『ある転生者の奮闘記』
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TURN32
「……何で俺は此処にいるんやろか……」
俺は小さく呟いた。何せ、俺の周りには日本、旧ガメリカ、ドクツ、エイリスの各代表がいたからや。
日本から勿論東郷長官、旧ガメリカはイーグル・ダグラス暫定大統領とキャロル・キリング、ドクツからはアイゼン・マンシュタイン元帥、エイリスからはセーラ・ブリテン女王とジョン・ロレンス騎士提督が集結していた。
そして司会役としてキャロル・キリングがしていた。
「コードネームは『バージニア計画』。その要旨は宇宙における自然現象を利用した兵器だった」
「『バージニア計画』なんざ、ゴシップ誌のでっち上げだと思っていたな……」
ダグラスがそう答えた。ガメリカの都市伝説らしいからな。無理もないやろな。
「当時もそんな野放図な計画に予算を出すのは愚の骨頂という意見が殆どだったわ。だから政府ではなくキリング財閥主導で進められた。きっかけは……」
キリングはそう言って東郷長官を見る。
「帝か」
「そうよ。日本のミカドが宇宙災害……日本人が『富嶽』と呼ばれる巨大な宇宙魚を儀式を以て退けているという情報だった。ま、中央情報局は宗教国家の権威づけのための戯れ言だとして重要視はしてなったけどね。けど『バージニア計画』の研究機関は日本の調査を進めた。折しもその時はオセアニア星海域への侵出で日本脅威論が浮上していたわ。もし、ミカドが富嶽を操り、ガメリカ軍に対抗したら現存するいかなる兵器も、惑星級の宇宙災害を破壊する事は出来ない。だからガメリカとしてはパワーバランスを保つためにも富嶽と等質のパワーを所有しなくてはならなかった。だから『神風の儀』の分析と、その兵器への応用の可能性を探った」
「……アドルフ閣下は日本の帝は富嶽を軍事利用しないと考えていました。また同時に他国が帝のチカラに目をつける事を危惧していました」
「まさか第一次大戦の段階でガメリカそのような事を……」
マンシュタイン元帥はそう発言し、セーラ女王は驚いている。
「バージニアのエネルギーを動力に変換する事も目処がついた。ただ、それを操る帝の能力がどうしても理解出来なかった。そして結局はバージニアは建設途中で放棄されたけど、放置されたわけじゃない。第一次大戦が終わって四半世紀、要塞の炉を落とした事はなかった。専門のキリングの一部門があったくらいよ」
「バージニアはガメリカの負の遺産……だからスカーレットが最後まで気にしていたわけだな」
東郷長官はそう呟いた。
「一度捕らえたバージニアを逃がしたらどんな行動に出るか分からない。怒ってワシントンを攻撃するかも。だから莫大な経費をかけて捕らえ続けるしかなかった」
……あの俺は完璧にいらない子やんな? もう俺はゲームでもしとくかな。
「人の手には過ぎたチカラ……そのバージニアという未完成の超兵器がCOREの王を名乗る者に悪用されようとしているのですね」
されようとやなくてされてんのやセーラ女王。
『これはテロリズムのようでいて違う。キングコアにはテロによって達成すべき、一切の政治目的が無いからだ』
その時通信映像が現れた。レーティア・アドルフドクツ第三帝国総統やった。
「初めましてアドルフ閣下」
『貴方がトーゴーか……話はデーニッツから聞いている。それにロンメルからの話では面白い提督がいるそうだな』
「デーニッツ提督の事は残念でした。いいえ……私はまだ諦めてはおりませんが」
『それは私もだ。私の許可無く戦線を離脱するような事は許した覚えはないのでな』
「そうですか」
『この第二次宇宙大戦、私の予測の範囲が外れた事が二つある。一つはバイオ・コンピューター・COREの反乱。もう一つは日本帝国の戦いぶりだった。それは東郷毅という司令官の存在があってこそだったようだな』
「過分なお言葉……それにロンメル艦隊を助けたのは私ではなく、此処にいる狹霧のおかげですよ」
『………』
お、レアアイテム見っけ、一応セーブしとくか。セーブせずにボス戦したらパァやしな。
『………』
よし、これでセーブはOKと。
「おい狹霧」
「ん? 何すか東郷長官? もう作戦会議は終了ですか?」
「いやまだだが……何をしているんだ?」
「何って……暇なんでゲームしてたんですが……」
「……この人類が存続するか滅亡するかの時に何を呑気にゲームなどをしているんだッ!!」
そこへマンシュタイン元帥がキレた。
「そう言われても自分は此処にいるべき人間とはちゃいますからね。東郷長官に無理矢理連れて来られたし」
「おいおい、人聞きの悪い言い方をするな」
東郷長官が呆れたように言う。いや事実でしょうが。
『フフ、ロンメルから聞いた通り面白い提督だな』
アドルフが苦笑している。
『さて、この場での発言を許可願いたい』
「どうぞ」
「呆気なく言いますね長官」
「構わんよ」
『人工大怪獣バージニアは宇宙災害を動力源にした要塞という事だな』
「そうです。そして機動性とワープ機関を有している」
キャロルがそう答える。
『ならばバージニアは宇宙災害の拘束艦といえる。先程の主砲……息の観測結果を基にすると惑星を死の星に変える事も可能だろう。キングコアを名乗る脳が選り好みなしで人類全てを滅ぼすつもりであればバージニアほど有効な兵器は存在しない』
だろうなぁ。
「なので我々が採りうる作戦は限られます。まず、要塞のワープ機関を破壊する事。これによってバージニアを当面、星域内に留める事が出来るでしょう」
東郷長官はそう提案する。確かにワープ機関が無ければ、星域間を航行するのは数百年かかるからな。
『星域を一つ放棄して宇宙災害ごと王の棺にする……か』
アドルフは東郷長官の意見に同意した。……仕方ないな。
「東郷長官、その提案は反対です。奴の棺に星域一つを犠牲にするなどするべきではありません」
俺はそう言った。
『……ならばサギリ。お前には案があるのか?』
「あるに決まってますよ」
俺は出されたコーヒーを飲む。
「バージニアを……沈めるんですよ」
後書き
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