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真田十勇士

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巻ノ三十六 直江兼続その十二

「あの方はな」
「笑われぬ方」
「そのことで有名であるが」
「そのことをか」
「はい、ご承知下さい」
 こう言ったのだった。
「そうしたことは」
「わかりました」
 確かな声でだ、幸村は兼続に答えた。
「そのことは」
「はい、それでは」
「それではです」
 ここまで話してだ、そしてだった。
 幸村は兼続に案内されてだ、そのうえで。
 二人でだ、景勝の部屋に案内されるのだった。その廊下を進んでだ。
 兼続は幸村にだ、この時も言った。
「それではこれより」
「景勝公に」
「会って頂きますので」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 兼続は奥の部屋の襖の左右に座す者達にだ、こう言った。
「ではな」
「はい」
「さすれば」
 左右の者達も応える、そして。
 麩が開けられた、そこからさらにだった。
 兼続は麩の傍に正座して頭を垂れてだ、奥に控えている黒い服の男に言った。
「直江兼続参りました」
「入れ」 
「それでは」
 兼続は男に応えてだ、彼のすぐ後ろに正座していた幸村に顔を向けて言った。
「では」
「わかりました」
 幸村は兼続に静かに応えた、そのうえで部屋に入るのだった。


巻ノ三十六   完


                          2015・12・9
 
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