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真田十勇士

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巻ノ三十六 直江兼続その二

 幸村に礼をした、これには信濃の方にいる真田の者達も十勇士もだ、そして上杉家の者達も驚いて言った。
「何と、直江殿が」
「上杉家の執権の方がか」
「自ら馬を降りてか」
「頭を下げられるのか」
「何を驚くことがある」
 微笑みだ、兼続は驚く彼等に言った。
「この方は当家の客人であるぞ」
「だからですか」
「客人としての礼を尽くされるのですか」
「そう言われますか」
「そうだ」 
 まさにその通りと言うのだった。
「だから驚くことはない」
「左様ですか」
「真田殿は当家のお客人」
「だからお客人としてですか」
「礼を以て迎えられましたか」
「では真田殿」
 直江は幸村にも言った。
「それがしが直江兼続でござる」
「はい」
「この度は春日山よりお迎えにあがりました」
「有り難うございます」
「ではその春日山までです」
「案内して頂けるのですね」
「それがしで宜しいでしょうか」 
 こうも言う兼続だった。
「何でしたら殿が来られますか」
「いえ、恐れ多いこと」
 幸村も兼続に礼を以て応える。
「天下に知られた直江殿に案内して頂けるだけでも」
「そう言われますか」
「お願いします」
 やはり礼を尽くして言う幸村だった。
「それがし達を春日山まで案内して下さい」
「それでは」
 兼続は幸村の言葉に頷いてだ、そしてだった。 
 上杉家の多くの兵達を連れ幸村と十勇士達を春日山まで案内することになった、その越後の道中幸村主従は箸も下に置かぬ待遇だった。
 そのもてなしの中でだ、十勇士達は話した。宿泊先の宿の中で。
「いや、このもてなしはな」
「人質のものではないぞ」
「これではまことに客人じゃ」
「全くじゃ」
 こう話すのだった。
「信じられぬわ」
「確かに上杉家の力は大きい」
「謙信公以来の武門の家であるしな」
「関東管領としての格式もあるが」
「いや、これだけのもてなし」
「信じられぬ」
「我等は人質で来たというのに」
 そしてだ、ここでだ。
 彼等と共に部屋にいる幸村にだ、こう尋ねたのだった。
「殿、どう思われますか」
「このもてなし」
「どう考えても人質のものではありませぬぞ」
「これだけのもてなしとは」
「一体どういうことでしょうか」
「先程御主達は謙信公の名を出したが」
 幸村は落ち着いてだ、このことから話した。
「そのことからじゃな」
「謙信公は義の方でしたな」
「戦国の世にあって義を貫かれた」
「決して卑怯卑劣の振る舞いをしなかった」
「そうした方でしたな」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。 
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