IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第17話「(元)兄弟対決」
前書き
既に分かっていると思いますが、秋十は一夏を嫌悪しています。
洗脳だけじゃなく、性格とかの時点で最低な奴だと知っているので。
=秋十side=
「では、行ってきます。」
「ああ。行って来い。」
待機時間が終わり、俺の出る試合になる。
既にアイツは出て行ったようだ。...なんか睨んでたけど知らん。
「お兄ちゃん。」
「ん?どうしたマドカ?」
「....ギッタギッタにしてきてね!」
「....お、おう。」
いや、そんな満弁な笑みで残酷な事をしろと言われても...。
マドカの激励のようなものを受け取り、俺はピットを飛び出した。
「...遅かったじゃねぇか。」
「......。」
アリーナに出て、少し浮いた所に、あいつはいた。
相変わらず、嫌な笑みを浮かべているな。
「てめぇがどんな特典を貰ったのかは知らねぇが、だからと言って“出来損ない”の弟が俺に勝てるとでも思うか?」
またよくわからん事を言ってるな...。
...それに、“出来損ない”を強調してきたか。
「...ああ。少なくとも、負けるつもりはない。」
「っ、へぇ...。」
ちなみに、この会話は他人に聞こえないようにプライベート・チャネルを使っている。
「てめぇがどう足掻いたって、この世界の主人公は俺だ!てめぇなんぞに負けるかよ!」
そう怒鳴るように言った瞬間、試合の合図が鳴り、あいつは突っ込んできた。
「......!」
今までは敵わなかった相手だが、今の俺は違う。
....やってやる!!
=out side=
飛びだすように一夏は秋十へと突撃する。
一夏の乗る専用機、白式に備え付けられている武装は近接ブレード一つのみなので、必然的にそれを使い、秋十へと攻撃する事になる。
「っ!」
―――ギィイイン!
その攻撃を、秋十は落ち着いて同じ近接ブレードで受け止める。
「チッ、はぁあっ!」
「.....っ!」
一夏は舌打ちし、再度ブレードを振う。秋十はそれをを受け止め、横へと流す。
「(....あれ...?)」
「チィッ!調子に乗ってんじゃねえぞ!」
再度振るわれる。受け流す。再度振るわれる。受け止める。再度(ry....
「(.....弱くないか?)」
「おらおら!防いでるだけかぁ!?」
秋十からしてみれば、一夏の攻撃は分かりやすすぎた。
故に、秋十でも容易く攻撃を凌げた。
「....シッ!」
―――ギィイイン!
「なっ....!?」
攻撃の合間を見切り、秋十はブレードを大きく弾く。
「...なぁ、本気出せよ。」
「なに...!?」
あまりの弱さに、秋十はそう言う。
これは挑発ではなく、素でそう思ったのだろう。
だが、一夏は侮辱されていると受け取り、さらに怒りで攻撃が雑になる。
「攻撃する暇もない癖に、よくそんな事が言えるなぁ!!」
「ん?....あぁ、その事か。」
「がっ!?」
素早く一夏の攻撃を受け流し、秋十は鋭い蹴りのカウンターを入れる。
「俺は防御主体の戦い方が好きなんでな。生憎、攻撃は得意じゃない。」
「ぐっ...てめぇ....!!」
蹴りをまともに喰らった一夏は秋十を睨みつける。
そんな一夏を、秋十は冷めた目で見ていた。
「.....篠咲弟の勝ちだな。」
「...一応聞きますけど、どうしてですか?」
管制室では、試合の様子を見て結果をそう言い切った千冬に山田先生が聞いていた。
「見ての通り、織斑の攻撃は全て完璧に防がれていた。おまけに防御主体のカウンターによる攻撃。織斑は篠咲弟と相性が悪すぎる。」
「織斑君の武器は近接ブレード一本しかありませんからね...。」
「さらに、篠咲弟はまだ力を隠している。...こちらは篠咲兄との戦いのために温存しているのだろうな。...まぁ、この二つの理由から織斑は勝てん。」
「なるほど...。」
他にも冷静に戦況を見ているかどうかもあるが、ここでは省いておくようだ。
「...それにしても、篠咲君があんな冷めた目をするのは驚きましたね...。」
「....それだけ、辛い目に遭い、努力を重ねてきたのだろう....。」
「織斑先生...?」
どこか暗い声色となった千冬に、山田先生は疑問に思った。
「...今は関係ない事だ。まだ試合は終わっていないぞ。」
「あ、はい、そうですね。」
そう言って、二人は再び試合に集中し始めた。
「はぁあああっ!!」
「...ふっ!」
―――ギィイイン!
突っ込んできて放たれる一夏の斬撃を、秋十は右斜め下に受け流すように防ぐ。
「...はぁっ!」
「がぁっ!?」
そのまま秋十は回転し、地面に向かって叩き付けるようにブレードを一夏へと叩き込んだ。
それにより、一夏は地面へと突っ込む。
「......。」
「ぐっ....くそ、が....!」
秋十は黙って地面に降り立ち、一夏が悪態をつきながら這い出てくるのを待った。
「調子に乗るなぁああああああ!!!」
「........。」
叫びながら一夏は秋十へと突っ込む。
ブレード“雪片弐型”が変形し、エネルギーの刃が展開される。
白式の単一仕様能力、零落白夜(零落白夜)だ。
それに対し、秋十は冷めた目のまま、ブレードを静かに構える。
「喰らえ!」
「......!」
―――ギィイイン!
「なっ....!?」
先程までと全く変わらずに受け止められ、一夏は驚愕する。
「な、なんでだ....!?」
「...それ、エネルギーに特化したブレードみたいだけど、普通のブレードとかには切れ味が良い程度の強さしかないぞ?」
秋十は冷静にブレードの性質を分析し、それを指摘する。
一夏はその言葉にハッとし、しかし受け止められた状況からは不用意に動くとあっさりやられると思っているので動けず仕舞いだった。
ちなみに、秋十がなぜブレードの仕様が分かったかというと、同じような武器を扱ったりした事があるからだ。
「くそっ....!」
「逃がさん!」
とりあえず間合いを離そうとする一夏に対し、秋十は雪片弐型を斜め下に受け流し、踏みつける。
「なっ!?」
「はぁああっ!!」
踏みつけ、地面に少し陥没したため、雪片弐型を動かせなくなる。
それに驚く一夏に、秋十は容赦なく一撃を叩き込んだ。
「がぁああっ!?」
その一撃に、一夏は雪片弐型を手放して吹き飛ばされる。
「ぐっ....て、めぇ....!」
まだ起き上がる一夏。シールドエネルギーが辛うじて残っているのだろう。
「.......。」
「調子に...乗るんじゃ.....!」
―――ガァアン!
「....ぁ...?」
銃声が鳴り響き、吹き飛んだ一夏は間の抜けた声を出す。
〈白式、シールドエネルギーエンプティ。勝者、篠咲秋十。〉
「...これ以上は無意味だからな。終わらせた。」
秋十の手には、ライフルが展開されていた。
「卑怯、な....!」
「誰も俺がブレードしか使わないとは言ってないぞ?」
尤も、秋十はあまり銃器は得意ではないので専ら近接ブレードしか使わないが。
「正直、想像以上に弱かったよ。...かつての俺が馬鹿らしく思えるほどにな。」
そう言って、秋十はピットへと戻っていった。
=秋十side=
「...はぁ....。」
ピットに戻り、溜め息を吐く。
「お疲れ。」
「桜さん....。」
桜さんがISを解除した俺に労いの言葉をかけてくれる。
「....失望したか?かつて自分を虐めていた奴があまりにも弱く感じて。」
「っ.....失望というより、落胆...ですかね。」
あっさり俺の気持ちを見抜かれていた事に少し驚く。
...まぁ、桜さんだし、ほんの少しだけだったけど。
「...ま、復讐なんて普通にやっても空しいだけだ。」
「復讐...。...そうですね。俺はずっとあいつに復讐したかった。...結果がこれですが。」
散々俺を虐めてきたんだ。復讐心の一つや二つ、芽生えるに決まってる。
...だけど、復讐したところで心は満たされないのも、分かってる。
「俺や束としちゃあ、この世界をちゃんと現実として見ていないアイツには、現実を見てもらうためには復讐染みた事...いや、復讐そのものをするがな。」
「桜さんが...?」
「ああ。俺の幼馴染が洗脳されたんだぞ?束にとっても、自分や幼馴染、妹を洗脳されたんだ。キレるに決まってる。」
そういえば、俺も箒や鈴、マドカ、千冬姉を洗脳されたと分かった時に、怒りを抱いたっけ?そこら辺は桜さん達も同じなんだな...。
「....ねー、桜さんも秋兄も話してないでさ、これ、何とかできない?」
「え...?あ....。」
「あー、まぁ、予想はしてたんだが...。」
マドカの方を向けば、今にも木刀で斬りかかってきそうな箒をマドカが止めていた。
「そこをどけ!」
「嫌だよ。どく理由がないもん。」
「そいつが一夏に勝つなんておかしい!どうせ卑怯な手を使ったんだ!でなければ...!」
そう言って無理矢理マドカを振り切ろうとして....。
「ちょっと黙って。」
「ガッ....!?」
マドカが木刀を弾き落とし、箒を壁に押し付けた。
「私も以前は同じようなものだったから強く言えないけどさ....いい加減にしろ。」
「ぐっ....!?」
そう言って投げ捨てるようにマドカは箒から手を離した。
「......大丈夫か?」
「え...あ、大丈夫です。」
「..そうは見えないな。ほら。」
桜さんが鏡を取り出して見せてくる。...どこに持ってたんですか?
しかし、桜さんの言った通り、俺の顔はあまり優れていなかった。
「気持ちは分かる。...なんなら、次の対戦まで少し待つぞ?」
「...いえ、大丈夫です。」
箒が洗脳され、俺の知ってる箒と全然違った言動や行動などが、結構俺の精神に響いているのだろう。....桜さんに拾われる前からそうだったけど、まだきつい...。
【....織斑が戻ってきて、五分間の猶予の後に最後の試合を行う。いいな?】
「分かりました。」
千冬姉も少しは俺の労ってくれるみたいだ。
...そんな千冬姉も、洗脳はされてるんだけどな。
「最後...あれ?秋十君とオルコットの試合とかは?」
【本来ならそのはずなんだがな...。オルコットが“自身の過ちに気付いたから、辞退する”との事だ。そして、織斑の機体だが、先程の試合で少し損傷しててな。アリーナを使う時間もないため、次が最後となった。】
「相性とかを考慮してないんですけど...まぁ、いいですか。」
俺も苦手な相手とかはいるんだが...最後まで勝ち抜いた人でいいんだろう。
「...お?なんか遅いと思ったら、あっちのピットから出て行ったのか。」
「どうせ負けた相手である秋兄がこっちにいるから、来たくなかったんじゃないの?」
...来たら来たでずっと俺の方を睨んでいそうだけどな。
「.....はぁ。」
「どうした?やっぱり手応えがないか?」
何となく吐いた溜め息について、桜さんが聞いてくる。
「はい、まぁ...。」
「シュヴァルツェ・ハーゼぐらいの力量がないと秋十君もユーリちゃんも手応えを感じなさそうだしなぁ...。」
そういえば、ラウラは元気にしてるだろうか...?
...まぁ、軍人なんだし、大丈夫だろう。
「...しょうがない。そんな手応えを感じない秋十君に、俺が一肌脱いであげよう。」
「....桜さんは一肌脱がなくても十分手応えありますって。」
やばい。自分でハードル上げちまったかもしれん。勝てる気がしない。
「じゃあ、五分後にな。」
「はい。」
次の試合まで、休憩がてらイメージトレーニングだな。
....勝てた試しがないが...やってやるぞ!
=一夏side=
「くそ...!くそくそくそ...!くそがっ!!」
気に食わないあいつらのいるピットに戻る訳にもいかなく、反対側のピットから出て行った俺は、白式を解除して壁に拳を叩き付けた。
「ありえねぇ...!俺は主人公なんだ...!あんな奴に負けるはずが...!」
しかも、本来なら俺はセシリアと試合するはずだった。なのに、あの篠咲桜とかいう奴がいたせいで...!
「くそっ!なんなんだよあのイレギュラー共は...!」
俺は神に転生させてもらう時、ISの一夏になれるように願った。美少女ばかりのいるIS学園でハーレムを築くためだ。おまけに、保険として洗脳する特典も貰った。
それだけあればハーレムは築け、俺は満足できる人生を送れると思っていた。
だが、今こうやって織斑秋十と篠咲桜とかいうイレギュラーのせいで、原作が狂い始めている。
秋十の方はいい。子供の頃から散々言う事を聞かせてきたからな。おまけに信頼していた千冬姉や束さんを洗脳して、精神に多大なダメージを与えてやった。
「だが、篠咲桜...!あいつさえいなければ...!」
もう一人のイレギュラー、束さん似の容姿をしているあのイレギュラーの所為で、色々と狂ってしまった。俺の知ってるセリフや展開がおかしくなっていたり、セシリアと試合もできなかった。
「...いや、俺はこんなもんじゃ諦めないぜ...!」
あいつらが転生者で、どんな特典を貰っていようと、なんたって俺には....。
「洗脳があるからな...!ははは...!あいつらの周りの奴らを洗脳してやれば...!」
あいつらの絶望の顔が目に浮かぶぜ....!
―――彼が洗脳を使えない事に気付くのは、もう少し後のようだ...。
後書き
零落白夜は実体に対しては効果が薄いという何番煎じなネタ。
そんなことより、また短くなってしまいました...。
その代わり、不定期とはいえ更新は早めにします。
どうかそれで許してください!なんでもしま(ry
それはともかく、トーナメント方式なので次回で代表決定戦は終わります。
つまり、一夏がセシリアにフラグを立てる機会が消え去ります。(代わりに桜にフラグが立ちかけてるけどね!)
ちなみに今の所一夏は秋十と桜しか眼中にないので、マドカやユーリに気付いていません。
自分でマドカを洗脳しておきながらちょっとの変装で気づけないって...。
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