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真田十勇士

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巻ノ三十五 越後へその六

「必ずな」
「では父上」
 信之も応えた。
「それがしもです」
「家臣達を引き連れて行くのじゃ」
「そうします」
 こう言ってだ、彼もだった。
 家臣達を連れて駿府に入ることになった、兄弟はそれぞれ今は上田を離れ人質として他の国に入ることになった。
 それでだ、幸村は屋敷に戻るとこう十勇士達に言った。
「ではな」
「はい、それではですな」
「我等も越後に入るのですな」
「春日山に」
「うむ、それでじゃが」
 幸村は十勇士達と車座に座り話している、その中で言うのだった。
「上杉家のことは知っておるな」
「はい、主は上杉景勝殿で」
 まずは筧が答えた。
「相当な方ですな」
「そうじゃ、しかし景勝殿はな」
「どうも、ですな」
 海野も言う。
「先代の謙信公のことがあり」
「常に不機嫌な顔をしておられるとのことじゃ」
「滅多に笑われぬとか」
 清海は景勝のそのことに首を捻った。
「そして滅多に喋られぬとか」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「政も戦もですな」
 霧隠は景勝の双方を指摘した。
「かなりのものと」
「越後は確かに治まっておる」
 幸村も霧隠に応えて言う。
「越後は国人の力が強い国であるが」
「その越後を無事に治めておられる」
 望月もそのことに言った。
「そのことを見ればですな」
「やはり相当な方じゃ」
 望月のその言葉にだ、幸村は頷いた。
「間違いなくな」
「その景勝殿のところにですな」
 穴山はいささか身構えている、それが言葉にも出ている。
「我等はこれから入るのですな」
「間もなく上田を発つ」
 幸村ははっきりと言った。
「そして暫しあの地に人質として入る」
「さて、その時に我等もお供しますが」
 由利は人質になることについて不安を感じていた。
「冷遇されはしないか」
「上杉家はそうした家ではないとのこと」
 幸村はこう答えて由利を安心させた。
「だから安心していいとのことじゃ」
「それは何よりです」
 伊佐は無言で頷いた由利の横で微笑んで述べた。
「では」
「うむ、行こうぞ」
「それでは殿」
 最後に猿飛が言う。
「いざ春日山に」
「行こうぞ、そしてじゃが」
 ここでだ、幸村は家臣達にある者の名を出した。その者は一体誰かというと。 
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