『最低な女』
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『微妙な距離感』
未桜は、まともな恋愛をしてきていない。
どんな恋愛がまともかと問われたなら其れは解らないけれど...
とにかく、今迄の恋愛は、好きで好きでたまらなく好きで...とか、そんな甘ったるい一途な感情とは違う感じだと思う。
施設での恋愛は、精神で繋がることが出来ても躰の繋がりはない。
施設を出た後の恋愛は、躰の繋がりは在るけれど精神まで繋がることが出来ない。
だからまともな恋愛はしていないと思う。
『好き』のレベルがどれくらいかとか『此の人の為なら命を棄てても良い』とか、計ることの出来ない愛の重さや深さってのは、凄く重要だろうから...。
その重要な『愛』を本当はマダ知らない気がしてならない。
『本当の愛』が知りたい...。
そしてその本当の愛ってのは、手に入れるのが凄く困難なものだと思っていた。
...だって、皆、産まれたときから『愛してくれる親』が居るのが当然でしょ?
でもその当然の環境すら手に入れることが出来なかった未桜は、一生、死ぬ迄、孤独だと思い込んで生きてきたから。
ある日、友達が急に施設の話を持ちかけてきた。
他の皆は知らなかった。
未桜が施設から出て来たことを。
でも、その名称は皆が知っていた。
何故かというと、皆の知ってる人が入所していたから。
未桜が入所する前に出所している人だった。
年上の人だ。
名前も聞いたことがあった。
その人の話で盛り上がった。
施設内でもチョットした伝説があって、実際その人のエピソードをたくさん聞いていた。
妙に皆と変な親近感が出てきた。
友達が、入所に至る経緯を聞いてきた。
皆も、なんとなく気になるっぽく、話すのを待ってる気がした。
どこからどこまで話せばいいか...
まとまりなくグダグダになりそうやけど...
聞いてる方も気分悪くなるような内容やけど...
普通の高校生に話しても大丈夫な過去かな...
一瞬の間に色々悩んだ。
蒼が口を開く。
『言いたくないことは言わんでかまんけん。でも、俺ら別に未桜に何があったって何も変わらんけん。聞いて欲しいことなら聞くし言いたくないことは聞かんし...後は未桜の判断で...』
他の皆も軽く頷く。
未桜は、たぶん8割くらいは話してしまった感じだと思う。
さすがにコレ言ったらあかんやろってのは一生黙っておこうと決めた。
感情を露わにする子もいれば黙って真剣に聞いてくれる子もいた。
質問を投げかけてくる子もいた。
此の日、皆が帰ったのは深夜2時過ぎ。
でも何故か重苦しい雰囲気になることは無かった。
どうせ自分の事じゃないし、聞いてしまえば『そうだったんやね』って感じで納得はしたんだろう。
うん、良かった。
逆に重苦しくなられても困っただろうし。
明日どんな顔で...とか考えずに済むし、今迄通りのノリで平気だろうと思った。
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