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真田十勇士

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巻ノ三十六 直江兼続その三

「上杉家は今もな」
「義を守りですか」
「そして、ですか」
「我等もこの様にもてなしてくれる」
「そうなのですな」
「そうであろう、ならば」
 幸村はここで確かな顔になり十勇士に言った。
「我等もだ」
「はい、義には義で報いる」
「不義にもそうすべきですな」
「義を守る」
「そうして越後でもやっていきますな」
「義は守るべきもの」
 幸村は強い声でだ、また言った。
「ましてや上杉家がここまでもてなしてくれるのならな」
「余計にですな」
「義を守る」
「そうすべきですな」
「そう考えておる」
 こう十勇士に言うのだった。
「ここはな」
「はい、では」
「我等もです」
「義を守り」
「そのうえで越後で過ごしていきます」
「その様にしよう、それでだが」
 幸村は十勇士に言うべきことを言ってだ、そのうえで。
 今度は笑みになってだ、こうしたことを言った。
「この宿でも酒を用意してもらっているが」
「はい、その酒をですな」
「これより」
「飲もうぞ」
 こう言うのだった。
「これよりな」
「はい、そうですな」
「これよりですな」
「共に飲みますか」
「そうしようぞ、肴も用意してもらった」 
 その肴はというと。
「梅をな」
「確か梅は」
 梅があると聞いてだ、伊佐が言った。
「謙信公の好きでしたな」
「その様じゃな」
 幸村も伊佐のその言葉に応えて言う。
「あの方は塩か梅を肴にされていたとのこと」
「ふむ、ではその梅をですな」
 穴山も言う。
「これより口にしながら」
「飲むか」
「いいですな」
 海野はそれでいいとした。
「では早速」
「上田にいる時は干し魚が多かったですが」
 根津はここで彼等の国でのことを言った。
「確かに梅もよさそうですな」
「梅は身体によいです」
 筧は梅の滋養について語った。
「肴に最適です」
「ふむ、では梅を一粒一粒食いながら」 
 霧隠はその口元に笑みを浮かべている。
「いつも通り殿と共に飲むか」
「さて、では酒と梅を出し」
 由利は早速その二つを出そうと動きだした。
「今宵も楽しむか」
「ささ、では殿」
 望月は彼等ノ主に声をかけた。
「これより」
「越後の酒もまた美味い」
 猿飛はその酒の味を楽しみにしている、それが言葉にも出ていた。 
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