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指切りげんまん

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第五章

「私も十和子ちゃんもね」
「駄目になるのね」
「だから、今回は特にそうしましょう」
「わかったわ、それじゃあ」
「ええ、またね」
 二人はほぼ同時にだった、ここで。
 それぞれの右手を出した、その手の小指を。
 その小指と小指を絡め合わせてだ、そして約束したのだった。
 それからだ、二人でだった。
 噂を一つ一つメモに書いていってだ、二人で全ての噂を話した。
 そしてだ、その証拠も出していってだ。
 噂を言っていた娘やネットにだ、二人一緒に話して書き込んでだ。否定していった。
 ここで二人で話した噂への検証や出した証拠がだ、効果があって。
 噂は一つ一つだが確実に消えていってだ、時間はかかったが。
 全ての噂を消せた、しかし。
 十和子は良美にだ、難しい顔でだ。自分の部屋で紅茶を一緒に飲みながら話した。
「噂は何とか全部収まったけれど」
「噂の出所はね」
「それはわかってないわね」
「出所はわからないと思うわよ」
 シビアにだ、良美は答えた。
「それはね」
「そうなの」
「だから。あの先輩だとしても」
「本人が言う筈がないから」
「それこそ証拠がないから」 
 それを掴めなかったのだ、二人共。
「何か落書きやネットでの書き込みがね」
「出所だったけれど」
「書いた人までわからなかったから」
「だからよね」
「そう、それでね」
 そのせいでというのだ。
「犯人はわからないわよ」
「結局そうなのね」
「まあ、けれどね」
「噂は消せたから」
「よかったわ」
 良美はこのことを喜んでいた。
 そしてだ、十和子にこう言った。
「そのことを喜びましょう」
「何かすっきりとしないけれど」
「犯人がわからなかったからよね」
「どうしてもね」
「そうよね、けれど世の中は全部わかるものじゃないから」
「だからなのね」
「これでいいわ」
 こう十和子に言うのだった。
「よしとすべきよ」
「完全じゃなくても」
「これでいいとすべきよ。むしろね」
「むしろ?」
「今回、本当にね」
 ここでだ、良美は心から安堵した顔になって十和子にこう言った。
「私達二人で何でもやっていったじゃない」
「うん、約束してね」
「約束通りにやってね」
「二人で噂を一つ一つ相談してチェックして証拠を出して」
「お話して否定していって」
「それで消せたから」
「二人で出来たから」
「あそこで一人でしていたら」
 それこそというのだ。
「こうはいかなかったと思うわ」
「そうよね、やっぱり」
「だからね」 
 それでというのだ。
「よかったわ」
「そういえば」
「そう、よかったわ」
 良美はその安堵している笑顔で十和子に話した。
「このことがね」
「そうね、私もね」
「十和子ちゃんもでしょ」
「良美ちゃんがいてくれたから」
「私もよ、十和子ちゃんがいてくれたから」
「今回は何とかなったのね」
「やっぱり約束を守ってね」
 それでというのだ。
「しっかりと二人でやっていったらね」
「こうした大変なことも」
「乗り越えられるのね」
「そういうことね」
「二人だと」
 一人では難しくともというのだ。
「出来るわよ、だからね」
「今回は何とかなったし」
「これからもなのね」
「そう、二人だとね」
「こうしたことがまたあっても」
「何とか出来るわ」
「そうなのね、じゃあこれからも」
「私達は友達同士で」
 そしてというのだ。
「助け合っていきましょう」
「指切りした通りね」
「そう、あの時のままね」
 こう笑顔で話してだった、二人は。
 今回のことが無事に終わったことを祝ってこれからのことも約束してだ。二人紅茶を楽しんだ。そして菓子も食べて今は笑顔でいるのだった。友人同士として。


指切りげんまん   完


                             2015・6・20 
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