ではまずは」
「殿の御前に案内させてもらいます」
 兼続はこのことも告げた、そしてだった。
 その本丸の上杉家の屋敷においてだ、十勇士達は別の部屋に留め置かれそこで菓子を馳走になった、彼等はその菓子を見てすぐに言った。
「ふむ、これは美味そうじゃ」
「しかもこう言っては何であるが」
「毒も入っておらぬ」
「眠り薬も」
「そうしたものは一切」
「毒が入っていればおわかりになられますか」
 兼続は十勇士にこのことを問うた。
「見ただけで」
「気配が違います」
「食いものから感じられるそれが」
「毒には邪なものがありますので」
「それが感じ取られるのです」
「左様ですか」
「それがしもです」
 幸村もこう兼続に言う。
「毒が入っていますと」
「気配が違いますか」
「食するものにも気配がありまして」
「毒が入っていると」
「違います」
 その気配がというのだ。
「入れる時に邪な気が入るのです」
「ふむ、そこまでおわかりとは」
 兼続は主従の言葉を聞いて言った。
「お見事です」
「そう言って頂けますか」
「武術を極めれば気を感じ取りそして使いこなせますが」
「そしてさらに極めれば」
「あらゆるもの気配を感じ取れるとも言われています」
「ではそれがし達は」
「はい、そこまで達しておられるのですな」
 唸ってだ、主従に言ったのだった。
「だからこそです」
「それがし達を褒めて下さいましたか」
「はい」
 こう言うのだった。
「実際にそう思いましたので」
「だからですか」
「はい、ただ他の家に入った時には用心するものですが」
 武士の習性だ、本能的にそうしたことを警戒するのだ。
「ご安心下さい」
「上杉家ではですか」
「戦で敵を倒すことはしても」
 それでもというのだ。
「その様なことはしませぬ」
「左様ですか」
「ですからご安心下さい」
「それでは」
「はい、ではこれより」
 あらためてだ、兼続は幸村に言った。
「殿の御前に」
「それでは」
「それでなのですが」
 ここでだ、兼続は幸村にこうも言った。
「我等が殿ですが」
「はい、景勝公ですな」
「あの方はです」
「笑うことはないとですか」
「そうした方ですが」
「ああ、そういえばな」
「そうした話であったな」
 十勇士達も菓子を前にして言う。 
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