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真田十勇士

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巻ノ二十五 小田原城その八

「まさに天下の傑物じゃ」
「真田幸村殿はですか」
「まさにですか」
「そうした方ですか」
「うむ、天下は望まれぬし天下人になれる方でもないが」
 それでもというのだ。
「その資質、そしてお心はな」
「まさにですか」
「天下の傑物ですか」
「そこまでの方」
「そうなのですな」
「まさにな」
 それこそというのだ。
「それだけにじゃ」
「敵にしてはならない」
「何があろうとも」
「そのことをあらためてですか」
「棟梁は思われますか」
「うむ、若くしてあそこまでの方じゃ」
 それだけにというのだ。
「これからはな」
「さらに成長され」
「そして、ですか」
「大きくなられる」
「今以上に」
「そうなられますか」
「必ずな、人は三日会わぬとだ」
 こうも言う風魔だった。
「刮目して見るべきというが」
「あの御仁もですか」
「そうなのですな」
「三日後はさらに大きくなられている」
「そうした方ですか」
「間違いなくな、敵にしてはな」
 それこそ、というのだ。
「お父上と同じくじゃ」
「厄介な敵」
「そうなりますな」
「そのことあらためて殿にお話しよう」
 こうも言ってだった、風魔はすぐに氏政の下に飛んだ。そのうえで彼に対して報告した。
「殿、真田幸村殿とお会いしてきました」
「どうした者じゃった」
「まだお若いですが」
「それでもじゃな」
「はい、傑物です」
 こうはっきりと言うのだった。
「まさに天下の」
「そうか、そして家臣がおったな」
「十人、その十人が全て」
「十人共か」
「天下の豪傑です」
「そこまで強いか」
「全て忍術を極めそれぞれの術を持っております」
 風魔は彼等のこともだ、氏政に話した。
「一騎当千です」
「そうか、家臣達も強いか」
「相当に」
「真田家は昌幸殿がな」
「相当な御仁ですな」
「智勇兼備、特に智はまさに鬼謀」
 彼が武田家に仕えていた時からのことだ、戦での采配に謀略にとだ。その強さは真田家においても知られていたのだ。
「わしも相手にしたくなかったが」
「そこにです」
「ご次男殿もか」
「相当な方です、ただ」
「ただとは」
「あの方は武将です」
 そうした者だというのだ。
「そして軍師でもあられますが」
「大名にはじゃな」
「向かぬかと」
「ふむ。資質はあってもか」
「あくまで自ら戦われ策を出される方です」
 それが幸村だというのだ。 
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