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真田十勇士

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巻ノ三十 昌幸の智略その四

 主のその言葉を受けてだ、家臣達も応えた。
「ではこれより」
「お家の為我等もです」
「この命預けます」
「そして生きましょうぞ」
「頼むぞ、この戦は正念場じゃ」
 真田家が生きる為のというのだ。
「決死の覚悟で戦ってもらうぞ」
「承知しております」
「では」
 家臣達も応えてだった、皆本格的に戦の様に入った。真田家は徳川の軍勢が上田に入る前に準備万端整えていた。 
 それでだ、徳川の軍勢は上田に入ってだ、すぐに驚くことになった。
「どの村にも人がおらぬぞ」
「田畑も刈り取られて食うものがない」
「薪までないぞ」
「何もないではないか」
「食いものも何も」
「これは何ということじゃ」
「そうか、既にな」
 彼等を率いる鳥居はこの状況を察してすぐに言った。
「我等が来るのを読んでな」
「それで、ですか」
「この様にですな」
「民百姓がおらず」
「食うものも薪もない」
「それこそ何も」
「そうじゃ。考えておるわ」
 まさにとだ、鳥居も唸って言った。
「よくな。しかしな」
「これで、ですな」
「我等はどうにも出来ませんな」
「人夫を雇うことも出来ませんな」
「飯を調達することも」
「薪さえもありません」
「これでは」
 兵達も困った顔で言う。
「幸い飯も薪も持って来ていますし」
「駿府や信濃の他の場所からも送ってくれますし」
「雑用は我等すればいいですが」
「しかし」
「上田で手に入れられることはな」
 それはとだ、鳥居は言うのだった。
「痛いわ」
「はい、その場でものを手に入れることがいいですからな」
「戦については」
「それが出来ぬとなりますと」
「やはり辛いですな」
「やってくれるわ」
 また言った鳥居だった、苦々しい声で。
「これでは思ったより進めぬぞ」
「ですな、全て我等で何かしなければならないだけ」
「それだけに」
「そうじゃ、しかしそれで退くつもりはない」 
 鳥居も徳川家の中でも勇将として知られている、そして自分にもその自負がある。だからここでこう言ったのだ。
「上田城まで進みな」
「そして、ですな」
「あの城を攻め落とす」
「そうしますな」
「そうする、では行くぞ」
 こう言ってだ、鳥居は飯も人も手に入らないことに苦々しい顔をしながらも兵を進めさせていた。しかしその進軍の中で。
 昼も夜もだった、山や森からだった。
 敵襲を受けた、それも兵を向かわせるとだ。
 すぐに逃げてしまう、その中には。
 幸村達もいた、幸村は家臣達に山の中で言った。
「御主達は一人一人でもな」
「はい、攻め込んでですな」
「そしてですな」
「攻める」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ、御主達は山や物陰からな」 
 幸村は家臣達に話していった。 
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